クリスマスが近付く季節は、何故か人肌が恋しくなる時期だった。
道を歩けばイルミネーションが綺麗に輝いている上に、家族連れやカップルが多いかもしれない。
大体相方が去るのもクリスマス付近が近かったから、余計に寂しさを覚えるのも理由の一つだろう。
コンビを解散しても、俺は芸人を辞める事はなかった。
でも一人で居るのが嫌で、解散しても直ぐに前座だけでもいいからとライブを入れて貰ったりしていた。
それも去年までの話で、今年はクリスマスが近付いても相方とは上手くいっている。
いや相方と言うよりも恋人でもあるから、多分クリスマスは一緒に過ごすものかもしれない。
「あのさ、クリスマスって」
「ごめん。クリスマスは会合があって、私の出席必須なんだ。だから」
クリスマスはどうすると聞く前に、羂索がバツが悪そうに断りを入れてきた。
ちょっと期待していた自分が恥ずかしくて、続きを言おうとしている羂索の言葉を遮って大丈夫だと返す。
「いや、いいって。忘れてたけど、羂ちゃんは組長だもんな!」
「表向きは社長ね。夜の何時とは言えないけど、夜には終わるから。あのバーで待っててよ。ちゃんと行くから」
一緒に芸人をやっているから忘れがちではあるが、羂索は組を任されている組長でもあるのだ。
ヤクザが芸人やっても良いのかは、ここでは言わない約束ではある。
でもこうして組の話をされると、少し寂しいとは思うのは許して欲しい。
元々忙しい身なのだから、恋人が出来たからかと言って優先度が下がる訳じゃない。
「……クリスマスは、君と過ごす予定だったよ。本当はね、だから色々調整したけど無理だったんだ。癪ではあるけど傑達に代わりに過ごして貰おうとしたけど、彼等ほら。何故か売れっ子でしょ?」
「いや、当たり前だからね!?傑君も悟君もイケメン枠だからな?」
「傑は生出演キャンセルしようとしたけど、よくよく考えたら私が会えないのに何で彼奴等会うんだろ?って思ってクリスマスから三が日まで生出演の特番を突っ込んだんだど」
「悟君が事務所に殺されるって言ってたけど、全部お前のせいじゃん!流石に可哀想だからやめてあげて!?」
「それにクリスマスなんてセックスするだけの日だから、クリスマス二日目とかやっても良くない?」
「頼むからそれ、絶対外で言うなよ。炎上するから」
何かを察したのか、羂索が何時もの調子で話し始めたからツッコミを入れてしまった。
ただ羂索は羂索なりに、俺の事を考えていてくれた事が分かって口元が緩んでしまう。