「お名前はなんて言うのかな」
公園で知らないお兄さんに話し掛けられて、ビックリして思わず固まってしまった。
一見優しそうに見えるけど、目の奥が怖くてふいっと視線を逸らした。
聞こえないふりをして、立ち去ろうと思ってランドセルの肩ひもをぎゅっと握って歩き出す。
するとお兄さんは、俺の後をつけて話し掛け続けた。
「小学生だよね?ランドセル、ピカピカでいいねー。お兄さん、道に迷っちゃったんだ。だから、教えて欲しいなって」
今日、学校の先生が注意で言っていた事を思い出す。
大人が子供に道を聞くのは、普通はあり得ない事だと。
どうしようと悩んで俯いていると、けんちゃんが教えてくれた袈裟が見えた。
あっと思って顔を上げると、けんちゃんが笑みを浮かべていた。
助けてって声を出したら、けんちゃんが口に指を当ててしーっと言われる。
そう言えばらけんちゃんは、俺以外には見えなかったんだ。
忘れていたから声を上げちゃったら、お兄さんに口を塞がれてしまった。
「おい。声出すなよ」
突然、豹変したお兄さんパニックになってジタバタと暴れる。
するとお兄さんが、片手を振り上げた瞬間だった。
「ぎゃぁあ!!」
お兄さんの腕を、おかしな方向に曲げさせているけんちゃんの姿。
思わずポカンとして見上げていると、けんちゃんはお兄さんから手を離して俺を抱き締める。
「タカば、ダイ丈ブ?」
「怖かったけど、平気……けんちゃんが居るから」
「ソウ、ヨかッタ。見チャ、駄メだヨ?」
言われた通りに目を閉じて手で目を隠すと、劈くような悲鳴が響く。
ぐちゃっ、バキボキって音が響いて、怖くて震えているとけんちゃんが頭を撫でてくれた。
そのままけんちゃんに抱き上げられて、ピョンとけんちゃんが跳ね上がる。
落ちないように抱き付きながら、目を閉じていると何処かに着地した様な音がした。
「モう、イいよ」
「ん、あ……家だ」
「オかえ、リ。タカば」
「うん。ただいま、けんちゃん。あ、お礼のちゅーね」
靄が掛かったけんちゃんの顔の部分に、顔を近付けてちゅっとちゅーをする。
ベロリと長い舌が俺の唇を舐めて、頬をべろべろと舐められた。
擽ったくて肩を竦めて笑うと、けんちゃんが消毒だと言っていた。
何の事か分からなかったけど、けんちゃんとおやつを食べようと思って家へと入ったのだった。
ここで速報です。
○○県○○区の路上で、手足が折れ曲がり、下半身に大怪我を負った重傷の男性が発見されました。
なお、男性の物であろうスマートフォンには、複数の男児のわいせつな画像が保存されており、警察は事件として捜査を開始したとの事です。