最悪の呪術師、全ての不幸の根源。
それが羂索であり、俺も脹相や虎杖の境遇を知れば首を縦に振るしかない。
「あいつは、全ての不幸の根源だ。だから、お前も深入りするのは止せ。悠仁は優しいから、こんな事をお前には言えないだろうから俺が代わりに言った」
脹相が何時になく真剣に言うから、俺も忘れられなくて今に至る。
今日は羂索に回された任務に同行した先で、用意されていたホテルのベッドの上。
俺を押し倒している羂索を見上げながら、そんな事を思い出していた。
「考え事?」
すりっと俺の頬を撫でる羂索の手は、人殺しを行っていた人物とは思えない位には優しい。
おっさんの顔なんて撫でて、何が楽しいのかと視線を送る。
すると羂索は、ん?と言いながら俺を愛おしげに見つめていた。
「……羂索さ、脹相とか虎杖に対して冷たくない?」
「あぁ、何かと思えばそれか。何を言われたのか知らないけど、悠仁は兎も角。脹相達については失敗作だからな」
「失敗作って。お前なぁ」
失敗作だと言い切る羂索に半ば呆れながら、言葉を返すと羂索が片眉を上げた。
仮にも自分の子供に、そんな酷い言葉を投げ掛けるのは良くない。
出生が出生だったとしても、それは言ってはいけない言葉だ。
それは笑えないと付け加えると、羂索が俺の隣に横になって面白くなそうな表情を浮かべていた。
「君、私の寵愛を一人で受けたいとか思わないの?」
「ん?」
「私がこうやって文句も言わずに、全部聞き入れてるのは君だけなんだけど。私が作った子供も含めて、君以外は全てが有象無象なんだよね。愛とかそう言うのを向けるとか以前に、どうでもいい。路傍の石となんら代わり無いワケ。だから、君以外にどう思われていようが私には関係ない。なのに、そんな私に他にも意識を向けろって言うのは、君以外にも興味を持てって事になるんだけど」
とんでもない告白を受けた気がして、あーと唸りながら視線を左右に揺らしてしまった。
そう言う意味で言った訳じゃなくて、自分の子供ならもう少し気に掛けてやれと言う意味で言ったつもりではある。
羂索の中では、他者への愛は零か百らしい。
そして、今羂索の愛が向いているのは俺だけと言う事。
何て説明すればいいか分からなくて、うーんと唸っていると羂索に抱き締められる。
「で、君は何でそんな話をしたの?」
「……言わない。でも、お前のそのゼロか百はやめた方がいいと思うぞ」
「説得力の無い顔してるけど?まぁ、君が言うなら少しは考えるけど」
どんな顔をしていたのか、俺には分からないけど羂索が言うなら安心してもいいかもしれない。
でも、脹相達の中で羂索のイメージが少しでも変わればいいと思って、パッと表情を明るくした。
すると、今度は羂索が半ば呆れた表情を浮かべる
「本当?なら俺は信じるぜ!」
「君のその素直さ、息子達も見習ってほしいよ」