蝉の声が響く猛暑の外とは違い、この教室は猛暑対策の為に去年からクーラーが設置された。
補講用に配られているプリントの問題は、正直五分もあれば解ける問題だ。
でも、私は敢えて分からないふりをして担任の先生に問い掛ける。
「髙羽先生、分かりません」
「プリント配って秒で言われると、流石に傷付くぞ!?夏油君、他の教科はちゃんと出来るって聞いたけど」
他の教科は教師に興味が無いから、適当にいい点数を取ってご機嫌取りをして居るだけの話。
自分の教科だけ点数が取れなければ、否応無しに関心は私へと向く。
ただそれだけの事なのに、面白いくらいに担任である史彦さんは策にはまってくれた。
「んー?そうですか?成績に興味なくて」
大学に行くなら色々とやるべきなのだろうけど、生憎そこまで興味はない。
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