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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    バレンタインだから、甘い武新でも!って思って大失敗した話。
    微妙にいぞーさんのバレストバレするから自己責任で

    甘い匂いがする場所は、嫌いではない。
    酒の匂いは苦手ではあるが、甘い物は好きだった。
    「以蔵。お前の誕生日らしいな」
    「おん?武市、何かくれるんか?」
    子供のように目を輝かせる以蔵に、用意していた酒を渡すと嬉しそうに受け取ってくれた。
    ここまで喜ばれると、用意した甲斐があるなと思えてしまう。
    私は酒が良く分からないから、選んだのは龍馬である事は黙っておいた方がいいだろう。
    それよりも、カルデア内が甘い匂いで充満しているのは何故だろうか。
    以蔵の誕生日は、そこまで盛大に祝われる物なのかと考える。
    確かにマスターは、以蔵を気に入っているし以蔵もマスターを気に入っていた。
    だからなのかと一人で思っていると、以蔵が考え込んでいる私に気付いたのか声を掛ける。
    「今日は、ばれんたいんじゃき。好いちょる奴や世話になっちょる奴にちょこを渡す日ぃじゃ。わしの誕生日だからって理由だけじゃないぜよ」
    「そうなのか。だから、みんな挙ってマスターに」
    確かに、世話になっているマスターへ何かを渡したい英霊は多いだろう。
    ちらりと以蔵を見て、マスターに何を渡すのか不安に駆られる。
    まだ童であるマスターに、酒を勧めたりしないか不安になり以蔵に問いかけた。
    「以蔵。お前はマスターに何を渡すんだ」
    「わしか?先ずは、マスターがわしに物を渡す番じゃ!」
    「そう言うモノなのか?」
    私はバレンタインが良く分からないが、誕生日を祝って貰う方が先と言う決まりがあるのだろう。
    カルデアに召喚されて長い以蔵が言うのだから、そう言うモノなのかもしれない。
    ここでふと、以蔵が言っていた好いた相手にチョコを渡す話を思い出す。
    女性の英霊は、マスターにチョコを渡しているのを見掛けた。
    そして、マスターは男の英霊にチョコを渡していた。
    「……以蔵。チョコを渡すのは、好いた人間の方から渡すのか?」
    「そこまではわしも知らん。龍馬かマスターに直接聞いた方がええ」
    「そうか」
    私からマスターに聞くのは、マスターにチョコをねだる様にも思えて気が引けてしまう。
    私が知りたいのは、どちらが先にチョコを渡すかと言う事だけだった。
    酒を抱えて浮かれて居た以蔵が、廊下の先へと視線を向けていてぽそっと呟いた。
    「あ、新兵衛とマスター」
    以蔵の口から田中君とマスターの名前が出たのもあり、私も以蔵が向ける視線の先へと目を向ける。
    そこに居たのは、何かの包みを持っている田中君とマスターの姿だった。
    どうやらマスターから田中君もチョコを貰ったらしい。
    何時も田中君に気を掛けてくれているマスターだから、世話になっている意味を込めて田中君へと手渡したのだろう。
    この場では、田中君が大切にされていると言う事にホッとして居た瞬間だった。
    田中君が貰ったと思われる包みを、マスターへと手渡そうとしているのが目に入った。
    返すのは流石にまずいのではと思ったが、マスターの反応が受け取る側である事に気付く。
    「新兵衛の方がマスターに渡すんか?なんじゃ、隅に置けんなぁ。な、たけ……武市先生!?」
    後ろで以蔵の声が聞こえたが、それを無視して田中君が渡そうとしている包みを掴む。
    「これは私のだろ、田中君」
    「せ、先生!?」
    「え?はい、え??」
    大人気ない事は分かっているが、私より先にマスターが田中君からチョコを貰う事は耐えられなかった。
    「マスター。田中君からは、後程何かを送らせる。行くぞ、田中君」
    「はい!武市先生!マスター、またあとで」
    「いえ、大丈夫です。田中君、良かったね」
    手を振って見送るマスターに頭を下げてから、マスターの姿が見えなくなってから田中君へと声を掛ける。
    「田中君、どうして私に渡さなかったんだ」
    「武市先生に、チョコを渡すのは烏滸がましいと思ったので」
    「そんなことはない。私は、君がくれるものは全て嬉しく思う。それに」
    一度立ち止まり、田中君の方を向きながら手を伸ばして両頬を掴み私の方を向かせる。
    絶対に目を逸らすなと言うように、視線を合わせて言い聞かせる様に静かに言葉を紡いだ。
    「新兵衛。君どんな想いであっても、誰かに何かを渡すのは私は耐えられないんだ」
    例えそれが恋慕を含まないモノであっても、私以外に気持ちを向ける事は許さない。
    甘い匂いが充満するこの日に、相応しくない言葉だと思ってそれだけは飲み込んだ。

    後日、以蔵が未成年であるマスターの部屋で酒盛りをし、絡み酒をした上に吐瀉物の処理までさせた事を知り田中君と龍馬と以蔵を引き連れ謝罪しに行くことになるのをまだ知らなかった。


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