頭部ユニット 損傷確認
カルでアへの帰還 エラーエラー
敵に拐われたマスターを確保し、仲間へと渡した。
マスターの令呪は全て使用済み、体力は磨耗している。
「為朝さん!!!」
「手助けは不要」
このまま我が機体に手を出せば、戦況は更に悪化するだろう。
我が機体にて、敵を一掃後に合流するのが合理的であると判断した。
漂白された世界には、我がマスターが必要不可欠である。
故に、我が機体よりもマスターの肉体が必要と判断した上だった。
例えそれが、我が機体でも危うい戦況と知っていてもだ。
万策も尽き掛けた頃、敵の殲滅を確認したが思いの外、損傷部位が多かった。
カルでアからの魔力も尽き掛け、弓を打ち続けた腕を修復する魔力もない。
帰還出来ればとカルデアへのルートを検索したが、頭部ユニットの損傷は我が思うよりも酷いものだったらしい。
鳴り響くエラー音。
尽き掛けている魔力、損傷部位の深さから帰還は不可能と演算が叩き出す。
「それもまた……」
仕方の無い事だと受け入れ、最低限の魔力を保つために頭部ユニットへの魔力以外を切った。
マスターは自身のせいと責めるだろうが、それは要らぬ事だ。
元より兵は消費するものだ。
戦いにおいて、兵への情けは不要である。
エラー エラー エラー
エラー音の響く頭部ユニットの奥から、生き物の声がしている。
はて何の生き物のかと思えば、そこにはシンベエが居た。
ワンワンと吠えて、我が機体を舐め回す。
起動して欲しいと言うようにだ。
「お前、ついてきていたのか」
腕のユニットに、魔力を流しシンベエを撫でると我が機体から飛び降りた。
そして、こちらだと言うようにシンベエの珠が光出した。
「共に帰還しようと言うのか、シンベエ」
ワフと一声鳴いたシンベエが、誇らしげに見えた。