「期待してるところ悪いけど、髙羽。君、高専預かりね」
「へ?」
羂索はそう言うと、パッと俺を離して必要な物を詰めるように言ってきた。
明日は二人でロケもあるし、突然言われても番組に穴を開けるわけにはいかない。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
「ロケの事?それだったら、私だけで出るから。君は急病で入院って事にして」
「折角二人で取れたロケじゃん……」
「殺人が起きてお蔵入りになるよ」
冗談言うなよと言おうとしたが、羂索の目が本気で言葉に詰まる。
殺しについては、羂索と俺の縛りを破る事になるから羂索は出来ない筈だ。
それなら、羂索の言う殺人とはなんだろう。
「えーっと、事故が起きる、とか?」
「事故に見せ掛けて殺しに来る呪詛師って、居ないから無理だね」
「呪詛師……って、羂索の案件じゃん!」
呪術については羂索が色々教えてくれたけど、いまいち良く理解が出来なかった。
大きく分けると呪術師と呪詛師ってやつに分かれてて、呪術師は呪霊と戦ったりして人知れずに人助けしている。
呪詛師は、私利私欲の為に呪術を使って人殺ししたりする。
つまり俺と出会う前の羂索が、バリバリ当てはまるのだ。
呪詛師の時に色々やってたから、かなりの人間に恨まれてるかもって本人も言っていた。
今回の件はもしやとばっちりではと思ったが、羂索は俺を見て何も言わない。
何で黙ってるんだろうと思ったら、思い切りデコピンをされた。
「いっ!ツッコミ以外の暴力は反対だぞ!?」
「あまりにも楽天的だから御灸を添えただけだよ。まぁ、君が言ってる事も合ってるけどさぁ。君と私の関係って、相方と恋人以外にもあるでしょ?」
何を隠そう羂索は、俺の相方であり恋人である。
そして、俺は羂索を縛る鎖の様な存在だった。
まだ羂索とコンビをやっていたいと強く願ったせいか、羂索の死がなかった事になってしまった。
最初は悪いと思いつつ、呪術高専側には黙っていた。
生き返った羂索の斬られた首は、回復しないらしく俺が不器用ながらも縫い付けといた。
流石に縫い目も荒いし何かで隠そうとしたら、チョーカー型の呪具があると言われた。
色々持ってるなと思いながら、羂索の縫い目を隠す様にチョーカーを着けてやった。
暫くしてから羂索の存在が高専側にバレて、綺麗な土下座と羂索の監視をすると言う名目でどうにか生かせて貰って今に至る。
ただ俺が知らないだけで、羂索は羂索なりに縛りを付けての解放だったと後程聞かされた。
「えーっと、縛り?」
「そうだよ。君は私の縛り。だから、今は君の方が今は狙われてるわけ。分かったら荷造りして」