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    AYAPersonifica

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    AYAPersonifica

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    聖剣とカジ様の関係を書きたかったんだけど文章おかしい&収集つかなくなったので供養。
    最後ちょっと暗い。
    聖剣視点寄りの擬人化前提。

    そんな日の話武器達がマリオワールドにやってくる少し前の事……。




    「カリバーよ、この後予定はあるか?」

    武器達の世界で定期的に開かれる幹部会議。
    集合時間に遅れたオノフォースにキレたメビウスの乱闘やヤリドヴィッヒの横槍など、おおよそ見慣れた光景を経て会議は滞り無く終了した。
    そしてカリバーが会議室から出ようとした時、突然武器の王であるカジオーに呼び止められたのである。

    「いえ、特にはありませんが」

    「そうか、ならば少し付き合ってはくれぬか?」

    「分かりました」

    断る理由もなくカリバーが了承するとカジオーは満足したように頷いた。
    ついてこいと言わんばかりの視線を向け歩き出したので後を追い、二人は武器工場最深部へと場所を変えた。
    ここは本来ならば武器工場を指揮する管理者達でさえも立ち入る事のできない。
    それ故にこの空間は完全にカジオーのみが支配する作業場……といったところか。

    「突然呼び止めて悪かったな」

    「いえ、大丈夫ですよ。それより、私に何の御用ですか?」

    背中越しにカジオーが謝罪をしてきたが、特に気にした様子もなくカリバーは本題を急かすように尋ねた。
    わざわざ誰もいない、普段なら工場管理者でさえ立ち入りを許されていない場所まで連れてこられたのだ。
    恐らくはよほど重要な話があるのだろうとカリバーは推察していた。

    「うむ……」

    カジオーが足を止めたのでカリバーはそこで止まると、カジオーは振り返り口を開いた。
    その表情はどこか重々しく、有無を言わせぬ雰囲気を感じた。

    「実は……武器達に日頃のお返しとして何か贈り物をしたいと考えていてな。お前を呼んだのは他でもない、それについての相談のためだ」

    「贈り物……ですか?」

    思わず聞き返す。
    まさか孤高の王であるカジオーの口からそんな言葉が飛び出してくるとは思っていなかった。
    今のカリバーは素っ頓狂な表情を浮かべている事だろう。

    「ああ、お前を含め配下の武器達には随分と世話になっている。だがワシはそのお返しができていない……だからせめて何か贈り物をしたいと思ってな」

    「そのような事は……我々はカジオー様の為に動くのが使命であり当然の事では?」

    カリバーはカジオーの言葉を慌てて否定した。
    カジオーは全ての武器を統べる存在であり、生みの親とも言える存在。
    カリバーの場合は少し特殊だが、しかしその事を感謝こそすれど恩を感じる必要などないと思っている。

    「確かにワシはお前達武器の王たる存在……だがそれ以前にワシとお前達は同じ武器である事に変わりはない。ならば対等な関係であり、共に助け合うべき存在でもある」

    「……なるほど、自分達は種族的には同義だから日頃の感謝を込めて贈り物をしたいという事ですね?」

    「そうだ」

    カジオーの言いたいことを察したカリバーは普段よりも少し砕けた口調で頷いた。
    この王が自分達のために考えた結果思いついた事を無下に断る必要もないし、何より彼の配慮を無駄にするわけにもいかない。

    「しかし、お前達に贈り物をしたいと考えたはいいのだが……何を贈ればいいのか悩んでしまってな……」

    「……確かに難しい問題ではありますが、そこまで悩む事ですか?」

    正直、この方から渡された物なら何でも嬉しいと思う。
    例えばそこらで拾った石でも喜んで受け取るだろう。
    だが……カジオーからすれば当然そんな気楽に済ませられることではないのだ。
    どうせならば欲しいものを……という彼の気持ちがある事もカリバーは理解していた。

    「私はあまり贈り物などは詳しくありませんが……やはり相手の喜ぶものを選ぶのが一番かと」

    「それは当然であろうな……すまんな、ワシもこういった経験が無いが故に……普段感謝を示す機会などなかったからな」

    「確かに……ちなみにですが、カジオー様は現状どのような贈り物をしようと考えているのですか?」

    「戦いに役立つ武器を贈ろうと考えた」

    「……それはまた随分と無骨ですね」

    カリバーは思わず苦笑いを浮かべた。
    形に残るものを与えたいと思ったのだろうか。
    その内容が武器というのは確かにカジオーらしいと言えばらしいのだが、贈り物としては少々らしくない気もする。
    さて……どうしたものか。
    一体何を贈るか、この選択肢は非常に難しい……というよりも決め手がないと言った方が正しいだろう。
    やはりここは聞き出す方が確実だろうか。
    ……いや、ダメだな。
    贈り物というのは言い方を変えればサプライズだ。
    故に、下手にこちらから聞き出すのは得策ではない。
    事前に聞き出して勘付かれでもしたら意味が無……。

    「実は以前何か欲しいものはないかと聞いて回ったのだが……なかなか言い出しづらそうな者ばかりでな」

    「……はっ?あの、カジオー様……それは一体どういう……?」

    「ン?感謝を伝えたいが故に何かを贈ろうと思っている、というのも付け加えた上で聞き込みに行ったが」

    「いやいやいやいや」

    何故その話を本人にしてるんですか
    完全に『えっ、あの人俺達にプレゼントしようとしてるの?マジで?』的な反応される奴じゃないですか
    それじゃ贈り物の意味が無いんですよ
    存在理由を与えてくれたこの方に恩返しができるのならそれだけでも充分すぎるものだ、これ以上何かを望むなど図々しいにも程がある。
    故に貴方の手を煩わせるのが申し訳なくて言い出せない者が大半を占めると思いますが?

    「なんだ?何か問題でもあったか?」

    一瞬でカリバーの脳内にツッコミが渦巻く中、カジオーは不思議そうに首を傾げている。
    そうか、この人はそういう人だった。
    良かれと思った事を全て相手にも共有しようとする、自分の手柄をひけらかそうとはしないからな……。

    「……ちなみに聞き込みをされた方々の反応はどのような感じでしたか?」

    ……これは、聞かなかった方が良かったかもしれない。
    内心で後悔しながらもカリバーは平静を装った。
    一瞬素の反応が出かけたが何とか持ち堪えて一つ質問。

    「うむ……皆一様に『いや、そんな恐れ多い』と」

    「でしょうね」

    そりゃそうなりますよねぇ
    カリバーは心の中で大きく叫んだ。
    突然自分に贈り物をしようとしている主が現れて『何か欲しい物ないか』と聞かれたら誰だって恐れ多いと思う。
    前提として、カジオーが自ら選んだ品という特別感を出す事こそが重要なのだ。
    こう言ってはなんだが、カジオーが贈れる物など限られている。
    カジオーは本気で我々に日頃の恩を返すつもりらしいが、その方法があまりにも予想外過ぎる上に的外れだ。

    「やはり難しいか……」

    カリバーが一人悩んでいると、カジオーは小さくため息を吐いた。
    表情こそ変わらないもののその声色はどこか残念そうな雰囲気を孕んでいるようにも聞こえた。

    「カジオー様」

    このまま放置しておくのはまずいと判断したカリバーは思い切って口を開いた。

    「む?」

    「もしよろしければですが、贈る品選びに私も同行させていただいてもよろしいでしょうか?」

    正直言って気休め程度の効果しか見込めないかもしれないが、それでも何かできる事があるのならやっておきたい。
    そんな思いからの提案だった。

    「……良いのか?」

    「もちろんですよ」

    驚いたように尋ねてくるのでカリバーは首を縦に振りながら答える。
    尤も、武器達が欲していたものは“物”では無かったのだが。



    翌日、自分ならばただの世間話として話題に振れるだろうと考えたカリバーが武器工場の管理者達から聞き込みをした結果……辿り着いたのはある一つの結論だった。
    それは『カジオーと戦ってみたい』というもの。
    考えてみれば自分達はいつも最前線に駆り出される立場であり、常に戦いの中に身を置いている状態だ。
    そんな武器達が好きなものと言えば武器や戦闘に関する事。
    ならば普段会う事すら少ない最強の武器の王であるカジオーとの模擬戦を望む者が現れてもおかしくはないだろう。
    実際、カリバー自身も武器として手合わせをしたい気持ちはある。
    だが自分達はあくまでただの配下でしかない。
    そんな自分が王であるカジオーに模擬戦を挑むなど無礼極まりないし、そもそもカジオーがそれを了承するとは思えない。
    だから今まで誰一人として言い出せずにいた。

    「なるほど……物ではなく戦いとな」

    「はい、何名かは実戦に近い形式での手合わせを望んでいました。しかしそれも普段から戦う機会がないからこそです」

    カリバーの意見を聞き終えたカジオーはふむと考え込んだ。

    「確かにそれならば贈り物としては相応しいかもしれんが……」

    「何か問題でもあるのですか?」

    「いやなに、手合わせをするのは初めてだからな。加減を間違えて怪我をさせてしまうやもしれん」

    「……まあ、それはそうですよね」

    カジオーが本気で相手をすれば一瞬で試合が決まる事だろう。
    そして武器とは一度完全に壊れれば修復不可能であり、決して替えの効く物ではない。
    もしも手合わせの最中に怪我をさせてしまい二度と戦えなくなったとしたら……そんなのは誰も望まない。

    「ご安心を、その心配は無用です」

    不安を吹き飛ばすようにカリバーは自信に満ちた表情で答えた。

    「何故そう言い切れる?」

    「簡単な事です、カジオー様は我々武器を本当に大切に想って下さっている……模擬戦だろうと本気のやり合いだろうと怪我をさせるような事はあり得ませんから」

    「……うむ……」

    カリバーの言葉に嘘はない。
    長年彼の側近として付き添ってきた経験があるからこその確信だった。
    もちろん全てにおいて絶対とは言えないが……それでも自分の主を信じることくらいできる。

    「そうだな……ならばやってみようか。いざという時はお前を頼るぞ」

    「はい、お任せを」

    「それと……お前にだけは話しておこう。ワシが何故、急にこのような事をしようと言い出したのかをな」

    「はい……?」




    ーーー数日後、武器工場の一角にある広い空間にて、武器世界の住民全員でカジオーとの模擬戦が開かれた。
    カジオーは全員の希望を聞きつつ、それぞれと手合わせを行った。
    ある者は剣で、ある者は弓で、またある者は槍や斧といった様々な武器を用いて……皆思い思いに戦った。
    もちろん、武器達の中には戦闘経験が少ない者や戦いが得意ではない者もいる。
    だが……そんな彼らも例外ではなかった。
    カジオーの圧倒的な力を前に手も足も出ず敗北する者もいたが、それでも彼らの表情には充足感があった。
    それはそうだろう……なにしろ彼らは初めて王であるカジオーと共に戦う事ができたのだから。
    戦闘による影響で周囲の地形が変わってしまったが、誰もそんな事など気にも留めていない。
    それほどに、王との手合わせが楽しかったのだ。
    これはまたカジオー様の株が上がりそうだ、と影の功労者であるカリバーは思った。

    「お疲れ様です」

    模擬戦の合間に設けた休憩時間。
    いつの間にか隣に立っていた武器工場の最高管理者であるコウジョウチョーが労いの言葉をかけると、カジオーは小さく笑って答えた。

    「うむ、ありがとう……しかしやはり戦いというのは良いものだな」

    「そうですね。私も武器として生まれましたので、やはり戦闘は好きです」

    コウジョウチョーの言葉にカジオーは深く頷く。

    「しかし……まさか全員と手合わせをなさるとは思いませんでしたよ。さすがはカジオー様……といったところでしょうか」

    「そのような大それた事では無かろう。皆と手合わせする事で望みを叶えてやれた……武器の王冥利に尽きるとはまさにこの事よ」

    コウジョウチョーの呟きにカジオーは小さく笑った。
    そして改めて周囲を見渡す。
    誰もが楽しそうに笑っている。
    不満そうにしている者はいない。
    それはカジオーにとっても嬉しく、喜ばしい事だ。
    それと同時に……寂しさがあるのも事実。

    「それにしても、カジオー様自ら我々部下の希望を聞くというのはどういった心境の変化で?」

    「ふむ……そうだな。王として、武器達を支える立場である以上皆の不満や希望を聞くのは当然の事だからな。それに、今回は少々思う所もあってな……」

    「……はい?」

    「……いや、なんでもない……」

    カジオーの言葉にコウジョウチョーが首を傾げると、彼は小さく首を横に振った。
    だがすぐに視線を遠くに向けたのでコウジョウチョーはそれ以上何も聞いて来なかった。
    ……いや、ひょっとしたら気付いていたのかもしれない。
    けれどそれを口に出さない事こそが王への敬意というものだろう。

    「……ええ、言われずとも分かっております」

    何かを察したコウジョウチョーはそれだけ言って口を閉ざした。



    さらに少し離れた場所。
    模擬戦の会場をこっそり抜け出してきたカリバーは靴のコツンコツンという軽い音だけを響かせながら歩いていた。

    『ワシにはもう、延命処置ができるほど綺麗な頭のパーツが無い。恐らくは次の世界で、お前達といられるのも……だからワシは最後に贈り物をしたいと考えた。もしワシに万が一の事があればその時は……』

    数日前、カジオーから告げられた言葉。
    例え自分が何を言った所できっと彼の意志は変わらないだろう。
    だからカリバーは何も言えなかったし……言う資格はないと思った。
    仮に、もしも……。
    そんな事を考えかけて頭を振る。
    それはあまりにも不敬な考えだ、失礼極まりない。
    これ以上考えるのはやめよう。
    自分は武器だ、それ以上でもそれ以下でもないのだから。

    「そういえば……」

    ふと、脳裏に疑問が浮かぶ。
    カジオーが何故、残り時間が少ないと自覚していながら人々の願いが叶わない、そんな世界を望んでいるのか……。
    実を言えばカリバーもその真意を理解できていない。
    きっとカジオーには何か深い考えがあるのだろう。
    そしてそれは恐らく自分には理解できないものなのだ。
    だが、その根底には武器の未来を想う優しさがあるのだという確信があるのも事実。
    だから自分はただ彼という所有者に使われる武器として、その命を果たす。
    それだけを考えていればいいのだ。
    高血圧で、融通が効かなくて、気に入らない事があればすぐ癇癪を起こしハンマーを振り回す、端から見れば心底傍迷惑な王ではあるけれど。
    例え武器としての寿命が尽きたとしても、その魂は彼と共にある。
    だからこそ武器達は皆例外無くカジオーを慕い、忠誠を誓うのだ。
    つくづく不思議な方だとカリバーは思う。
    だから、私はあの方に遣える武器として、その命の灯火が尽きるまで。



    (あの方の進む道を、支え続けよう)








    まだ、少しだけ平和だった頃の、カジオー軍団のお話。








    end.
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