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    kei94

    @kkk878

    アニメから吸死にドボンしました。
    ロナドラメイン。パパ右、古き血も好きです。
    襲い受け、スパダリ受け、包容受、年下×年上、この辺りが元々性癖で
    基本I.Q2のハピエン!らぶらぶえちえち!

    ほめて箱つくってみました!
    https://www.mottohomete.net/kkk878

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    kei94

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    マリンロドの出会編です。

    いろんな上げ方を試してみてます。tlしつこくなってうるさいわってなってたらすみません:(;゙゚'ω゚'):

    #ロナドラ
    Rona x Dra

    マリンロド、王蛸風味(仮) 一羽のかもめが飛んでいる。
     季節は夏至。空は晴れ渡り、雲ひとつなく。海は鮮やかな日の光を反射して、短い夏を祝うように眩しく煌めいている。
     空と海の境目が溶け合う青空を、一羽のかもめが飛んでいる。風を受け羽ばたき、高く舞い上がる白の一点。
     かもめが飛ぶ先の港には、仲間のかもめが埠頭に並んで待っているのだろうか。それとも赤青黄色、色とりどりの満船飾を掲げた軍船の上を、鳴き交いながら飛び交っているのだろうか。年に一度の今日の夏至祭りを祝うため、軍船でさえも船内にある旗という旗を持ち出して、船首からメインマスト、そして船尾までカラフルな三角の山を描いている。
     大陸の北西に浮かぶこの小さな島国では冬は長く雪と氷に閉ざされる。だから、短い夏の太陽の光と豊かな森と海の恵みに感謝を捧げて大いに祝うのだ。普段は関係者以外立ち入り禁止の海軍の軍港敷地内にも、事前に申し込まれた屋台から魚介類を焼くいい匂いが漂い、甘味をねだる幼児の声が響き、押すな押すなの大賑わい。我が国が誇る最新の軍船とそこに乗る精鋭達を一目見ようと大勢の人が詰めかけている。軍事に興味の薄い者でも、滅多に見られない大きな船の威容を間近に見れば、否応なく感嘆の声を漏らすだろう。

     青に映える白い制服と制帽。胸に連なる勲章も誇らしく、ネイビーブルーのサッシュを右肩から下げた、自慢の兄の姿を男は思い浮かべる。それから、同じように白のダブルボタンのブレザーをまとい一列に並んで立っているであろう幼馴染の姿も。
     時刻は正午ちょうど。遠すぎて見えないけれど、軍船の上では今頃、正服に身を包んだ船員たちが微動だにせず敬礼をしているはずだ。
    (俺もあそこに行きたかった。どうして俺はこっちにいるんだろう)
     何度となく思い描いた「もしも」。
    (もしもあの時、推薦を断れていたら……)

     ピ――――――――――ッ、ピッ!

     ホイッスルの音が喧騒を割き、祭りの浮ついた空気が、厳粛に引き締まる。
     考えるより先に彼の体は動く。左右左右左右左…………。一つに重なる軍靴の音。より高い音が鳴るように裏に金属が仕込んである。
    (特製と言えば聞こえは良いが、要は見せかけだ……)
     儀仗銃の角度、手の角度、腕の角度、顔の向き、表情。全て揃った男達による一糸乱れぬ行進。体に染みつくまで繰り返した訓練のおかげで、男が内心どう考えていようと手足は動く。
    (むしろお前はすぐ顔に出るから何も考えるな、とさえ言われたんだよなぁ……)
     考えが表情にでなくなるまで行った、血の滲むような訓練を思い出す。苦手を克服できるよう協力してやる! と、良い笑顔でトラップを仕掛けるくだんの幼馴染。あれは、辛い訓練だった。今でも完全に克服できたとは言い難い。視界の端でフラッシュの音と光が瞬いて、もう一人の幼馴染を思い出す。お前は良い被写体だから、と彼も彼なりの褒め言葉で激励してくれたっけ。やり遂げた時の達成感、観客からの拍手、歓声。憧れの兄にも自分にはなれなかったからお前がとても誇らしい、そう言ってもらえたこと。
    (ああ……それでも、それでもやっぱり俺も船に乗りたかったなぁ。兄貴のような、王国と海を護る男になりたかった。……もちろん、すごく名誉な事だとも理解はしているけれど……、俺には絶対向いてないのに…………)

     本日のメイン会場で一番の目玉でそして花形である、儀仗兵による海に向かって行う栄誉礼。
     向いていないと卑下する心ここに在らずの内面とは裏腹に、芸術家の手による彫刻のようなその相貌と恵まれた体躯。容姿端麗が必須の儀仗兵の中でも特に整った顔立ちのその青年の、光を受けて輝く銀髪。貴賓席で退屈そうに座っていた王侯貴族の貴婦人達の目が輝き、扇子に隠された口元からは誰からともなく吐息が漏れる。政教は分離すべき、税金の無駄だ! などと声高に主張する下院議員ですら、言葉をなくして目を奪われている。
     軍船に向けられるのと同じか、それ以上の熱い視線を、万人から向けられていることを、ただ本人だけが知らないのだった。

     隊列での行進が終わり、海を向いて右向け右。ザッザッザ……と儀仗銃を構える音。空砲を青空に向かって21回。
     思わずといった形で上がった群衆の拍手喝采と音楽隊の高らかなファンファーレに合わせて、青年は一人進み出る。胸には「友情」と「平和」の黄色い薔薇の花一輪。
     歩むのは汚れひとつない赤いカーペット。
     カーペットは緩やかなスロープを下り、海の中へと続いている。そして、波がかぶるギリギリのところに大人が一人立てる大きさの高さ20センチほどの高さ台が設えてあった。
     通例であればカーペットの上は自国の貴人か、さもなければ他国の元首や国賓が歩き、台に乗って敬礼を行う。つまり通常通りの人間の賓客であれば、服や革靴が濡れてしまう場所に立たせるため、国際問題にも発展するような侮辱的とも取れる設営である。
     しかし、誰もおかしいとは思わない。100年以上前から少しずつ形を変えて行われる、これがこの国の夏至の儀礼なのだ。人魚と王子のお伽噺が残るこの国で、年に一度夏至の日に、海に薔薇を一輪投げ入れることで伝説の人魚と、ひいては海の恵みに感謝を捧げる。

     男もまた足にかぶる波の飛沫に顔色ひとつ変えず、胸元の薔薇を取ると音楽隊の演奏にあわせて誰もいない波打ち際に恭しく薔薇を差し出した。
    (練習通りにゆっくりと落ち着いて10カウント。1、2、3、4……)
     音楽隊のドラムロールと合わせなければいけないので緊張するが、音楽隊も国中から選りすぐられたこの道の精鋭だ。いざとなれば俺たちがなんとかしてやるよと金管を光らせながら肩を叩いた頼もしい顔を脳裏に思い出して少し落ち着く。
    (7、8、9……10)
     10のタイミングで薔薇を手放す。重力に従って波間に落ちる。うまくいけば薔薇はしばらく台に乗って、波に揺られ海へと沈んでいく。
     そのはずだった。100以上毎年繰り返された、少し退屈で少しロマンティックな、この儀式……。
     
     おい! 見ろ、薔薇が! 浮いてる!

     最初に声を上げたのは誰だったのだろうか。

     海に捧げられた黄色の薔薇を、うねうねと吸盤の動く蛸の脚としか思えない何かがニョロりと巻きついて、揺らしている。
     夜空をめくって作ったような、濃い紫の透明なベールが、青年の目の前で人の大人ほどの山になっていた。ベールは透明な膜のようなのに、しかし中身は全く見えず。光も影を作らない。あまりにも見えないので最初はクラゲかと思われた。だが、薔薇をつかむその触手に吸盤らしきものが見て、それでやはりクラゲではなくタコなのだと気づかされる。
     薔薇を捧げた体勢のまま、握手を求めるように伸ばしたままの青年の手を、またもう一本の蛸足が掴む。

     ざわざわとした驚愕の声が次第に喧騒から狂騒へと変わり、目の前に現れた異形のものに対して怯えて逃げる貴婦人の悲鳴、その隣の政治家の怒号、中でも強烈なのは報道関係者の放つフラッシュの光と興奮の声。
     その時その男、薔薇捧げの代表儀仗兵であるロナルド青年が飛び上がらなかったのは奇跡だろう。これまでの数々の訓練の賜物だ。
     自身の右手に絡みつく蛸の脚に驚きをあらわにするどころか、彼が咄嗟に取ったのは、なんと相対する警戒ではなく背後に隠す警備だった。なぜそうしたかは、本人にもわからない。守らなくてはと咄嗟に思ったのだ。それは、曲がりなりにも、自分は国賓をいざとなればこの身1つで盾となって護る儀仗兵なのだからと。軽業士の様に曲芸を決めて拍手をもらうだけではない、あくまでも、いやせめてもの、兄と同じ海軍の、護る者であろうとする矜持がそうさせたのかもしれない。
     栄誉礼を行い、薔薇を捧げ、貴人がその手に受けた。ならばその貴人は、たとえその姿が伝説の水妖の様であろうと、自分が護るべきだ、と。
     もし自分の見込み違いで背後から攻撃してくることになれば、その時は、その時。やはり同じように我々が壁となればいいのだから。
     背筋を伸ばして、左手は腰に右手は未だ蛸の足を貴婦人をエスコートするように恭しく持ったまま、地につけた靴底で音を鳴らす。
     ロナルドの行動に倣うように、同僚も同じく直立不動の体勢を取る。
     ザンッ……。

     元より、儀仗兵の銃には空砲しか入っていない。どちらにも向けない。我々が撃つのは空だけ。ただ、態度で、示して護る。
     その態度と音に、はっと一瞬会場が静まり返った。
     号外だ号外だと大声を上げていた報道関係者席ですら、固唾を飲んで見守った。

     その緊迫と緊張と男達の覚悟で張り詰めた空気の中、「へぇ、陸の国いろいろ増えてるー!こういうのが今の流行り?面白いー!」耳を疑うような、楽しそうな軽薄な声が聞こえた。
     驚くロナルドの右肩にさらに蛸足が乗り、それは視界の端でみるみるうちに人間のような5本の指に変じる。爪を彩る艶々とした赤になぜか違う意味で鼓動が高鳴ってしまうのも致し方ないこと。「おっとっと……」という声と共に肩にかかる体重が増えて、ロナルドは反射的に振り向いて支えた。ぐにゃりとした質感と水の重量を想像するが、しかし腕にすっぽりと収まったのはどちらかといえば骨のごつごつした、心配になるほど細身の肢体だった。
     さらにどういう冗談かいつの間にか自国の海軍の水兵服を着ている。水兵の登用試験を受けるまでもなく書類審査かさもなければ窓口で落とされそうな貧弱な見た目。大きな紺色のセーラーカラーからのぞく胸元は鎖骨が浮くほどガリガリで、どうみても不似合いなその姿。肌の色は青白く、耳は尖っている。赤い血の人間にはありえない色だ。あのタコが変身したのだ。
     薔薇は? と思えば、いつの間にかタコの片手に抱き抱えられていた大きな貝が持っていた。
    「えっと……貴方がくれたんだよね?」
     大きな瞳の中の小さな虹彩が、きょろりとロナルドの目を覗き込む。
    「これからよろしくね、王子様」
     本当に楽しそうに笑うなぁと、男は思った。現実逃避だった。
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