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    hakkabox

    @hakkabox

    考察と妄想とポエムとメモがごっちゃになりがちなので、とりあえず思いつきを放り込むボックスを作ってみました。作品未満のまとまらないポエムとか、脳内会話とか、ネタバレメタ視点だとか!
    緩く生暖かくご覧いただけると幸いです。

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    hakkabox

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    アップルちゃんの取材に協力するフリックさんとかかいてみたいなー、って!

     私の言葉にその人は思いも寄らない、といった表情を見せた。沈着冷静な少壮の、といった面立ちに不意に懐かしい色が乗る。出会った頃のこの人は、そういえば随分と表情が豊かな人だったのだ。
     彼は私をまじまじと見つめたあとに視線を外し、それから微かに鼻を鳴らそうとして思いとどまる。昔はそこで少し肩を竦めてから仕方がないな、とばかりの淡い笑みを――思えばそれは子どもに向けるそれだった――見せてくれたものだった。
    「……そう、か。……そう、だったのかもしれないな。おれは、不肖極まる弟子だったが」
     子どもをなだめる笑みのかわりに、彼は静かに目を伏せて手にしていたカップを卓に戻した。
     しばしの沈黙。組んだ両手を額にあて、まるで祈るように目を閉じている彼の言葉を私は待った。
    「……参ったな。て、ことは考えようによっちゃ、シュウやアップルは俺の…兄弟子だの姉弟子だのにあたるのか…? そうこられちゃ、…妹弟子の頼みだもんな。協力しないわけにはいかないじゃないか」
     緩やかな笑みは少しばかりの苦味を伴い、それでいて軽やかだった。彼がちょっとした冗談のように口にした言葉は、これ以上なく正鵠を射抜いたものだ。彼、門の紋章戦争の立役者の一人、解放軍の副リーダーであったフリックは、軍略の面では、マッシュ・シルバーバーグの最後の弟子でもあるのだから。

     オデッサ.シルバーバーグの理想を最も近くで支えた戦士。彼女の思想を引き継いだその上で、マッシュ先生のもとで門の紋章を戦い抜いた副リーダー。
     今でもよく覚えている。あの湖の城の先生の部屋で、彼らはよく論を交わしていた。当時の私は白熱する議論や軍議についていけるはずもなく、少し時間を置いたあとにマッシュ先生やレパントさん、そしてあまり機会はなかったけれども彼からも、交わしていた論の意味や戦略の理由を教えてもらうばかりだった。
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    hakkabox

    PASTリーダーと副リーダーの関係性が今熱いと聞いて、引っ張り出してきました! 支部にもおいてあるけど!
    フリックさんガチ有能、スカーレティシアの例のアレだって、あまりにも、あまりにも出来すぎててむしろ出来レース疑惑なので、話にしてみました!
    リーダーをリーダーとして認めさせるために、泥をかぶることを当然と認識してるフリックさんはいいぞ!
    ガランにて「やったぜ おれたちが、解放軍が帝国軍をやぶった」
    「……勝ったのか」
     城塞の戦いを見守っていた青年の興奮を隠しきれないその声を受けて少年の口から発せられた静かな言葉に、マッシュは口の端だけで笑みを深めた。
     解放軍、などとたいそうな名乗りをあげてはいるものの、実質各地の反乱組織をとりまとめゲリラ戦を展開するに留まっていた組織である。帝国の拠点の一つとはいえたかが関所を落とした程度の小さな戦果、だが解放組織にとってパンヌ・ヤクタの攻略に引き続くこの勝利はとてつもなく大きなものと映るだろう。
     軍主として組織を率いての連勝を確信しながら、その声に喜色が見られないとは。少年の年齢ならば功名心に舞い上がっても不思議ではないというのに、なんともまあリーダーとして望ましい振る舞いではないか。
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    hakkabox

    PASTサマーウォーズ放送記念に!
    過去名義でアンソロに参加させていただいた支部にも乗せてるやつですが、ビクトールとフリックが花札勝負をしているのを見たかったので自分で書いた話

    ビクトールとフリックの明確なキスシーン(感情を伴うが挨拶程度の肉感的ではない描写)、地の文において身体を重ねる関係であることが明示されていることをご承知おき下さい
    恋請「なあフリック、賭けをしよう」
     言い出したのはビクトール。いい加減酔いも回っている筈の宴もたけなわの頃合いだったにも関わらず、その声はとても落ち着き払っていた。軽い酔い心地のまま、ぼんやりと酒場の喧騒に身を任せて頬杖をついていたフリックは、足を組み替えながら向き直る。
    「ふうん…どうせろくでもない魂胆があるんだろ」
     たっぷり一呼吸分の間、無遠慮にビクトールを上から下まで眺め回してやってから、フリックはにやりと笑ってそう応じた。 
     ああ、まったくもって良い酒だ。なんたってビクトールの考えていることが良くわかる。
     いつもよりほんの僅かに上目遣いにこちらを伺う男の視線をフリックは真正面から受け止めた。この男が、こういう目をするときに考えていることなど、フリックにはとうの昔に分かりきっている。
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