ボラさんがおきおに櫛を贈る話「やる」
自身の手の中で照り映える飴色を見て、キオは目を瞬かせた。事務所の照明に反射して艶々と光るそれは自分にはあまりにも不釣り合いに思われて。恋人の手から自分の手へと渡った瞬間、落としてしまいそうになったくらいだ。
「やる、と言われましても…」
キオは目の前の恋人がいつもそうしているように眉間に皺を寄せた。
無理もない。いきなり手を出せ、なんて言われて投げ渡されたのが女物の櫛だなんて。プレゼントにしてはあまりにもおざなりすぎる。つまりはあれか。依頼の証拠品だから保管しておけということか。
だがその推理はアテが外れたらしい。無表情から一転、恋人の顔が不機嫌で歪んだ。
「お前にやると言ってるんだ」
つまりは自分宛へのプレゼントということか。
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