12/2:綺麗な星空 ランスロットがグランサイファーの船尾側で見張りをしていると、いつの間にか交代の時間になっていたらしく、次の見張りを担当するグランに声をかけられた。
簡単な引継ぎを終え、深夜にしては明るくて周りを一望しやすかったと他愛のない世間話をすると、グランは、ああ確かに、と納得した様子で話を切り出す。
「ステルラ島に負けないくらい、この島の星空も凄く綺麗なんだって」
「そうなのか。それなら少し見ていこうかな」
うん、それがいいよと、年相応に喜ぶグランの反応で一息つき、ランスロットはその場を離れた。部屋に戻る前に停泊中のグランサイファーから降りると、開けた場所へ移動する。
「これは、凄いな……」
見上げると、霜天に広がる星影がまるで宝石を溢したように輝いていた。
星空がそう思わせているのか、それとも、この場所が澄みきっているからか、身体に入り込む冷たい空気すらも心地よく思えた。
「壮観だな」
声の方を向くと、軽く防寒着を羽織ったよく知った人物が立っていた。
「まだ起きてらしたのですか?」
ジークフリートは隣に並ぶと、ランスロットの問いに応えるように持っていた2つのカップの内の1つを手渡した。
「飲み物を選んでいたら、星が綺麗だと教えてもらってな」
ランスロットは礼を言ってカップに口をつけると、暖かく甘いチョコレートの香りに満たされる。
「温まりますね……」
彼にしては珍しい飲み物の選択だと思っていると、ジークフリートが口を開く。
「星を見に行くなら、飲み物は2つあった方がいいとも言われてな」
甘いものを選んでよかった。その呟きを聞いたランスロットの顔がじわりと紅潮する。
「大丈夫か?ランスロット」
「あ、だ、大丈夫です!飲み物のお蔭で、一気に熱くなったみたいで……」
自分のこの気持ちは一体どこまで知られてしまっているのだろうかと。ランスロットはこれ以上赤い顔を見られないよう、冷たい空気をめいっぱい吸い込んだ。