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    tp0_g4

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    ランジク

    #ランジク
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    10/29:旬の味覚 目当ての武器屋での用事を済ませ、グランサイファーへ戻る途中のことだった。
     通り道で見かけた、青果店に並ぶ様々な色や種類のカボチャからハロウィンの訪れを感じていると、店主と目が合い声を掛けられた。立ち寄ってみれば、今朝採ったばかりだという真っ赤に熟れた林檎を突然渡される。無償で頂くのは流石に忍びなくて、購入させて欲しいと伝えたら提示された金額以上の量の果物が入った紙袋を渡された。油断したら上から順に転がり落ちそうなくらい積まれている。
    「凄い量ですね」
     慎重に持ってはいるが、何がきっかけで崩れ落ちてしまうかわからない。せめて、上段に隙間を作れさえすればこの不安は消えそうだった。どうしようかと考えを巡らせていると、不意に、ランスロット、と隣を歩いていたジークフリートさんが自分の名を呼んだ。
    「少し、数を減らしていくか」
     そう言ったジークフリートさんの視線を辿ると、休憩所として申し分ない広場がそこにはあった。
    「良いですね!」
     思っていたよりも大きな声の返事を溢してしまい、少し後悔する。向けられた微笑みの奥では、浮かれた声だと思われていないことを願って適当な椅子に座った。
     袋から林檎を取り出すと、ジークフリートさんにまずはひとつ手渡した。自分の分もひとつ手に取って見ると、つやつやと輝く皮の赤さは、店主の言った通り採れたての新鮮さを表している。
     早速ひと口齧ってみると、その瞬間甘酸っぱい香りがふわりと広がった。蜜がぎっしりと詰まっているようで、爽やかな酸味と甘み、瑞々しい果汁が口の中を満たした。
     あまりの美味しさについ、ジークフリートさんの方を向くと、理想的で豪快な音を立てながら齧る様子を見ることが出来た。うっとりと目を細めた一瞬の後すぐに二口目に移っていたが、とにかくひと口が大きい。それでも、どこか気品がある食べ方に感心して見ていたつもりが、はたと目が合うとジークフリートさんは少し申し訳なさそうに笑った。
    「昔の癖でな。あまり褒められたことではないとわかってはいるんだが……」
     初めは何の話をしているのかわからなかったものの、思い当たる節があったので、ジークフリートさんが自分の食べ方について負い目があるのだと気付けた。
     早食いについては様々な指摘が来るものだと良く知っていたので、何も言わずに眺め続けてしまったことには申し訳ないと思った。そんな気持ちを伝えるようにして、俺も自分の手元の林檎に齧りつく。数口で半分以上質量を減らすと、再び、意外そうに瞳を丸くするジークフリートさんと目が合った。そういえばこんな食べ方、貴方に見せる機会は今までありませんでした。
    「俺も実は、気を抜くとすぐ早食いしてしまうんです」
    「そうなのか?」
     見つかる度に怒られてきましたと言うと、ジークフリートさんはくすりと笑い、俺もつられて笑いが零れる。
     早く食べる癖は必要に駆られて身に着いてしまったものだが、共通点が見つかると烏滸がましくも嬉しさが顔を出す。
     今ならどんな話でもしてしまいそうなくらい浮足が立ってはいたが、豪快な食べ方を意識したのは貴方がきっかけであると伝えるにはまだ気恥ずかしさが邪魔をした。
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