10/19:仮装の準備「今年も竜の仮装なんですね」
どことなく心楽しそうにランスロットが声をかけると、ジークフリートは小さく笑う。
「子供達もかなり気に入ってくれたからな」
去年のハロウィンでジークフリートが作成した衣装は相当好評だった。その時の衣装である、羽が付いたマントを子供達に貸し出したはいいものの、次々と自分にも貸して欲しいと申し出る者が現れ、ジークフリートの手元に衣装が戻ってきたのは随分時間が経ってからだったそうだ。
待っている間に何の仮装をしているのかと何度も尋ねられてしまったこともあり、今年はせめて、祭の間中誰かに貸せるようにと、マントをもう一つ作ることにしたらしい。
黙々と縫合するジークフリートの指の動きを、まるで学習するかのようにランスロットは見つめていた。
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