台風。「今日の天気は荒れるみたいですね…。」
「お出かけはまた今度だなー。」
朝のニュースでは今日の天気予報がされていて、台風が近づいている影響で、午後からの天気は暴風雨だ。幸い、今日はオフ。外に出る予定はまた今度にして家の中で大人しくしていることにした。
「映画でも見る?」
「いいですね!」
「おれ、ポップコーン作るから司はコップとジュース用意してくれる?」
「かしこまりました!」
キッチンからは、ポン!ポン!とコーンの弾ける音と、いい匂いがしてくる。コップに氷とジュースを注いで、サイドテーブルにセットした。これだけで映画を観るのもワクワクする。
「おまたせ。何がいい?」
「夏の台風の日には、やっぱりとなりの○○○です!」
「おれ、ちゃんと見た事なかったかも。」
「なんと…!これは、見るしかありませんね♪」
映画は見始めるとあっという間で、エンディングが終わる頃には外も薄暗くなっていた。
「あー面白かった〜!」
「夏といえばこれです♪」
「ほんと夏って感じだった。」
「あとはスイカ食べて〜、熱いお風呂に入った後に扇風機の前でアイスを食べればバッチリですよ!」
「そんなに食べたら太っちゃうぞ?」
「大丈夫です!夏なので♪」
「それ、絶対に秋になっても言うやつだろ〜?」
「それはそうかもしれませんね?でも、いいのです♪レオさんと夏を満喫出来ればつかさに悔いはありません!」
「おれも、つかさと夏らしいことできるの楽しいよ♪」
「では、そろそろご飯作りましょうかね?」
「そうだな!」
そう言って二人で夕食の準備を始めて数分…。バチッと音がして部屋中の明かりが消え、電化製品の電源も全て落ちた。
「わぁっ!レオさんっ!」
「司、大丈夫だから落ち着いて。」
「はい…。」
「おれはブレーカー見てくるから、司はスマホのライト付けて、落ちた家電の電源全部オフにして消して。」
「わかりました!」
レオさんに言われるまま、一つずつ家電の電源を切った。ブレーカーは上がったままのようで、復旧するまではこのままのようだ。スマホのライトを頼りに、予備のバッテリーを引っ張り出してきてなんとかお湯くらいは沸かせるようになった。
「司、大丈夫?」
「はい、とりあえずはこれで辛抱するしかないかと。」
「外も見てきたけど、雨風も強いし街一帯停電してるみたい。」
「そうですか…。」
「ちょっと待ってて、おれご飯作ってくるから!」
「え、でも…。」
「大丈夫、おれに任せて!」
レオさんはキッチンに行くと、ガスコンロを取り出して何か作っている。待っているだけなのも暇になってしまい、思いつきでライブで使用したペンライトを部屋からたくさん持ってきて並べてみた。
「おぉ!これは我ながらナイスなのではそうだ、お風呂にも置いてみましょう♪そっちは直前に折った方が良さそうですね!」
「司〜ご飯よぉ〜!って、凄いなこれ!ライブ会場みたい!」
「そうでしょう?廊下なんて、飛行機の滑走路みたいになってます♪」
「わぁ〜ほんとだ!」
「ちなみに、お風呂にも用意がありますので、あとでお披露目しますね!」
「楽しみ♪」
「先にご飯をいただきますね!」
「うん。」
「これは…!」
「即席ラーメンです!」
「ポ〇が食べていたあのラーメン…!」
「おれ、ポ〇もちゃんと見たことないんだけど。」
「それでこの再現度…!レオさんは即席麺のプロなのかもしれません…。」
「よくわかんないけど、美味しくできたから満足!」
「とっても美味しいです!」
「よかった♪」
レオさんの作ってくれたラーメンは煮たまごなんかも入っていて、お店みたいだった。食べ終わったあとは、お風呂の準備をする。パキッと折る度に蛍光色に光り出すペンライトを湯船の中に入れると、なんだか不思議な精霊が出てきそうなお風呂になった。
「レオさん、お風呂の準備できましたよ♪」
「は〜い!」
「どうですか?」
「うちのお風呂が幻想的だ…!」
「一緒に入りますか?」
「うん♪ちなみに、これは…。」
「ライトセイバーの方です。」
「あぁ、なるほど!」
「お湯の中に沈めてあります。」
「おれ、最後に泡風呂したい!」
「いいですね♪」
湯船に浸かって、泡を頭に乗せたりツノを作って遊んだり、二人でキャッキャしながらお風呂を楽しんだ。
「見て見て〜!」
「あはは♪」
「司って、こういうの好きだよな!すぐ笑うし♪」
「そうですね?こういう経験があまりないからかもしれません。レオさんといるといつも新鮮でたのしいです♪」
「そっか♪おれも楽しいよ!」
「ふふっ♪えい!」
「やったな〜?それ!」
「キャ〜♪」
レオさんとじゃれあっているうちに、お湯は半分以上なくなってしまって、もう一度温まるために大人しくレオさんの肩に頭を預ける。
「はぁ〜♪楽しかったですね!」
「うん!またやりたいな?」
「今度はスライム風呂とかいうものをやってみたいです。」
「スライム?」
「つかさもあまりよくわかっていませんが、入浴剤みたいです。」
「へぇ〜!いろんなのがあったら楽しそうだ♪」
「レオさん、そろそろ温まりましたか?」
「流して出よっか、逆上せちゃいそうだし。」
「はい。」
ホカホカのまま一緒に布団に入ると、ひんやりとした布団が心地良い。まだ寝るには少し早くて、レオさんといろんな話をした。
「司は雷とか怖くない?」
「多少は怖いですけど、レオさんがいるので大丈夫です。」
「停電になったとき結構びっくりしてたから、怖いのかなって思った。」
「少し怖かったです。真っ暗なのは苦手かもしれません。」
「おれも、ほんとはちょっと怖かったんだ。」
「そうなんですか?そんなふうには見えませんでした…。」
「司のこと、おれが守らないとなって思ったら大丈夫になった。」
「さすが私の騎士様です♪」
「だから、おれが守れるようにそばにいてね。」
「はい♪」
外はまだ雨風と雷の音もしている。これから本格的に台風が来る。明日もまだ外には出られないかもしれないけれど、ほんの少しの不安もレオさんと一緒なら大丈夫。朝が来るまで、二人で手を繋いで眠った。