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    rain

    ロナドラの話を書いてます。

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    rain

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    🛋️⚰️開催おめでとうございます。一日目のお話です。

    #ロナドラ
    Rona x Dra
    #ロナドラ小説
    lonadoraNovels

    祝い事もうひとつ「ハッピーバースデーローナルードーくーん」
     調子が外れた歌を歌いながら、ドラ公がケーキを運んでくる。
     ヒナイチは自分の分ではなく、それがしっかりと俺のだとわかっているので、ぐっと我慢しながらクッキーを口にしていた。
     いや、おかしくね? どういうこと?
    「こうでもしないと、彼女目の色かえるから……」
     とはドラ公のセリフだ。
    「うちは弱肉強食だからな。たとえ私の誕生日ケーキでも、兄は容赦なく奪っていくんだ」
    「それは兄としてどうなんだよ」 
     俺がまだ小さい頃ならそう言うこともあったかもしれないけど、泣かれて兄貴に叱られて、きちんと分け合ったりするようになったっけ。
    「ヒナイチ君のときは、特大ケーキにしてあげようね……」
     ドラ公も憐れみの視線を向けている。
    「楽しみにしているぞ!」
    「ふふ。五段重ねにでもするかい?」
     五段と聞いて、キラキラと瞳を輝かせる。
    「えっ、ずるい! 俺も!」
    「はいはい、来年ね。今年はこのドラドラちゃんスペシャルケーキで満足しなさい。君はヒナイチ君ほど食べないんだし。
     他のご馳走が食べれなくなってしまうよ?」
     せっかくローストチキンも焼いたのに。と言われたら、それもそうだと納得してしまった。
     こいつのローストチキンはめちゃくちゃうまい。今日はリクエスト通りに作ってくれるっていうので、すごく楽しみにしていた。
     それが食べられなくなるのは、絶対にいやだった。
    「ほら、ローソクを吹き消すときにはお願い事をするんだぞ。
     バナナ食べ放題とか健康祈願とかロナル子ちゃんになりませんようにとか」
    「食べ終わったら殺す」
    「それが願いになるけどいいの?」
     よくねぇんだわ。
     部屋の照明を落として、ふぅっと息を吹きかけた。

     願い事は。

     ……来年もドラ公がケーキを作ってお祝いしてくれますように。ここから、出ていきませんように。

     決して口にはしないけど、俺はこいつに惚れている。

     それはいつからだったろう。
     胃袋をがっしり掴まれたからとか、一緒にいて楽しいとかそう言うのが最初にあって。
     友達……というふうに言うのももなんか悔しくて、気を遣わない同居人、くらい、だと思ってたんだ。
     だけどある日。

    「ん……ジョン……」
    「え、あ、お……!?」
     寝ぼけたドラ公が俺の頬に口づけてきて、固まった。
     珍しくソファーでうたた寝をしていたドラ公を起こそうとしたら、赤いマニキュアをつかた指先が俺の髪にふれて。
    「おいで、良い子だね……ほら、おねむだろ……ん」
     引っ張られるままソファーに倒れて、心臓がバクバクとうるさくて。
     抱きしめてきた身体は固く、柔らかさなんてどこにもなかった。それなのにものすごい良い匂いがして、一気に体が熱くなってしまった。
     そうっと力の抜けきったドラ公の腕から逃げ出して、洗面所へ駆け込んで顔を洗ってもまだ、熱い。
     こんなのはおかしい、とそのままシャワーも浴びたけど、一旦上がってしまった熱はなかなか引かなかった。

     それからドラ公の、何気ない仕草や言葉に、いちいちどぎまぎして。
     気がつくと、好きになってしまっていた。
     これはあいつが悪いんだといまでも思ってる。
     あんなことさえしなかったら、俺はいまでもあいつをただの同居人として見ていられたのに。
     こんなことがバレたら、きっとドラ公は出て行ってしまうから、心の奥底の箱にいれて、鎖でぐるぐる巻きにして、鍵もつけた。
     だから今のところバレていない。
     このまま、何事もなく、ただこいつと過ごせたらそれで幸せ。

     



    「ふぅ~……んまかった……」
     誕生日くらいは素直にそう告げる。
    「うーん、なにひとつ残らない。見事に綺麗にすべて食べたねぇ」
     皿洗いをするドラ公の隣に並んで、受け取った食器を拭いてしまう。
     なんかこれ、夫婦みたいじゃね?
     なんて内心浮かれていると、ドラ公がクスクス笑う。
    「君もそうやってお皿を受け取るのも上手になったねぇ。さすが私。五歳児をきちんと育てたなぁ」
    「五歳じゃねぇし」
     ドラ公にとっては、俺はいまでも子供なんだろうな。確かにこいつの方がずっと年上だけどさ。
     その年下から、脳内じゃあ、ネットから得た知識で、あんなことやそんなこともされてるとは知らずに、ドラ公は上機嫌に布巾で手を拭いた。
    「さて、お腹いっぱいのヒナイチ君とジョンは秘密基地で夢の中だけど、君はどうする? もう休むかい?」
     時間を見れば午前様だ。普段なら退治だパトロールだと、歩き回っている時間帯でもある。
    「……おまえは?」
    「流石にまだ寝るには早いかな」
    「じゃあさ、その……」
     どうしよう。せっかくの誕生日なんだし、もう少しだけこいつと話をしても許されるんじゃないだろうか。
    「おや、若造はまだ眠くないのかね。なら、ゆっくりクソ映画でも見ながらお茶でもブェーー」
    「なんで誕生日にわざわざクソ映画チョイスすんだよ!」
    「仕方ないなぁ、じゃあ名作で」
    「初めからその選択をしろっての」

     なんて言いながら観た映画は面白かった。終わったあとには思わず感想をドラ公に告げるくらいに。
    「あの恐竜を手懐けるとかすげぇよ。てか夜中の仕事とか親近感わいたわ」 
    「んふふ、続編もあるよ」
    「観たい!」
    「いいけど、もう夜も更けたからまた今度にしなさいね。ポップコーンも作ってあげるからさ」
     確かにそろそろ寝ないとまずい時間帯ではある。
     特にこいつは棺桶に籠もらないといけないし。
    「……じゃあ、次の休みのときな。キャラメルポップコーンだからな!」
    「はいはい。ホットドッグもつけるかい?」
    「やった!」
     誕生日だからか、いつもより甘えさせてくれている気がして、嬉しい。
     だから、欲がわいたのかもしれない。
     腕を回して抱きしめてみた。
    「……っ……」
     驚いたのか硬直してしまったドラ公の肩へと顎をのせる。
    「ロ、ロナルド君? きみ、どうしたんだね。急激におねむかな?」
    「……まだ、眠くねぇ」
     否定されないというか、砂らないことに安心した。
     これはイヤじゃないってことだよな?
     こういう雰囲気だと、だいたいエッチなことになるか、甘々ラブラブになるかの二択なんだけど、そもそも付き合ってない。
     その現実に泣きそうになる。
     いいんだ、こうやってくっつけただけでも満足だから……
    「……冬でもないのに、一肌恋しくなったのかね?」
    「……そんなとこ。けど、おまえあんまりあったかくないな」
     こいつのひんやりした肌は、夏にはありがたい。
     前にちょっと距離が近すぎるのでは? と突っ込みを食らったことはあるけど、でもそれだって仲のいい友達とかそういう距離だったはず……
     なんかショットから付き合ってんの? とか言われて慌てて否定したけど。付き合えてたら苦労しないんだわ……
     それにしてもひゃっこいなぁ。冬だったら、寒くて仕方ないんじゃないだろうか。
     あ、俺の方が体温が高いからジョンごと抱きしめて暖めてやれるかな?     
     例えば、外でパトロール終わったあととかに、こいつが「寒いね」なんて言って、それでこいつの後ろからこう、ぎゅっとして「仕方ねぇから体温わけてやんよ」なんて。
     ……棺桶じゃなくて、同じベッドで眠るなら……いやいや、それは流石に友達でもやらないか? 
     恋人なら……恋人かぁ。
     今はおとなしく腕の中にいる吸血鬼に、それは難しいかなぁなんて寂しく思う。
     だって、きっとそんなふうにはみられていない。
     だからいまもソファーベッドの上で抱きしめられてるのに、危機感なく、俺をあやすように頭を撫でているんだ。
     くっそ、俺おまえのこと好きなんだぞ。ますます好きになっちゃうから、優しく撫でるのやめ……嘘ですやめないで。
     もっと撫でてほしい。あわよくば、ジョンにするみたいなおやすみのちゅーとか……

    「……柔らかくて温もりのある恋人でも作りなさいよ。私を代わりにしてても虚しいだけだろうが」
     呆れたように言われて、思わず硬直した。
    「…それって、俺に彼女つくれって言ってる?」
    「ん? いや、べつに、彼女でも彼氏でもかまわんが、君は胸派じゃなかったかね?」
     いつの話をしてるんだよ。
    「それにしても、こんなに美形なのに本当にもったいない。おとなしくしていたら、モテモテゴリラなのに」
     ぐっと顔を寄せてきて、ちゅーできそうな距離にドキリとする。
     くっ……! 言っている内容が内容じゃなかったら、ドキドキするのに、悲しくて泣きそうだ。
    「も、もてるのも、べつに、誰彼構わずじゃいけないって、最近気がついたんだよ」
    「ほお? そうかね」
    「そ、そうだよ」
     本音はお前にモテたいんだ……
    「……おや。実は特定のお相手ができたのかい。知らなかったなぁ? へぇ、いつの間に? どこのお嬢さん? それとも、どこかの動物園のゴリラのお嬢さん?」
     からかうような口調だけど、今更ながらの展開に、内心それどころじゃない。
     だって、こういう展開、映画とかでよくあるじゃん?
     このあとの選択肢を間違えると、ろくなことにならないやつ! 知ってる!
     だいたいすれ違いやらボタンの掛け違いとかで、えらいことになるやつ。ボタンの掛け違いってか、シャツをズタボロに引き裂くような、しんどい展開になる予感がする!

     そして俺の頭に浮かんだ選択肢は三つ。

     一、ぼかして伝える。→「なら私は邪魔かもしれないね。出て行こう」

     二、正直に伝える。→「え、ごめん。君のことそんなふうには……出て行くね」

     三、まだいないと言う。→「そうなの。じゃあ見つかるように協力するね。後々出て行くし」

    「ダメだーーーーー!!」
    「うわびっくり死! なんだ急に!?」
     大声に驚いたドラ公が砂ったので、その砂をかき混ぜながら、訴える。
    「ええええんっ! いやだー! ドラ公出て行くのはだめだー!」
    「わー! 止めろ止めろ! 混ぜるな! というか、なにがどうしてそう言う答えに行き着いた!?」
    「だってドラ公、俺の好きなひとを知ったら出て行くじゃん! そんなのやだー!」
    「ええええ……?」
     元に戻りつつ、困惑したような顔でティッシュで涙を拭ってくれる。
    「なんで私が出て行くことになるんだ」
    「だ、だっておまえ、俺に彼女つくれってそう言うことだろ? そしたらさ、身を引こうとするじゃん?」
    「……ん?」
    「俺が好きなのがお前だって知ったら、それもやっぱり出て行くじゃん?」
    「…………んん?」
    「三択で全部出て行くじゃん!!」
    「………………んんん!?」
    「何のためにローソクに願い事してると思ってんだよー!
     毎年毎年、ドラ公とジョンと来年も過ごせますようにって願ってるのに!!」
    「……ロナルド君、タイム」
    「うっうっ、どうぞ」
    「あのね、ええと。……きみ、私のことが、好きなの?」

     ………………あ。

    「タ、タイム」
     冷静になった、つもり、なんだけど。
     顔がめっちゃ熱い。やべぇ。めちゃくちゃ余計な事を言った!!
     うわーーー!! やらかした! 助けてにーに!
    「私がタイム中なんだが?」
    「え、あ、え、その、あ、俺、なんか言った?」
     バクバクと心臓がなって、血の気が引いていく。
     やばい。やばいやばいやばいやばい!
    「言ったねぇ。それもかなり自爆気味に」
    「き、訊かなかったことには」
    「なると思う?」
    「デスヨネ」

     ど……どうしよう。ドラ公が出て行く……終わった……

     絶望感に打ちひしがれていると、ドラ公がため息をついた。それにびくりと肩が跳ねる。
    「私は、好きでも無い男に、こんなふうに触れることを許可したりしないが?」
     ……へ?
    「ソファーベッドなんて、いつ押し倒されるかわからない場所で、君に身を任せてる時点で察してくれよ。まぁ、君にそんな気はさらさら無いだろうと踏んでのことだったんだけども」
    「へ、へ、え?」
    「ロナルド君がいきなりああいうことを言うから、とうとう潮時かと……諦めないとって思っちゃっただろ」
     言うドラ公の顔も、耳も、赤い。
    「ド、ドラ公さんも。その、俺のこと……す、好き……でいらっしゃいます?」
    「……君がちゃんと言ってくれたら、返してもいい」
     ふいっと視線を逸らしたのは、照れている、から?
     認識した途端にぶわっと熱が上がって。 

     誠心誠意、全力で告げた告白の声は相当でかかったらしく、下で寝ていたヒナイチとジョンが何事かと慌てた様子で出てきて、それから恋人になったことを告げたらお祝いされた。

     どうやら、俺達の気持ちは周囲にバレバレで、とっととくっつけと思われていたようだ。
     今夜も、ふたりが気を遣って俺たちだけにしてくれたとのこと。

     ……恥ずかしいやら嬉しいやら照れるやらで、情緒が急下降して、うっかり気絶したのはちょっとした笑い話になっている。


     それからの誕生日には、もう一つ祝い事が増えた。
     お付き合い記念日らという名目で、ケーキがもう一つ作られる。
     これは俺のためだけの、俺とドラ公の大切なケーキなので、ジョンには悪いと思いつつ完食する。
     というか、ジョンは、
    「思い出は大切だから、ロナルド君の気持ちもよくわかるヌ。それはそれとして、ジョンのときにもお祝いケーキ追加でほしいヌ」
     そうおねだりをして、ジョンへの特別スペシャルリンゴのケーキを作ってもらっていた。



    「あの。初チューの際にはレモン味のケーキとかどうですか?」
    「君は実にバカだなぁ! でも面白いからいいよ! ほら、早くキスして?」
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