変わらないもの「」 シュ
『』 ミ
「…ミスタ、」
『…?』
「どこにも、行かないでね、」
これは、自分の中の大きすぎる嫌な予感を押し潰す為の、自分の不安から逃れるための、自分ためだけの、質問でも提案でもなんでもない独り言だ。
シュウがふと不安になる度に、ミスタ返してくれる言葉が、ミスタが紡ぐ言葉が、シュウの不安をうち流してくれる。
『ははwどしたのシュウ~~ww』
「なんのことだよ」と言わんばかりにシュウの背中を配慮の一欠片もなくぶっ叩いてくるミスタに、今日もミスタがいる、とやっと息ができる感覚になる。
わかっている。思い込みなことも。
でも、でも。
表から見ると明るくてぶっ飛んでて、下ネタ好きで、ひとつも悩みなんてものがないように見える彼女は。
同じメンバーからして見ると、どこか儚く見えてしまう。
波に飲まれて消えてしまいそうな、ふと、気付いたら居なくなってしまいそうな、そんな空気を持っていた。
『…シュウ、?』
「……ん、あ、ごめん、…」
ミスタの声でふと我に返ると、心配そうにこちらを覗き込む綺麗な目がある。
夕焼けと海の景色ををそのまま切り取ってはめ込んだみたいな、ガラス細工みたいに綺麗な目。
『…え、俺の顔なんかついてる?』
そうやってぺちぺちと自分の顔を確かめるミスタに、精一杯普通を装って「そんなことないよ、」とはぐらかす。
『…うん…え結局なんだったの怖い』
『んはは…なんでもないw』
普段から思っている事だったけど、昨日興味本位で調べた誕生花も原因のひとつだと思う。
1月20日の誕生花はキンセンカ。
花言葉は、別れの悲しみ。
形あるものはいつか全て消える、なんてことは呪術師として人よりも理解してきたつもりだった。
『…しゅう、…』
何かを察したのか手を広げてくる彼女と、いつか別れる日が来る。
死別ならまだしも、ミスタのことだから、ふとした時に消えていくのかもしれない。
花言葉を見た時、嫌なほどすんなりと胸に落ちてきた。納得してしまった。
シュウは呪術師だけど、魔法使いじゃないから、未来のことなんて分からない。
ただの人間に、何ができろう。
『んも…シュウ。』
「……、みすた、…」
いつまで経っても俯いて暗い表情を浮かべるシュウに、痺れを切らしたミスタが抱きついてくる。
我に返ると共に、シュウには暖かすぎるぐらいの体温がじんわり滲んで伝わってきた。
安心した、嫌だった。
大事な人でもいつかは別れる。だから人生は面白い、そう思っていた。
「…みすた、…みすた………」
『うん…なあに、シュウ。』
でも、ミスタと別れるのが怖い。
ミスタの居ない世界が怖い。
自分の中の太陽が、星が、月が、光が、天使が、そして愛しい人が。
いない世界が、情けないほど怖いのだ。
「…ミスタ、…、ッ…」
『俺はここにいるよ。シュウ、』
普段は空気が読めないだとか、うるさいだとか、下ネタ野郎だとか、酷い言われようの彼女なのにね。
なんでこういう時だけ、心を全部、全部分かってくれているような感覚に落としてくれるのか。
「……僕を、置いていかないで、」
『おいてく訳ないでしょ』
「ここにいて、」
『ん。離れないよ。』
「……ちゅ」
『…んん…w』
何を言っても、何をしても、1番欲しかった言葉をくれる。
きっとまた僕は不安になると思うけど、
それはその時、考えればいい。
今は今を、めいいっぱい。
『その時考えればいいんだから。』
「…うん。」
🦁『…POOOOOOOOOOOOG』
🖋『ばッ…ルカぁ!!!!!!』
👹『……はぁぁぁぁぁ……(クソデカため息)』
『え、え、なんでみんな居んの?!』
「…いつから見てたの…//」
壁から一部始終、全部覗いていたメンバーでした。
(尚感動して叫んでしまったルカは怒られました)