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    g_arowana2

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    「俺は医者だ」をローさんの中心に据えてなんか書いてみようとして断念したもの。
    「自分の決めたことを理不尽なまでに実践する人間」って切り口から、ローさんと黒足さんの組み合わせに挑戦しようとしていた、今となってはレアな代物です。黒足さん視点で一人称。

     蝉の声が耳に突き刺さるような夏だった。
     細長い敷地に無理やり収まった、テーブル二つとカウンターで一杯の店が、念願叶って手に入れたおれの城だ。頭の天辺が陽に焦げるのも構わず浮かれて店構えを眺めていたおれは、ふと気配を感じて坂上を仰ぐ。
     真上の太陽に影の縮こまった住宅地。長身の人影がポツンと一つ、幽鬼じみて黒かった。白んだ世界でそこだけぽっかり昏い男が、陽炎の立つ坂を下りてくるところだった。
     足が店前で止まる。男はメニューの黒板が不在のイーゼルに目をやり、それから、おれへと視線を移す。

     カミサマがどんだけ気合いれてノミ振るったんだか、と呆れてしまうような彫刻的な面立ちで、まぁ野郎の顔面が整っていようがひしゃげていようがどうでもいいのだが、彫りの深さに目元が翳りを帯びていた。レディが浮足立ちそうな面だなこの野郎、と思わなくもないのだが、いかんせんびっくりするほどダウナーな面相のせいで隈にしか見えない。
     ようするに、実に不健康な雰囲気の男だった。もっともおれだって、すれ違う辛気臭い人間を一々気に留めて回るほど暇じゃない。だから説明を求められると心底困る。これは方々から怒られまくってきたおれの持病だ。
     うっかり思ってしまったのだ。あれ、こいつ、なんか食わせてやらなくて大丈夫か? と。

     今、自分のために丹精込めて作られた食い物をちゃんと腹にいれて人心地つけないと、抱えたもんが後を引く。そういう陥穽ってやつが人間にゃあるもんだ、というのがおれの持論で、つまり言うまでもなくお節介だ。
     その持病の結果として色々と割を食っており、ウソップあたりは心配してくるし、マリモはだいたい(学習しないおれの方に)キレてくる。
     ともあれ、思ってしまった以上、おれの言うことは決まっていた。
    「リストランテ・オールブルー。開店キャンペーン中なんですが、ランチいかがっすかね? お客様」
     余談だが、開店予定日は翌日だった。

       ◇

    「……価格設定、いくらなんでも無茶だろ。続かないなら意味がねぇ」
     黙々と、ただし見た目に反して気持ちのいい食いっぷりで(お前最後に食事したのいつよ、と聞きたくなるような食いっぷりで)皿を空けたそいつは、支払い時に眉間のシワを深くして告げてきた。巨大な世話だこちとらプロだぞ、と思うより先に、意外さが勝ったのを覚えている。
     刺々しい態度さえ差っ引けば、それは、この店の先行きを心配する実に真っ当な忠告だったのだ。

     そんな当店一人目のお客様にして常連様の名前は、トラファルガー・ローという。毎度の如くラストオーダーすれすれのご来店、注文のついでに人の利き腕を掴んできやがった野郎の名前だ。問答無用で袖をめくらせ、水疱の浮いた火傷の赤を親の仇のように睨んでいる。
     沈黙に音を上げて、おれは自由な方の手をひらりと上げた。
    「えーっと……なんで分かっ」
    「すぐに冷やせばこんなザマにはなってねぇ。何していやがった」
    「騒ぎにしたくなかったんだって……」
     昼間ヘルプに入った厨房で新人の女の子が盛大に油を跳ねさせた。ので、当然庇った。
     真っ青になった彼女を宥めるのに「全然平気」で押し通した結果なので不可抗力だ。そんで、火傷一つでうちの店休むわけにはいかねぇだろ……という事情説明は途中から尻すぼみになる。お前、その顔していいのは惨劇途中で邪魔が入った殺人鬼だけだろうよ。
     元々クソ痛ぇのに火の熱に近づくと参るな、とは思っていた。ただ、ジジィに拾われる前の育ちのせいでおれは痛みにそこそこ強い。神聖なキッチンに立っている間なら多少のことは無視できる。
     わざわざ詰問されるほど動きがもたついていたとは、思えないんだが。
    「ただでもパニクってるレディだぞ。責めたら出来ることも出来なくなんだろうが」
    「……案外甘ぇ世界だな料理人ってのは」
    「あー、人による。おれぁクソジジィに全部蹴りで叩き込まれた」
    「それはそれでどうなんだ……」
     オーナーと客の間で交わされるにはあんまりな遣り取りだが、ガラの悪い同士が連日顔を突き合わせていれば落ち着くところはこんなものだ。盛大な舌打ちに降参して救急箱を探していると、追加でサランラップを要求された。
     首をひねりつつ手渡すと、細く流した冷水で傷をそっと洗われる。一瞬びくついた腕に、痛覚があるなら大丈夫だろ、と呟いたヤツは、腕から丁寧に水気をとって、ワセリンを薄く塗ったラップで傷をぴっちり覆った。
     燃えるようだった腕がすっと楽になったことに、おれは狐につままれた心地で瞬いた。
    「表皮の再生に5日ってとこだ。範囲が広いから保護材はラップでいいが、自分でも巻けるようにネット包帯買ってこい。……明日も来られたらおれが診る」
    「……医者みてーだなーお前……」
     ラップの上から器用に包帯を巻いてくれた指にアホっぽい感想を漏らすと、ローはけったいな表情を浮かべた。
     こいつはよく見ると案外動揺を面に出しているのだが、驚いたときも感銘をうけたときも呆れたときも大体顔をしかめている、というバリエーションのなさのせいで、よく見てもやっぱり分かりづらい。
    「みたいも何も、おれは医者だが」
    「え」

    -------------------------------------------

    ・絵に描いたようなワーカホリック医だが、ほんのりと人間が好きでなく、かといって金の亡者でもなく、出所の不明な情熱で医業に対してすこぶる真摯な謎人間ローさん

    ・あるとき、買い出しのサンジの目線の先で交通事故。周りが遠巻きにスマホ構える中、鬼気迫る勢いで人かきわけてすっ飛んでった人相の悪いお医者さん

    ・慌てておっかけて、指示通りAEDとってきたり周り巻き込んだり小器用にお役立ちなコックさん。搬送先まで付きそうお医者さんをお見送り

    ・手を尽くしたけど結局お亡くなりになる患者さん

    ・で、後日何故か親族に訴えられるロさん。唖然とするサンジ。当人はなんか平然としてる。

    「欲の皮が突っ張ってんのも性質が悪ぃが、不幸の原因探して認知歪んじまった方が泥沼だな。珍しい話じゃない。これがあるから今日日、自前の手術室持ってる開業医なんて絶滅危惧種だぞ。うちにも、もうねぇよ」

    ・うち? って首をひねるサンジ。こいつ勤務医だったよな?

    ・話の冒頭でローが下りてきた坂の先に病院があるのを思い出すサンジ。名前は違うし、そもそも外科がないし、頭の中で繋がってなかった。ローさん皮肉げに笑う

    「勤め先としちゃナシだな。言ったろ、『もう』ねぇんだ。腕の振るいようがねぇよ」

    ・ローさんの御実家、医療訴訟で根刮ぎにされた。「ここで手をつくさなきゃ可能性がゼロになる」とリスクをのんで患者をたらい回しにしなかった御両親は心労と過労極まった中、不慮の事故で死亡(ローさんは実質殺されたと思ってる)。医院、人手に渡る。

    ・聞かされたサンジ唖然。お前、それ分かっててすっ飛んでったの?

    ・つまらないことを聞かれた顔のロさん。淡々と当たり前のように

    「おれは医者だ」

    ・いや、そりゃねぇだろ

    ・そりゃねぇだろってなるサンジ

    ・感情が振り切れると涙腺壊れる性質、ボッタボタと涙が溢れる。怒ってるとか哀しんでるとかまぁそれ全部なのだが、飽和しちゃってるので見た目は「呆然」

    ・大の男のボタ泣き顔にドン引くかと思いきや、ここで初めて素の慌て顔が出るロさん(うっかり滲む人の良さ)

    ・最後に「そうか」とぽつんと呟くロさん

    「何かをなくしたときってのは、そうするもんだったか。……忘れていた」


    ……で、何が起こるかと言えば特に何も起こらず、ただ、レストランがランチやめてバータイム始めます。
    深夜になるとワーカホリック外科医が現れて米ばっか食って帰っていく。

    人となりの概枠としては、人間性というものに常に最悪を想定している。希望的観測では行動しない、という意味での現実主義で悲観主義。原作よりも「皮肉げな」表情が目立つが、よくよく観察すると言動には嫌味がない。
    また、人間の善性を決して笑わない。

    当人は「リスクをよくよく承知の上で(自分のことがどうでもいいのではなく)自分の決めた絶対の優先順位に従って」救助に向かうのだが、
    そこで「眼の前に傷ついた人間がいる」以外のことが全部頭から吹っ飛んで飛び出してしまうような人間のことを本当は好ましいと思っている(コラさんに育てられているため)。ただし口にも態度にも全く出さない。

    以上を踏まえてロさんに口説かれた(?)ペンさんが「あんたはイイヤツが好きでしょう」っていうのに
    「おれにこれ以上苦労しろってのか」ってロさんが真顔で返し
    「それもそうだな……?」って首をかしげてる間にズルズルと持ち帰られるペンさんが書きたかったんですよね……?(ここだけ抽出するとだいぶ謎なのにいま気づいた)

    あえてその美観から外れた人間にハマるロさんとか、善人にはなれないし趣味でもないけど「ローという人物が人間の善性を好しとすること」の稀有を理解して愛惜を持つペンさんとかイイよねっていう。
    まぁこの話を書かなくてもエッセンスはどっかにでてくる。
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