閑話休題 月島が鯉登の部屋に入ると、鯉登は眉間に深い皺を刻んでいた。
「何かお困りですか」
「ああ、官能小説を読んで脳内で月島に置き換えているんだが」
「……」
「……? 官能小説を読んで脳内で月島に置き換えているんだが」
「いえ、はい、聞き取れてますよ、絶句してしまっただけで」
「すまんな、お前にしか相談できなくて」
「そうですね」
---とりあえず、まぁ、話を聞きましょう---
鯉登はしけた顔でパラパラと冊子を捲っている。本人いわく、野暮な友人将校が一方的に譲ってきたらしい。ソイツは旗手になるとかで、納得のいかないような、いくような。
「それでなんだ、まぁこれに限らず世に出回っている官能小説というのは圧倒的に男女の営みだろう? 脳内で月島に置き換えようにもなぁ、滑らかで柔い肌だの、濡れたカラスの色した髪だの、丸いくるぶしだの……違うな、って」
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