Famous Last Word『――――――。』
眩い光に溶けるように佇む背中。肩越しに首だけ振り返った誰かが何かを言っている。
耳を欹てても一音も拾えずに、ああきっと大事な事だったなずなのにと焦燥感が押し寄せる。
逆光で顔が見えない。それでも、彼は微笑んでいたとそう思った。
ぶわりと息すらままならぬ程の突風が、砂を巻いて吹き抜けた。
周りの群衆がわぁとか、きゃあとか短い悲鳴を上げて立ち止まる。
それも刹那の事で、人の流れは直ぐと日常の営みに戻っていく。
日本一有名なスクランブル交差点を行き交う雑踏の間を縫う様に歩く。
何かに追われるように脇目も振らずにあくせくと足早に人々は過ぎ去っていく。
通り過ぎる人々の顔を見るとはなしに確認しながら男は違う違うと胸の内で呟いた。
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