嫉妬「…」
ヴンダーの隔離室。あたしは遠い目をしながら昔あった事をふと思い出していた。
あの頃はミサトと恋仲になれたことが嬉しくてミサトを取られたくなくてミサトよりも独占欲も嫉妬率が高かった。
今はもう嫉妬といってもそんなにするわけではない。ミサトも前とは違い、艦長という立場だ。尊敬されたりすることも恋をされることもあるだろう。それくらいは大目に見ないと埒が明かない。まあでもミサトの方が独占欲は高いが。
あの頃はまだまだ子供だったというのもあるが、あれはアレでいい思い出だ。翌日マヤにナイス!と褒められたのは意外だったけど。
マヤ、潔癖症なのにね。
「ふぁ…」
眠たげに欠伸をひとつしたあとあたしは暇つぶしにヴンダーを散歩しようと腰を上げる。さすがにこんな狭いところで一日中いるのは暇すぎる。なんとなくでいいからとりあえず歩こう。
隔離室を出てあたしはぷらぷらヴンダーの中を散歩する。幸いにもあまりクルーの姿は見かけずこの時間帯は皆仕事中なんだなと思いながらあたしは歩いていた。みんな忙しいことで…
しばらく歩いていると向こうから嫌なヤツの鼻歌が聞こえまさかと思いながら歩いてみると正面からコネメガネが歩いてくるのが見えた。
「げっ…」
やばいと思いUターンした時には遅く、コネメガネはあたしを見つけると姫〜!と言いながら走ってあたしに抱きついた。
「姫〜!こんなところで会うなんて奇遇だねぇ〜。お散歩?」
「たまたま、暇だからそうしてただけよ」
「そうにゃんだ〜。あっしもお供していい?」
「なんでよ!別にいいわよ!」
「え〜、そんなこと言わずさぁ。ねぇ?」
「だからなんであたしがあんたなんかと!」
これだからコネメガネはいやだ。嫌いでは無いけどこういう猫みたいに甘えてくるのはどうしても好きになれない。なんとかして引き離そうとしてもコネメガネは意地でもあたしから離れようとしない。
「姫〜」
「しつこい!ウザイ!いい加減離れてよ!」
「やだ〜!」
「っ…めんどくさい猫ね!」
2人で変なとっつきあいをしていると突然後ろに体を引っ張られコネメガネから引き離された。
「きゃっ!」
ぽふっとなにかに受け止められて後ろをむくとそこにはあたしを抱き寄せながらコネメガネを見据えるミサトがそこにいた。
「ありゃ、ミサト」
「…向こうまで何かが聞こえてくると思ってたらマリ、貴方の仕業だったのね」
「あはは〜、ごめんごめん姫と散歩したくて…」
「元気なのはいいけれどあまりアスカに近づかないで貰えると嬉しいわ」
「にゃんで?」
「アスカは「私の」だから」
平然と言い返すミサトにあたしは顔が真っ赤になり早くこの場から逃げ出したくなった。コネメガネはニヤッと笑うといたずらっぽい口調でミサトに話しかける。
「それなら〜2人が付き合ってるっていう証拠くらい見せて欲しいにゃ〜。2人ばっかり隠れてイチャイチャするなんてずるいぞ?」
「ばっ…」
なに火に油を注ぐようなことしてんのよ!と言うのを前にミサトは挑発的に笑いかけるとコネメガネに向かって「ええ、そのつもりよ」と言いながらサングラスを外す。
そして顎を上げられあたしがやめろという前にミサトはあたしにキスをしてしまった。
「!?!」
「ほほぉー…」
恥ずかしさですぐにでも離れたかったがミサトが後ろに手を添えているから逃げられない。腰をゆっくり撫でられると力が抜けてミサトのいいようになる。ミサトは熱が増したのかリップ音をたてながら見ろと言わんばかりに舌を口の中に差し入れながらあたしを貪るだけ貪った。
壁にあたしを押し付け呼吸困難になるぐらいに唇を押し付けてくる。そのうち誰かのかも分からない唾液が口の両端が流れてきてジャージに垂れ落ちる。
「ん…んんっ…」
「…ご馳走様。アスカ」
完全にあたしが蕩けきったのを確認するとミサトはキスをやめて銀糸を飲み込んだあとあたしをお姫様抱っこしながらコネメガネの元を去った。
「アスカ」
「…うぁ…」
ミサトに運ばれ、着いた先は艦長室でベッドに寝かせられるとミサトはあたしの頬を撫でながら不敵に微笑む。パンチ一発かましたいのに力が出なくてそんな気力も出せない。
ミサトはジャージとプラグスーツを脱がせ首元を見るとキスマークを新たに付けるのか古く消えかかっている跡に狙いをつけていた。
「また、跡をつけないとダメね。マリのことだからまたアスカにちょっかい出されたら殺してしまいそう」
「へでもないこといわないでよ…」
「それにしても、キスくらいでダメになるなんてアスカもまだまだね」
「…やりすぎ……なのよ…バカ…」
「でも、マリには効果てきめんだったでしょう?」
「んなわけ…ないでしょ……あれくらいで…諦めるわけ…ないっての…」
ぶっきらぼうにミサトから目を逸らし呟くとミサトはあたしの上に覆いかぶさりジャージの上からやわく胸を触ってきた。
「…もし貴方が足りないなら、ここでマリに見せてつけてもいいのよ?」
「っ……」
あたしは嫉妬オーラ全開のミサトに何も言いきれず顔を赤くしながらまた目をそらす。
こうやってあたしを自分のものにするからミサトはずるい。
「…バカ……」
「…」
その言葉にミサトは何も言わずただ手を握りながらそっとあたしの頬にキスを落とすのだった。
これだからミサトはどうしても嫌いになれない。