ーカシャン。
1人で砂浜を歩いていると後ろからカメラのシャッターの音がした。
振り向くとミサトがカメラを持ってあたしの姿を撮ろうとしている。ミサトがカメラを持ってくるなんて珍しい。
「何撮ったの?」
ミサトが何を撮ったのか気になってカメラを覗いてみるとそこにはあたしの姿と海の景色がそこに写っていた。
「え、あたし?」
てっきり景色だけ撮っていると思ってたのにと不思議がっているとミサトはまたカシャンとあたしを撮った。
「なんで、あたしを撮るの?」
そう聞くとミサトはちょっとだけ笑って
「形にしておきたいの。アスカを忘れないように」
とだけ言って手を振りながらあたしにカメラを向けてきた。
その言葉がなんなのかはあたしにはわからなかったけど、あたしは写真になるんだから思い切り可愛い顔をしてミサトに撮られることにした。ミサトは柔らかく笑いながらあたしの姿を撮ってくれて、カメラのフォルダはあたしだけになっていた。
撮られるのはいいけど、あたし一人なのはなんだか寂しい。
そう思ったあたしはミサトからカメラを取ってレンズをミサトに向ける。
「アスカ?」
「写真撮るならあんたも写った方がいいんじゃないの?互いを忘れないように」
ピースして笑ってとミサトに促すとミサトは仕方なさそうな笑みを浮かべながらピースをしてくれた。ちゃんとミサトの姿写真に収めた後、互いの姿を撮った写真はあたしとミサトの部屋に置いてある。
思い出は1つでもあれば満足だけど、形あるものがあればきっと、恋人と過ごした楽しかった思い出を思い出せるはずよね。
どっちが死んでもきっと。