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    キユ(空気な草)

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    POIPOI 17

    お題【居酒屋】【独占欲】

    モブが登場してそれなりにキャラと会話していますのでご注意ください。

    #腐向け
    Rot
    #P飯

    全てオレのもの 町外れに存在する小さな居酒屋に入ると店内は薄暗く、閑散としていた。一人で静かに過ごすには丁度良い。仕事帰りのとある男はさて何処に座ろうかと辺りをぐるりと見渡した。
     部屋の隅、そこに一人の若い男の姿があった。彼も仕事帰りなのだろう。座っている椅子に上着を掛け、ネクタイを緩めたワイシャツ姿を見れば容易に想像が可能だった。
     つまらなそうに窓から外を眺めている様子に何故か酷く惹かれてしまった。一人で来たはずの男はゆっくりと若い男との距離を縮め、すぐ横まで近づいた後に口を開いた。
    「もし良ければご一緒しても良いですか?」
    「……あぁ、良いですよ」
     少しだけ考える素振りを見せたが若い男は了承した。お礼を言い、向かい合った席に座って改めて相手の姿をじっくりと眺めた。
     漆黒であちこちにはねている髪、黒くて太いフレームの眼鏡の奥には髪と同じく漆黒の瞳。それと正反対のように白い肌。緩んだネクタイと二つ外されたシャツのボタンから除く引き締まった胸元。眺めていただけなのに自然と喉がゴクリと鳴った。
    「もし良ければこれ飲みますか?」
     沈黙を先に破ったのは若い男だった。机に置かれていた今迄飲んでいたであろう酒瓶を指差している。
    「ボクあまり飲んではいけないので、貰ってくれると助かります」
     初対面の相手に遠慮しようとする気配を察知したのか、続けて口にした言葉で逃げ道が自然と消えた。元々酒を飲みに来たのだ。男はありがたく貰い一口飲み込みやけに乾いていた喉に潤いを与えていく。
    「仕事帰りですか?こんな遅い時間までお疲れ様です」
    「はい、忙しい時期でして……なかなか大変です」
    「そうなんですか。……ボクも仕事帰りなんですよ」
     持っていたグラスの中身を左右に動かし中身がちゃぷちゃぷと音を立てている。そんな様子をじっと見ながら若い男は言葉を続けていく。
    「仕事先で嫌な人がいまして。いつもは我慢するんですけど、今日は溜めていたむかむかが溢れてしまって。こんな状態では家にもあの人の処にも帰れないのでここで憂さ晴らしです。まぁ、晴らせてないんですけど」
     グラスの中身をこくりと一口飲んだ。唇に付着した水滴がぷっくりとしたそれに艶を与えて化粧を施したようだ。そんな姿を見ていると先程飲んで潤ったはずの喉が再び乾いていく感覚に襲われる。
    「これじゃあ、今日は帰れないかな……ボク、とても困りました」
     わざとらしく、若い男はチラリと男に視線を向けた。期待の眼差し。何を期待しているのだろうか。その答えは相手の姿を見ればすぐに考えついた。明日は休日。今日は長い夜を過ごすことが出来る。
    「もし、良ければ自分とこのまま……」
     バン!と勢いのある音と共に二人の間に緑色の柱が建った。あまりの勢いに二人の髪の毛がふわりと揺れる。
    「こいつが迷惑かけた」
     柱だと思ったそれは誰かの腕だった。初めて見る肌の色だ。不思議な模様が刻まれた緑の腕。ゆっくりと腕の持ち主へと視線を向けるとそこには自分を遥かに超える大きな身体の持ち主がいた。
    「帰るぞ」
    「……はーい、すみませんボク帰りますね」
     男の返事を待つことなく、二人は店から消えていく。一人になった男の机には酒瓶一本の代金としては有り余る程の金額が置かれていた。

            ※※※

    「んっ……はふ……ぁ……っ」
     薄暗い路地裏に何かが交わる音と艶のある声が響いている。
    「……苦いな」
    「お酒、飲みました……から。んっ……ピッコロさんの涎、おいし……」
     自分の顎を伝っている唾液を指で掬って舐め取っていく。苦い酒とは違って甘く感じてしまう。一適も取りこぼさぬように綺麗に指についたそれを吸っていった。
    「何か言うことはないのか」
    「何かって何がですか?」
    「悟飯、何か、言うことが、あるだろう」
    「……ごめんなさい」
     店で悟飯はわざと男を誘うような動作をしていた。あのままいけば男がどんな反応をするのか、理解しながら行動をしていたのだ。そしてそれは店の外で様子を探っていたピッコロにも十分理解できた。だから男が最後まで口にする前に、怒りで我を忘れて本来やるべきことを見失う前に二人の間に入って邪魔をしたのだ。
    「仕事先で何かあったのか」
     聞かなくてもわかることだった。それでもあえて質問をした。悟飯自らの口で言わせるために。
    「言いたくないって選択肢許されますか?」
    「逆に聞くが許されるとでも?」
     ピッコロの方を見ようとしない顔を顎を掴んで強制的に向けさせる。最後の悪足掻きといわんばかりに視線は明後日の方向を向いている。
    「こっちを見ろ、悟飯」
    「やです、ボク今、凄く嫌な奴になってます。胸の中どろどろで、むかむかで、ピッコロさんに八つ当たりしちゃう」
     だから帰らなかったのに。ボソリと口から出た言葉は耳の良いピッコロにはしっかり聞こえた。その言葉に大きくわざとらしい舌打ちをして、顔をさらに近づけていく。
    「お前の全てはオレのものだ。たとえどろどろとした汚い負の感情であろうと一滴たりとも他の奴には渡さん。八つ当たり?上等だ。好きなだけ呪詛の言葉でも吐くが良い。全てオレが食ってやる」
     悟飯の目の前には大きく開いた口が見える。言葉通り全てを食らおうとしているその姿に身体中の血が騒ぎ出す。細胞一つ一つが食べてと叫んでいる。
     
     口から言葉で出す時間すら惜しい。悟飯は飛び付くように大きな口に自身の口を密着させた。

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