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    いきた

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    いきた

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    きら学日常編。なこれくんとくまいくんです。
    オチはない

    朝から目覚めが悪いなとは思っていた。昨日は寝る前に明日の会議のデータを用意したり、小テストの勉強をして寝て、今日の朝もいつも通りの時間に起きて家族と自分の弁当を用意して学校に来た。……まではいいものの。
    「眠い」
    眠い。数学の授業中にうとうととするのはいつものことだが、今日はより酷かった。
    せめて休み時間の合間に寝ておこう、と机に突っ伏してみるも、
    「きち」
    「おーーい」
    寝ようとして5分も経たないうちに起こされた。
    「なに?どしたん」
    寝起き特有のちょっと愛想の悪い声で返事をした。
    「次移動ちゃうの」
    教科書を抱えた奈是が尋ねてくる。俺たちは出席番号が離れているから、移動教室の時はほぼ別行動だ。英語の時間の俺の席は奈是が使っているらしい。
    「そうやけど、ちょっと寝ときたくて。あそこなら走ったらギリギリでもいける」
    「確かにあんま寝てなさそうな顔しとんな。何時に寝たん」
    「12時半とか?いつもと同じくらいやったよ」
    「俺昨日9時に寝たわ。きちももうちょい寝えな」
    健康的すぎるやろ!家帰ったら即寝てるレベルやん……と突っ込む気力も時間もなかった。諦めて移動先の教室に行くことにしたところで、突然呼び止められる。
    「きち」
    「何」
    「4限終わったら作法室でお昼食べようや」
    「昼は……ほら、呼び出しあるから」
    この学校は生徒会遣いが荒すぎると思う。お昼ご飯中に放送で呼び出され、放課後に雑用を頼まれて……今日も昼休みに打ち合わせがあるから、お昼は余裕がない。
    「作法室のが職員室近いやろ。鍵開けとくから」
    「まあええけど……あ!お茶会の司会はやらへんからな」
    「やらんでええよ。ほら、チャイム鳴るで」
    「うわ!!やばい、走ったら間に合うか……」
    結局、チャイムが鳴るのと同時に教室に滑り込んだ。階段や廊下を疾走するのもまあ、いつものことである。
    ―――――――――――――――――――――――――
    おかげさまで眠気もどこかへ吹っ飛んだかと思いきや、授業の中盤あたりからきつくなってきた。最後の10分辺りなんかはもう記憶がない。ノートの隅に真面目に書いたつもりのミミズ文字が踊っているのが何よりの証拠だ。
    とりあえず、4限も終わったことだし奈是のところへ向かおうか。
    階段を降り、無駄に長い廊下を歩いて数秒。ほとんどの生徒は存在にすら気づいていないであろう、ちょっと立て付けの悪い引き戸の先に作法室はある。
    「わっ!」
    「お前それ何回やんねん」
    俺をからかうのは彼の昔からの趣味だ。奈是のことを ”ミステリアスイケメン” なんて呼んでいる女の子たちには想像もつかないだろう。
    「今でも10回に1回くらい引っかかるやん?その1回がおもろいんやんか」
    「もうちょい新しいネタ用意してから来てや。で、なんでここで食べようって言うてたん?」
    こいつが何を考えてるのかわからないのは今に始まったことではない。今日はなんだろう?言っておいてくれればお茶菓子のひとつでも用意してきたのに。
    「寝ていいよ」
    「なに?」
    「寝て」
    よくわからない。寝る?なんで?ガチ寝していいやつ?なんで急に。
    「朝から眠そうにしとったやん。作法室なら畳で寝放題やな~と思って」
    彼なりの思いやりだったらしい。確かに、作法室は広いし、畳でごろごろしながら寝たら最高だろう。
    「いや、でも……」
    今寝たら確実に昼休み丸々、なんなら放課後まで寝られる自信がある。そうしたらこの後の打ち合わせに間に合わない。
    「起こしたるよ。抹茶の粉でも口に入れたろか」
    「咽せるわ!うーん……ごめんやけどちょっと寝かして……多分15分後くらいに放送かかるから……」
    たしか5限は数学、6限は古典だった気がする。寝ろと言わんばかりの時間割に備えて、寝られるなら今寝ておきたい。
    「ええよ。どうせ俺お弁当食べ終わるまで時間かかるし」
    畳は気持ちよくて、横になった途端眠気が襲ってくる。寝付くまでにあまり時間はかからなかった。
    ――――――――――――――――――――――
    「きち」
    「おーーい」
    時間というのは無常なもので、さっき寝たばかりだと思ってもすぐ起きないといけない時間になる。まあ、さっきよりはすっきりしたかな。欲を言うならもう少し寝たいけど。
    「めっちゃ寝とったな。おはよ」
    「おはよ、ちょっと眠気引いたわ。ありがとう」
    奈是はまだ弁当を食べている途中だった。俺が寝た頃から半分くらいしか減ってない気がする。
    「ちょうどお湯沸かしててん。抹茶飲んでく?」
    彼は弁当を机の隅において、茶筅と茶碗を手に取った。
    「はは、起き抜けに抹茶?お茶菓子持ってくればよかったな」
    せっかくだしお抹茶をいただいていくことにした。抹茶は基本、ぬるめのお湯で点てるので猫舌にも優しい。
    奈是は粉を匙で掬って、慣れた手付きで抹茶を点てていく。こうしてみるとやはり様になる。
    「はい。どうぞ」
    「お点前頂戴いたします」
    茶碗を受け取り、内側に回してお茶を飲もうとした瞬間――
    『生徒の呼び出しをします。生徒会のみなさんは12時45分に職員室前に集合してください』
    呼び出しの放送だ。
    普段よりも少し早い時間に集合しなければならないらしい。その割に連絡が遅かった気がするけど……
    この学校には呼び出しをする時に最悪のタイミングを狙わないといけない校則でもあるんだろうか。
    「あー……急いで飲んでけば?」
    あの奈是ですら少し焦ったような苦笑いを浮かべている。
    「そうするか……落ち着いて飲みたかったな……」
    残念だが仕方ない。いつものことだ。
    そう思いながら茶碗に触れる。
    「…………」
    「あっっっつ!!!!!」
    沸かしたてのお湯で点てたお茶はびっくりするくらい熱くて、結局俺は舌をしまい忘れた猫みたいな状態で会議に出る羽目になりました。労災下りひんかな。

    オチはありません。ご清読ありがとうございました。
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