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    突然来る🦢にパニパニパニックな🐡ちゃんの話
    ※🦢🐡

    【俺の心臓がそこにある】いつもなら気にならない人混みのざわつきが、今日はやけに鵺路の気に触る。

    早く来たところで電車の時間は決まっているのに、言われた時間の30分近く前には着いてしまった。元々時間にルーズな方では無いが、ここまで前もって行動する方でも無い。手持ち無沙汰にどこかへ寄ろうかとも思ったが、結局時計ばかりが気になって改札が見える柱の縁に陣取った。

    駅構内に着いてから何度も目が行き来する、改札と、時刻表の電光掲示板、それからスマホ。自分と視線の間を人々が足早に過ぎ去っていく。視界の端のその動きさえ、今日は妙に自分の気をはやらせる。

    待ち人は、到着したらまず連絡を入れてくるタイプだろうか。それともまずは改札を出てくるだろうか。一体、どんな顔で? どんな仕草で? どんな気持ちで?
    改めて、自分が何も分かっていないのだと気付く。相手のことも、自分の置かれている状況も。

    着地しない心がそわそわと落ち着かず、落ち着かなさのまま視線を行き来させる自分が気持ち悪くて、殊更落ち着かない気持ちにさせる。もたれかかった柱につける背中さえ波打っているように落ち着かず、思わず舌打ちが零れた。

    (情けな)

    鵺路は自分を落ち着かせるために細い息をできる限り長く吐いて、目を閉じた。





    [明日の午後、時間貰えませんか]

    唐突に送られてきたメッセージに戸惑ったのは、昨日の昼の話。
    昼休み、校庭の裏の方、うるさい奴らに絡まれることもないひっそりとした木陰のベンチ。鵺路にとっては穴場のそこで、母親が忙しい中でも持たせてくれる弁当を丁度食べ終わった頃だった。
    ごちそうさん、と口の中で言って、食べ終わった弁当箱を包みに戻しながら返信について考えた。

    送り主は羽鶴。
    所謂「被害者の会」なんて、不名誉で的確な名前の関わりを持った自分たち。初めて出会ってから半年強、一年にはまだ足らず。
    連絡先を交換してからは基本的に短い文字のやりとりと、たまにする通話。文字や言葉じゃよく伝わらんと繋げる、もっとたまにのビデオ通話。それからもっともっとたまに偶然に奇跡的にジム同士の合同練習なんてことがあって顔を合わせられた2度ほど。
    そんな今までのやり取りの中で相手が見せた人間性や振る舞いは、鵺路の少ない語彙の中で言えば『綺麗』に当てはまると思う。今まであまり関わってきていないタイプの人間だ。それでも羽鶴と関わることが自分の負担にならないのは、たぶん、おそらく、芯が自分と同じだから。至る過程は別でも、同じ競技を真剣にやっているやつは、きっとたぶん、皆同じ方向を向いている。強くなりたい。だからこそ、タイプが違うとは思ってもお互いに妙な気遣いはないし、そりゃ当たり前にある程度話も合う。違うからこそ見えている視点も面白い。実際に会うことは少ないが、ツレと言っても大きく外れてはいないだろうと考えている。

    ただそうやってやり取りをしてきた中でも、羽鶴が鵺路にわざわざ『明日』と、『今』以外の時間を求められたのは初めてのことで。

    [なんやあらたまって]

    通話したいという時でも[ちょっと今いい?]なんて送られてきたメッセージに既読を付けただけで着信が鳴るような、見た目に反した強引さで関わってくるというのに。

    [忙しい?]

    なんの用や、今じゃだめなんか。そう思いながらも、ひとまず了解の言葉だけを返すことにした。

    [いや、ええけど]

    すぐに既読がつくも、その後に思った速度で返信がない。じっと画面を見つめ、手持ちのペットボトルに口をつけた。
    年中冷たい飲み物でもいいが、そろそろ外で飲むなら温かいものもいいかもしれない。肘までたくり上げた袖を擦る様に吹いた風に季節の変わり様を感じながらそんなことを思っていると、画面が動いた。

    [じゃあ、13時に…]
    と、時間に続く文字には、自分にとって一番近い街にある駅名。予想した何かしらの要件はなく、ただ、それだけ。

    「は?」

    思わず声と共に、ゴトン、と飲みかけのペットボトルが手から落ちた。

    「はぁあ!?」

    なんだこれは、つまり……どういうことか?

    (来る?来るんか?は?)

    混乱する頭の中をぐるぐる回してみても、明日こちらで合同練習があるなど聞いた覚えは無いし、格闘関係のイベントが開催されるという記憶もない。
    地面でだくだくと中身をこぼして行くペットボトルも忘れて眺める画面が、こちらの返信を待たずに新しい言葉を表示する。

    [待ってます]

    戸惑いからか強く身体を打つ鼓動が心臓を口から押し出しそうになって、それを飲み込んだ。

    (なんこれ、柄にもない)

    飲み込んだ心臓は指先へ移って、やけに震える指で[なんなん][どういうことや]と、打ち掛けては消して、結局―――

    [わかった]
    と返信するのが精一杯だった。



    それからはお互い、なにも送らずに今を迎えた。
    嘘だ。
    それからも、その日眠るまで、何度も要件を聞こうとした。わざわざ九州までやってきて、やりたいことがあるのなら先に段どっておいた方がよいこともあるだろうと。話があるなら今すぐ通話でも良いと提案しようともした。でもやはり、文字を、言葉を、打っては消して、言おうとしては止めて。
    ハッキリ聞けない自分が女々しくて嫌だったが、本人が来るとだけ言っているのに何の用だああだこうだと問いただすのも女々しい気がして。他にもなにか聞けない理由があるかもしれないが、とにかくなんだかもう何が正解か分からなくなったので返信について考えるのはやめにした。
    つまり、こちらからはなにも送らなかったのではない、送れなかったのだ。



    浅くなった眠りにぐずぐずと目を覚ました時間はいつもの起床時間より早かった。一旦浮上した意識を覚醒させるために頭を振った。目は開くや開かないや。覚束無い足取りで洗面台まで向かって冷水で顔を洗った。上げた視線の先、まっすぐ見た鏡の中の自分は何とも言えない顔をしていた。
    例えば来ると言ったのが拳心だったら、柊だったら、自分はこんなに戸惑っただろうか。連絡を取り合う頻度で言えばそれらのメンツの方が低いのだから、それはそれで戸惑っただろうが、戸惑いの種類が違うように感じる。だからといって、それがどう言った違いなのかはその時の自分では如何とも言語化し難く。
    初めて言葉を交わしてから、その全ての邂逅はこちらが行く形だった。それさえまあ学生の自分には不相応な金額の旅費を、ありがたくも甘えられたのは奇跡的にジム同士の交流がうまれたからこそ。目的があったからこそ。そう、いつも自分たちの関わりの間にはMMAがあった。
    だからつまり、きっと、今回も、自主練かなにか……そう思いながら動きやすい服装を選んで、でも何となく、前髪は上げなかった。





    ざわざわと人の声が大きくなり、改札の周りに人が増えたことを感じた。手の中でスマホが震える。
    目を開いて確認した、画面の中央で光る通知画面の文字。

    [着きました]

    顔を上げた先、改札を出てきょろきょろしている待ち人が目に入った。それと自分間を女子の塊が、自分と同じものを見ながらこそこそと、けれど耳につく色めきだった声を上げながら通り過ぎた。
    そうしてしみじみと、そういえばあれがイケメンと言われる顔であることを思い出した。いや、完全に忘れていた訳では無い。忘れがちだが分かってはいる。何だったら本人にも何度か「綺麗な顔だな」と言ったことがあるような気がする。照れたような困ったような顔で特に否定も謙遜もしなかったのが面白かった記憶もある。だが、別に顔主体の関わりでは無いし、話すと普通に良い奴で、綺麗な仕草と顔で思いの外砕けたことを言ったりするものだから単純に楽しくて造形のことなど忘れがちになる。だからふとこうして、しみじみと、顔立ちの綺麗さを思い出して、そうして世間の評価を思い知る。
    つくづく、強面の自分とは何かを隔てたところにいる人間だな。顔だけじゃない、生まれも、育ちも。本来なら、自分とは交わらないところにいる人間だ。

    女子の声がやけに澄んで耳に届く。


    (やけなんやっちゅうんや、ザマアミロ)

    誰に言う訳でも無く心の中で吐き捨てて、手を挙げた。
    落ち着かない仕草で辺りを見回す中に、その視線が自分を見つけた。一瞬、驚いた表情を見せたかと思ったら、途端にやわやわと顔を崩して、自分と同じように手を挙げた。
    ちやほやと騒がれ慣れているだろう男が、小綺麗な女たちに見向きもせず、こちらに真っ直ぐ向かってくる。
    つられて崩れそうな顔を、奥歯を噛んでこらえた。妙な優越感が苦虫みたいにそこで潰れた。

    「久しぶり」
    「……おう」

    無駄に綺麗な顔が、その顔に似合う甘い響きの声を聞かすので。いや、こいつこんなだったか? 何だこの空気は。と、むず痒くなる気持ちを隠すために咳払いをひとつ。このまま世間話をするには耳が耐えられないと思ったのですぐに本題に入った。

    「……今日はなん、どげんしたんや」

    このままジムに連れていけばいいのか、トレーニングの前に話したいことがあるならどこか座れる店に入る方がいいのか。いや話なら通話で充分だったはずだ、顔を合わせてまでしたい話とは、いやいやそもそも自分が相談相手になるほどの立場ではないはずだ、相談するならもっとこの男を知る身近な人間の方が、じゃあ、つまり、えっと、なんだ。
    ここに来て、立たされた状況がノープランだったことを思い出す。今更、改めて。フル回転ように見せかけてただ同じところをグルグルと回る思考では結局何の結論見付けられない。
    やっぱり昨日、率直に聞けばよかったのだ。自分らしく、真っ直ぐ。単純に。それを逃げたから、こんなにも頭の中が落ち着かないのだ。
    だけど本人が何も言わないのに、なんで来るんだなんて聞くのは無粋だろうし、女々しいし、通話するかなんて言ってそれで済んでしまったら、などとぐるぐるがちゃがちゃ逡巡すること、実際はたったの数秒。

    (は?俺、今何考えた?)

    ごちゃごちゃの思考で頭が真っ白になった時だった。目の前の男が、恥ずかしげもなく、甘いままの声で、当たり前のことを言うように言った。

    「会いたくて」

    ……は?

    「練習で会うとやっぱり練習だけだし、そうじゃなくて普通に会いたくて」

    それは普通のツレとして遊びたいということか、それにしては、なぁ、その言い方は合ってるのか?

    「本当はもっと早く来たかったんだけど。こういう時、親の金って違うかなって思って……お金貯めてたら時間かかっちゃった」

    その微笑みは、その視線は、自分に向けられるものとして合っているのか?

    「初めてバイトした」

    照れるところはそこで合っているのか?

    「……バイトなんかしちょらんで練習せれ」
    「はは、言われると思った」

    絞り出した声に返ってきた笑い声の甘さは。

    「練習も頑張ってるから許して」

    自分に許しを乞う意味は。

    「ねぇ、鵺路くんは、俺に会えて嬉しい?」

    お前は俺のなんなんだ。お前、俺を誰かと間違えてないか。こんな人混みで見せていい顔かそれは。あぁ人の目が痛い。今までにない類の痛さが四方八方から突き刺さる。とにかく移動したい。などと思考はのたうち回るが、一向に声が出ない。口を開いたが最後、心臓が飛び出てしまいそうだ。なんだこれは一体。
    心臓が飛び出して行ってしまわないように俯いて、スマホを握ったままの右手の甲で口を塞いだ。今自分がどんな顔をしているのかも周囲の状況も、自分の立場もうよく分からない。なんなんだこれは。誰か助けてくれ。
    限界を迎えようとしたところで空いた左手に柔らかく指が絡んできてもう死んだ。

    「俺は嬉しい」

    距離を詰めるな。やめろ触るな。今、
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    ❤❤❤😭😭💞💞💴💴💴👏👏👏💖💖💖💖💖💖💖
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    Replies from the creator

    kkntntnk

    CAN’T MAKE🔵🔴大人。
    ※NOシリアスだけど会話として死ぬとかどうとか言うてるので不快なときは目に入れないで×
    話の内容も口調もわかんなくなっちゃった🙌 ̖́-
    力尽きてほぼ会話。何で拳心目線なんや。

    なんやかんやあって付き合っててほぼ同棲中。
    表向き🔴>🔵、中身の重さは断然🔵>🔴
    高校時代よりお互いがお互いに何となく歩み寄って理解したり譲ったり受け流したりしている。つもりでいる。
    おさきにどうも話は、たまたまテレビから流れた、好きでも嫌いでもない流行りの曲から。
    どっちが先に死ぬかなんて、そういうどうでもいい話。

    「俺はお前が先に死ぬと思うよ」
    「あぁそう」
    「何でとか聞かないの?」
    「不健康そうだからでしょ」
    「ははっ!そう!」

    「……君にとって僕はいつまでも教室の隅の陰気な子どもなわけだ」
    「んー? あー……だって基本暗いよな実際」
    「はいはい」
    「だけどさあ? やけに明るい時もあるって今は知ってるし、ガキじゃないのも分かってっし、体がどんなもんかも分かってんのに、なあ?」
    「なに?」
    「なんで今でもあん頃のお前が先に頭に浮かぶんだろ」
    「……弱者が好きだからでしょ。君の困った性癖」
    「ちげぇわ!変態はお前だけでジューブン!」
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