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    wonkob

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    wonkob

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    書きたい部分は決まってるけどそれ以外の部分が適当なので、すごくぼんやりした文章になってる…?もうちょっと詰めなきゃいけなさそう😣

    タイトル未定(ロマぐだ♀) 立香はココアをまた一口飲み、ゆっくりと喉を上下させる。マグカップの端を指先で拭った彼女は、太陽を思い起こさせる色の瞳でロマニを捉えた。
    「ドクター、甘いもの好きなんですか?」
    「好きだよ。餡子はとくに。こし餡が好きなんだ。立香ちゃんは?」
    「わたしも好きですよ。白餡がとくに。なんだか特別感があるので」
    「ああ、その感覚はなんとなくわかるよ。普通のこし餡が食べたいと思っていても、目の前に白餡があるとつい食べたくなって二個買ってしまったりするんだよねぇ」
     ロマニの口調は相変わらず軽いものだが、立香に合わせているだけの表面的なものではない。意外に詳しいのだなと、立香は頭の中にあるロマニ・アーキマンのプロフィールに「甘いもの(こし餡)好き」のメモを加えた。
     とくん、とくん。一定のリズムを刻んでいる自分の心臓に、立香は少しだけ意識を向ける。
     ロマニ・アーキマンは不思議なひとだ。はじめて会ったときからよく喋り、緊張感のない印象のおとなで、だからこそ話していると余計な肩の力が抜けていく。マイルームのベッドでひとり横になっていたときにはひどく大きく感じられていた不安も、彼と話しているといつのまにか凪いでいる。
     まだカルデアがこうなる前に、いちばん長く話をできた相手がこのおとなでよかった。立香は無言のまま安堵した。
    「やっぱり怖いよね」
    「え?」
     不意に響いたロマニの口調は穏やかな一方で、どこか自嘲的だった。思いがけない音色に驚いた立香は彼の真意をはかりかね、続きを待つ。
     ロマニは首筋をさすりながら、困ったように眉を下げて立香に笑顔を向けた。
    「医務室に入ってきたとき、少し震えているようだったから。特異点Fから帰ってきたときもそうだった」
     立香はとっさにマグカップを持つ手に視線を落とした。淡い茶色の水面は立香の鼓動に合わせてかすかに揺れているようだったが、震えてはいない。
     わずかに身を硬くした少女を宥めるように、ロマニは柔らかく微笑んだ。
    「恥じることじゃないよ。ワイバーンだけじゃなく、アーサー王や竜の魔女まで相手にしたんだ。誰だって怖いと思う」
    「そう、ですかね……」
    「そうだよ。そんな中で、立香ちゃんもマシュも、よくやってくれている」
     ありがとう、とロマニは続けた。彼のその感謝はきっと本心だと、立香は根拠もなく感じた。誰が見ても戦闘に恐怖しているのにも関わらず、マスターを守るために戦っているマシュへの感謝は、立香にも同じように存在していた。
     けれども立香の中には、一点の黒いシミがある。それは今も、冬木から帰ってきたときも、医者の優しい声には触れられなかった恐怖だ。
     立香は細く息を吸ったあと、しばらく息を止めた。この黒いものを彼に打ち明ける必要は、おそらくない。それでも迷っているのは、おそらく、知ってほしいからだ。はじめて立香を迎えてくれたドクターが「話を聞くよ」ではなく「話をしよう」と言ってくれたから。そう言ってくれたおとなを、立香は信じたかった。
    「わたし、人が死ぬところ、はじめて見たんです」
     ロマニの若草色の瞳がかすかに揺れる。立香はまた細く息を吸った。
    「いえ、祖母のお葬式に立ち会ったことはあるんです。でも……なんていうか、」
     言葉がまだ定まっていない。立香はちらりとロマニの表情をうかがい、彼が戸惑いながらも立香をまっすぐに見ていることをたしかめて、ごくりと唾を飲んだ。
     もちろんアーサー王やジャンヌ・ダルク・オルタをはじめ、サーヴァントと戦うのは怖かった。フィクションの中でしか見たことのないワイバーンも、無慈悲に破壊された街並みも、人を処刑する業火も。どれも怖かった。
     けれど同時に、光り輝くものだって見た。自分を守るために仮初めでも宝具を展開して立ち続けてくれたマシュの背中。救国の旗を掲げて立ち上がったジャンヌの背中。裏切られようと祖国を愛し続けたマリーの笑顔。そんな彼女のために奏でられたアマデウスの音――。あの特異点で出会った、見た、多くの人々が、マシュとともにあの特異点で戦う勇気を立香にもくれた。
     そしてそれはなにも、カルデアに協力してくれたサーヴァントだけではない。カルデアの前に、ジャンヌの前に立ちはだかったサーヴァントたち。あの竜の魔女でさえ、そうだった。彼らには彼らの意志があり、想いがあり、信念があった。それを知ったからこそ、立香の中には彼らに対する恐怖以外のものだって多くあった。
     だから今、立香の中に残っている一点の黒いシミはサーヴァントではない。彼らの存在ではない。
    「ああいう、悪意や、殺意が人の命を奪っていくところなんて、見たことなかった」
     これまでの人生にはなかった「人を殺す」という選択が、当たり前のように存在していた事実だ。
     戦場における他者の命の軽さと、自分の命の重さが、立香にとってなにより怖かった。
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