金魚すくい声を掛けると、白地に金魚の刺繍が施された浴衣を着た少女が振り向き、金魚と同じ鮮やかな赤を靡かせ弾けるような笑顔を向けて来た。
「バルバロス!随分と遅かったな。もしかして屋台、混んでいたか…?」
「そりゃ、祭りだからな。どこもかしこも混んでるわ。そんなことより、俺のいない間変な奴に絡まれたりしなかっただろうな?」
つい先程、買ったリンゴ飴を彼女に手渡しながら問う。
「何度か男性に道を聞かれたが、生憎この辺りの地理には詳しくないからな…丁重にお断りしたよ。」
目の前の少女は何事もなかったかのように手渡されたリンゴ飴をその小さい舌で舐め取る。
ーー丁重にお断りしただぁ?
祭りで道尋ねるって有り得ねえだろ。
十中八九、下心あるやつに決まってる。
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