daybreak / epilogue「あなたが今回したことは、罪には問われません。きっとおまわりさんか弁護士さんから聞いたよね」
面会室。香山がそう言って確認したとき、女性は自身の両手を絡め項垂れていた。布手袋で覆われたそれらを膝の上に置き、目を合わせようとはしない。香山はそっと眉を上げた。さして気にもとめずに続ける。
「もしも具体的な指示を出したりアドバイスしたりすれば犯罪教唆になるけれど。あなたの場合は少し異なる。個性犯罪って裁くのが難しいのよ。物理的なものだけじゃないでしょう?」
「そうですか」
女性が答えた。声色もずいぶんとそっけないものだった。
「幸いにも放火や殺人などの重大犯罪を犯した人はいない。むしろ潜在的なものが明るみに出たことで、そういう暴力的な欲求を抱えていた人たちを専門機関に繋げられるの。つまりね、今後の抑止にも繋げられるんです」
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