ノラアシュ短編まとめ①振り返ることもないだろうから
「⋯⋯話を、したいんです。ノーランド様と、ちゃんと」
アッシュの声は静かに響いた。
夜明け前の薄明かりの中、寝台の端に座る彼の肩は、かすかに震えていた。
だが、返ってきたのは沈黙だった。
ノーランドは背を向けたまま、シャツの袖を通している。無言のまま、いつものように、冷ややかにその場を離れようとしていた。
「⋯⋯聞いてくれないんですね」
アッシュが絞るように呟いた。
「どうして、振り返ってくれないんですか。俺のことなんて、どうでもいいんですか」
ノーランドの背は止まった。だが振り返りはしない。
ただ、わずかに首を傾けただけだった。
「どうでもよければ、抱いたりはしない」
それはひどく冷たい声で、そして、どこか残酷な優しさを帯びていた。
1965