Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    真砂長文倉庫

    @masago5050

    Twitterに収まらないものを入れる場所です。
    お手数ですが、Twitterのプロフをご確認いただけると有り難いです。
    ワートリ関係をのんびり詰めていこうと思います。
    まずはシステムに慣れることから…。
    プロフ画像は最高のコラボより。いつ見ても和む……。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 24

    真砂長文倉庫

    ☆quiet follow

    王子誕生日の半日前に降ってわいたネタです。勢いって大事だね!王子ハピバ!!

    機械音痴でがっつり遅刻しました。「後夜祭」っていい日本語ですね!

    蔵王・王水・イコプリ(別時空)で香水ネタ。多分最初しか間に合わない…。
    あとの二つは一年寝かせよう!

    蔵王:二十歳の誕生日。二人とも一人暮らし。最後の王子のセリフを言わせたいだけ。

    スパイシースイートチョコレート【王子誕2023】「寒いだろう、ちょっと待ってて」
    家主が白い息を吐く。1ⅬDKの三和土に控え目な灯りが落とされる。
    ひとつ頷いて、お邪魔します、と告げてからトープ色の革靴を脱ぐ。
    「お構いなく」
    頷き返した王子がすぐにLDKのエアコンを強にセットした。外よりも寒風吹き荒ぶ部屋の壁際に、蔵内は自分のキャメルカラーのトレンチコートを掛ける。
    洗面所を借りて手を洗っていると、同じくロイヤルブルーのピーコートと濃紺のスヌードを外した王子がやって来た。ほろ苦い粒子が鼻腔を掠める。
    「今日は楽しかったね」
    「そうだな」
    洗面所の鏡を介して繋がった、視線が綻ぶ。


    今日は王子の二十回目の誕生日である。
    同学年男子として一番最後に二十歳になった王子は、漸く酒と煙草が解禁となった。本日の夕食は十ケ月前から「かげうらでの食事会」と決まっていた。
    男子の中で一番最初に二十歳になった北添の誕生日を機に、飲み会を開こうとボーダーのラウンジにて立案したのは犬飼だった。
    「でもゾエさんだけ飲めても楽しくないなぁ…」
    柔和な笑顔で辞退しようとする北添の肩に手をかけて影浦がニヤリと笑う。
    「なら、再来月の俺の誕生日ならいいのか?」
    「それならセーフだな、オレと鋼は」
    北添を挟んだ反対側から穂刈がソフトモヒカンを覗かせる。視線で同意を求められた村上は眉尻を少し下げた。
    「オレはやっぱり荒船達も一緒がいいな…」
    村上の頭をぽんぽんと撫でてから、帽子の奥の双眸を輝かせた荒船がその場にいた九対の瞳に提案した。
    「いっそ王子の誕生日に全員集合すればいいだろ。勿論、解禁された奴は個別に飲むのは問題ない。国近の誕生日が過ぎたら女子も呼ぼうぜ。どうだ?」
    満場一致で可決される。荒船主動となった時点で、会場は「かげうら」であることは確定となった。

    そして入念なシフト調整も済ませた本日「お好み焼きにはビールでしょ!」と断言した犬飼の言により、黄金色のジョッキが豪快な音を立てた。
    王子はビールとレモン酎ハイを一杯ずつ飲んだ。お誕生日様ということで、スペシャルメガミックス焼きを影浦と水上が焼いてくれたのも気分が良かった。普段態度が軟化することが殆どない二人がそれぞれの出来映えで勝負して、僅差で影浦が勝利した。鋭利な歯列を全開にして高笑いする影浦を睨め付けて「たこ焼きやったら負けへんのに…」と大仰に豆絞り柄のハンカチを噛みしめる。蔵内が水上の背を二度、軽く叩いた。一部眠たげな者もいたが皆が頬を上気させ、絶えず笑いに満ちていた。


    洗面所から出た蔵内は、直接ダイニングに戻らず上がり框の傍に置いておいた保冷バッグを手に取った。影浦に頼んで、店の冷蔵庫に保管しておいてもらったものだ。
    先に戻っていた王子が皿とフォークとグラスを用意して待っている。部屋は適温となりエアコンの音も気にならなくなっていた。
    「改めて、誕生日おめでとう」
    微笑を湛えて蔵内が保冷バッグを差し出すと、王子は蕾が綻ぶように笑った。
    「ありがとう。早速食べようか」
    「ああ。でも良かったのか?これがプレゼントで…」
    「勿論だよ。さて、どんな感じなのかな…?」
    声を軽やかに弾ませて、バッグの中身を確認する。

    王子と蔵内が互いの関係に新しい名前を持つようになったのは、大学に入学してからだった。
    高校卒業後に開催された閉鎖環境試験から遠征や大規模侵攻やらで紆余曲折があり、より相手を求めて緩やかに溺れるようになった。個人差はあれど、そうせざるを得ない経験をしたのだから仕方がない。誰に言う訳でもないが、そっと嘯く。

    ただ、今日くらいは忘れていたっていいだろう…?

    軽く首を振って、ワインボトルとダークブラウンの直方体を取り出した。
    すっきりとした鼻梁を寄せると甘やかな香りが微かに溢れる。
    「チョコレートケーキ?」
    「ああ、オペラやザッハトルテとも迷ったんだけど、ガトーショコラにしたんだ。中にブルーチーズが入ってる。すまないが、ナイフを借りてもいいか?」
    キッチンの抽斗から取り出したナイフを渡すと、蔵内は2センチ厚に切り分けてそれぞれの皿に載せた。

    王子が蔵内にリクエストしたのは「二次会用のお酒とデザート」であった。
    王子には物欲があまりない。あっても手ずから得ることに意義を感じている。寧ろ、恋人がどのように自分を想っているのかを知ることの方が遥かに重要であった。
    だから「きみが先に解禁されたのだから、お勧めのお酒で乾杯したい」とねだった。流石に酒の種類までは分からなかったので、シンプルなタンブラーグラスに赤ワインが注がれる。とくとくとく、と優しい響きが部屋を満たした。
    「乾杯」
    「乾杯」
    そっとグラスを合わせると、硬質な音が小さく鳴った。
    ケーキと共に保冷バッグに入っていた為か、ややひんやりしている。グラスを傾けつつ深緑のボトルを見やると黒地に金色のロゴが光るラベルが印象的だった。
    「美味しいね、これ。ポートワイン?」
    果実やコーヒーの複雑な香りがマーブル模様を描いて鼻腔を抜ける。味蕾の上をまろやかに滑る甘さもくどくなくて酸味とのバランスが良く、好ましかった。
    「ああ、年末実家で出てきてな。食前酒として供されたのだけど、食後酒にもいいと母さんが勧めてくれたんだ」
    「このケーキも?」
    「いや、こっちは俺がネットで探した。実家ではチーズとチョコが別々だったが、偶々この店を知って取り寄せたんだ。王子にもこの組み合わせを試してほしくてな」
    「そうなんだ、ありがと」
    フォークを入れるとしっかりとした抵抗がある。中心部のチーズ部分を含むように切り取りゆっくりと口に運んだ。
    ぴりっ。
    舌先を刺すようなピカンテの感覚。濃厚な塩味と絡みつくようなチーズの圧を感じる。咀嚼を続けるとカカオのほろ苦さと程よい甘さが追いかけてきた。ガトーショコラというよりテリーヌに近い生食感がある。味蕾を塗りつぶすような存在感を放ちつつも口どけは軽やかだった。瞳を細めて、口角を上げる。
    「うん、こっちも美味しい」
    静かに見守っていた蔵内が、小さく息を吐いた。頬を緩ませる。
    「良かった。意外にもチーズとチョコって合うんだな」
    「そうだね」

    そうか、クラウチにはぼくはこんな印象なんだ。
    ワインもデザートも一筋縄ではいかないが、甘くて濃厚でキレがある。

    知らず瞼を落として笑みが溢れる。
    相手のために選んだ物は、意識下に感情が投影されるというのが王子の持論である。十二分に満足した。
    実は王子側も選んでいる物があるのだが、そろそろ気づいてくれるのだろうか。
    土耳古石にも似た双眸を甘く溶かして、目の前の柘榴石の輝きに見とれていた。
    やがてボトルも空になり、ケーキも八割食べ終わった。
    「残りは明日にしようか。ご馳走様。とても美味しかったよ、ありがとう」
    「ご馳走様。片付け手伝うよ」
    キッチンに並び立ち、少ない食器を洗う。ふと、ケーキにラップをかけるため隣に立つ王子から何かを感じる。すん、と鼻を鳴らした。
    「ん…?王子…何かつけてるのか…?」
    王子が両目を瞬かせ、チェシャ猫の如く微笑んだ。
    「そう。先月購入して、手洗い後に付けたばかりだよ。人生初の香水のお披露目さ。どう?」
    すっと差し出された左手首の内側を、再度吸い込んでみる。
    「…なんだか不思議な感じがする。柔らかいけど甘くないような…?すっとするし、ほっとする…」
    眦をほんのり下げて、王子の瞳を捉えて続ける。
    「王子らしい、合っている」
    僅かに息をのんだ王子が、艶やかに唇を緩ませて小首を傾げた。さらり、とミルクティー色の前髪が揺れる。
    「?」
    頭上に疑問符を浮かべる蔵内の呆けた顔に、出逢った頃の面影を見出す。
    「ふふっ、リボンの代わりだよ」
    「代わり?」
    まだ正解に辿り着かない恋人に、最後のヒントを告げる。
    「ワインとケーキのお礼。美味しいうちに召し上がれ」
    白皙の肌をほんのり珊瑚色に染め、うっとりと視線を上げる。今度は蔵内が息をのんだ。
    「…それはそれは。ありがたくいただくよ」
    頸動脈の上にある、不可視のリボンを解くべく蔵内は唇を寄せた。



    互いの身体を存分に味わったあとの王子曰く「きみはそのままが一番美味しい」。

    ……敵わないなぁ…

    世界で一番美味しい恋人をそっと腕に抱きよせた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏😭😭😭☺👏💞💞💞💞🍫🍷💗💗😭😭😭😭😍😍😍😍😍😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    真砂長文倉庫

    DONE王子ハピバ!今年は当日お祝いできたぞ!やったね!
    去年の蔵王と同様、ワインとケーキで誕生会。王子二十歳の誕生日。別時空です。
    それぞれのお相手への王子の差異を書くのが楽しいです。
    CPじゃなくても仲良しなのが好きなので蔵水がっつり出てきます。

    王子誕は香水をテーマにすることにしました。だから来年までに蔵っちとみんぐの香水プリーズ!
    王子は何回も二十歳になって羨ましいw
    (初出:20240111)
    王子誕2024イコプリ「Everything is OK」 警戒区域からほど近い1LDKの単身者用マンションには、三門市立大学に通う生駒と水上、そして隠岐が隣同士で暮らしている。
     年の瀬が近づいてきた今日、生駒宅の玄関には住人の他に二足分、持ち主の異なる靴が並ぶ。一足は少しだけ踵のすり減った代赭色のスニーカー、もう一足は手入れの行き届いた暗褐色の革靴だった。個室のローテーブルに置かれたノートパソコンの画面を生駒・水上・蔵内が取り巻いている。

    「王子のイメージはやっぱり青や思うんやけど、そんな色のケーキある?」
     生駒はブラインドタッチが不得手というより雨垂れ打ちに近いため、入力担当は副官である水上である。スクエア型ハーフリムタイプのブルーライトカットグラスをかけ、キーワードを入力した。
    6226

    真砂長文倉庫

    DONEブックサンタのpixiv版がある(しかも二次OK)と知り、本命CPにメリクリして貰いました。
    (高1~高2設定)
    定番のクリスマスソングを参考にしたのですが、コレ失恋ソングなんですね。優しい雰囲気だったのでハピエンだとばかり思っていました。
    やっぱり推しには倖せでいて欲しいので、歌詞のイメージをアレンジしました。

    メリークリスマス!


    年末を機にこちらに移動。

    (初出:20231223)
    クリスマス2023蔵王「Last Christmas and... 」 防衛任務後、ボーダー本部を後にした蔵内と王子は蓮乃辺駅前に赴いていた。隣接する三門市における三年半前の大規模侵攻で一時期規模を縮小していたクリスマスイルミネーションが、漸く以前と同レベルに戻ったからである。駅前のロータリーには五メートルに及ぶ現代アーティストによるクリスマスツリーが据えられ、上品且つ華やかに彩られていた。そこから放射線状に広がる幾つかの大通りにはテイストの異なる電飾が施されていて、訪れた人々の目と心を楽しませている。更に、クリスマスソングがオルゴール版にアレンジされ、心地良い調べが街灯に設置されたスピーカーから控え目に降り注ぐ。
     ある柔和なメロディーがオルゴールで奏でられると、オブジェを撮影していた蔵内の脳内に伸びやかな歌声が想起された。そして、その歌詞も。
    3723

    真砂長文倉庫

    DONE今年もボージョレ解禁でゲットした「オレンジワイン」の色がみんぐ色(はい?)だったので、連想してみました。蔵水とも迷ったのですが、ワインは王子のイメージだったので久しぶりの王水で。

    当日書くつもりでしたが、一瓶飲んで寝てました。出産後の断酒を経験すると加齢もあってめっきり弱くなったなぁ。
    酒は飲んでも飲まれるな。(ブーメラン)
    オレンジワイン王水「nouveau dessert」「やぁ、お邪魔するよ」
    「…………入れや」
     ここ数日でめっきり冷え込んだ玄関での問答は無意味だ。
     招かれざる客ではあったがその両手に抱えられた物を視界に捉えると、琥珀色の双眸が酷薄に輝いた。その光を凌駕する土耳古石の所有者は悠然と微笑む。勝手知ったる恋人の家のリビングに入り、ローテーブルに荷物を置いた。ふわりとスパイシーな香りが舞う。そのまま瑠璃色の上着と濃紺のスヌードを壁際のハンガーにかけ、手洗いと嗽を済ませてテーブル前に座した。ちゃっかり引っ張り出した座布団を敷いている。

    「時間ぴったり、かな?」
    「約束も連絡もせんで、『ぴったり』もあらへんやろ」
     そうは言いつつも、水上の空腹具合をぴたりと見計らって来るのが王子であることを知っている。そう水上が思っていることを王子も知っている。それは、六年前の春、高校入学時に出逢った頃から肌で感じていたことだ。知人・友人・恋人とクラスチェンジした今でもそれは変わらない。嫌悪・共感・親愛の比率が多少変わったくらいだ。変動制であるそれの現在の比率は7:2:1である。
    1973

    真砂長文倉庫

    DONE2024カレンダーに脳を焼かれて書きました。
    高3夏休み設定他色々捏造していますので、ご注意ください。
    弓場隊・王子隊全員の動向を追ってみました。

    そしたらどんどんキャラ増えた……www最早CP詐欺だろコレ。済みません。

    皆、倖せであれ。

    蔵っち、も一度誕生日おめでとう!
    蔵誕2023蔵王&ワンドロワンライ「夏祭り」(15.5時間) 『Holiday Snapshots』「ほら、できたぞ」
     ぽんぽん、と角帯を叩いて終了を知らせる。
    「どう?似合うかい?」
     くるりと身体を翻す。藍鼠の小千谷縮に銀鼠の帯を合わせた王子が、まだ唐茶色のシャツと亜麻色のアンクルパンツを纏う蔵内に問う。立てていた右膝を伸ばしていつもの視点に回帰すると、蔵内は数歩下がった。
    「ああ、似合うぞ」
     腕を組み目を細め、軽く首肯した。柘榴石が柔らかく輝く。八畳間の片隅にある、衣文掛けに掛けられた鉄紺の小千谷縮を携えようとする蔵内を、軽く制する。
    「ぼくもやってみたい。いいかい?」
     きらきらと輝く土耳古石。厚めの唇が綻んだ。
    「勿論、どうぞ。しかし、それなら俺が先に着付けて貰ったほうが良かったかな」
     無論、一般家庭で育った王子に着付けの経験はない。それでも、黙々と自分を着付ける蔵内の手際の良さに魅了され、やってみたくなってしまったのだった。だから、その提案には意味が無かった。配慮に感謝しつつ、憂慮を打ち消す。
    7407

    recommended works