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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr
    CPなし日常
    休日と重なった節分、この日に起きた些末なトラブルについて。

    「これが……例の」
    「ああ。例の」

    #anzrCPなし

    後に語られた「あんなの鬼だってドン引きだろ」(メイ+ハロ探)「これが……例の」
    「ああ。例の」
     目を丸くした風晴に対し、火村が言葉少なく肯定する。
    「はは。こりゃでかいわ」
    「お目汚しを、失礼しました」
     問題のそれを覗き込んだ結城がいつもの調子で感想を述べたところで、メイは思わず潔く謝罪の意を述べた。
     各々が注目した大皿には、重量感のある太巻きが鎮座していた。ただしそれは、ただの太巻きではない。
     太巻きは酢飯の分量がかなりの割合を占めており、大判サイズの海苔が一枚では足りていないのだ。酢飯がむき出しになっていた三分の一程度は追加で海苔が補完されている。直径にして成人男性のこぶし程度にまで巨大化した、ボリューム感のある太巻き。

     作ったのは他でもない、七篠メイである。

     冷え込みが続きながらも穏やかな陽が差す休日の昼下がり。ハロー探偵事務所内は、節分にちなんだ手巻き寿司パーティーで賑わっている。
     数刻前。料理が絡む催しで当然のように現れる火村は酢飯を拵え、華麗な手さばきで太巻きを量産する最中だった。起床した頃からすでに戦場と化していたキッチン内、メイが手伝いを申し出たまではごく自然な流れである。
     ところが火村の手順に倣い酢飯を広げようとしたところ、想定より多くの酢飯が海苔の上に乗ってしまったのが運の尽き。酢飯を広げ、具を乗せ、厚みにばらつきがある気がして再び酢飯を乗せて、釣り合うように具を追加してを繰り返した末、最終的に迫力だけは満点の太巻きの完成に至った。
    「逆にこの量で良く巻けたものだな」
    「力には自信があったので」
    「いや、そっち……?」
     風晴と結城の苦笑に気づかないまま、メイは火村を仰ぎ見る。
    「火村さんのように、綺麗に作れたら良かったのですが」
    「んなこたねえよ。豪快で良いじゃねえか」

     そんな中食事も忘れて話す声に紛れて、遅れて事務所に入ってきた二人組がいた。
    「来たよー……げ」
     ショップバッグを提げたまま東海林は、おぞましいものを見るような目で巨大太巻きを凝視した。
    「……」
     対照的にジョージは、取り繕う暇もないほどに目を輝かせながら皿に釘付けになっている。
    「ええと……その」
    「メイちゃんが愛情込めて巻いてくれたんだ。ジョージのために」
    「そうなの? ありがとう、お腹ぺこぺこだったんだ」
     提げていたショップバッグを投げ出さんばかりの勢いで、ジョージは重量級の太巻きの乗った皿を(とても良い笑顔で)受け取った。

    「え、食べるの……いや食べるんだろうけど……」
    「お口に合えば良いのですが」

     程なくして(一部メンバーの心配を物ともせず)美しい所作で見事完食を果たしたのは言うまでもない。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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