仮面の君に、百面相(皆に会いたい…………。)
どうしようもなくそう思った。
お母さんにニーゴの活動のことを気づかれてからしばらく経つけれど、あれからずっとナイトコードに顔を出せていない。
夜の間の活動が難しくなってから、ナイトコードはもちろん、作詞などの作業自体もあまり進められないでいる。
あんなに落ち着く場所だったセカイも、カイトが来てからはあまり気を休められなくなった。それも相まってなのか、セカイにすらなかなか顔を出せないでいた。
今まで通りニーゴの活動を続ければ、きっとお母さんはすぐに気がついて、パソコンを預かっていってしまうだろう。そうすれば多分、もうニーゴの皆と曲を作ることは叶わなくなる。
(それは…嫌だ。)
(でも、お母さんは……………………。)
ーーーこのままで、いいのか?
(私は…………。)
ズキリ
なんだか胸がズキズキする。
苦しい。
ぐるぐるする。
(気持ち悪い………。)
おでこを冷汗がつたう。
(少し………、休もう…………。)
確かこの近くには公園があったはず、そこで少し休憩しよう。
私は、公園の方角に足を向けた。
大通りから、細い裏路地に足を踏み入れる。
ここまで来れば、
もう"いい子"でいなくとも大丈夫かな。
私は、フッと表情を落とす。
張った神経が緩んで少し楽になった。
暫く進むとビルの間から、ぶらんこやら滑り台やらの遊具が見えてくる。
暗く人目につかない路地の裏にあるこの公園は、場所が場所であるためか、だれかが来る様子も無く、いつもがらりとしていた。
ビルに囲まれたこの場所は、"いい子"じゃない私を隠すにはうってつけな場所だった。
まぁ兎にも角にも、こんな薄暗く湿った場所に来る人なんてきっと、不審者か私くらいだろう。
そう、思っていたのだが。
「どうして……、どうしてっ……………、」
「ゔぅっ…ああっ…、ゔぁああああ……!!!」
どうやら先客が居たようで、
公園の中央で、高校生ほどの少年が大声で泣きじゃくっていた。
「あぁ…、ゔぅうっ……、あぁあ………っ、」
いつもは静かなだけのこの場所に、彼の叫び声だけが響き渡っていた。