キミを味わいたいそれは唐突だった。
たまたま、指を切ってしまって血が出た。それを舐めただけだった。
『浮竹の血は甘いね?』
そんなことを京楽から言われて顔が真っ赤になった。何を言っているだと浮竹が言うと京楽はハッと我に返ったのか、ごめん今のは忘れてと言ってどこかへ行ってしまった。
それから、あからさまではないが京楽に避けられている。浮竹はもやもやしながら雨乾堂の布団の中で目を閉じている。
「…嫌われた。そんなこと、ないと思いたい」
浮竹はそう言って目を閉じる。どれほど経っただろうか?誰かが自分の髪を梳いている。
薄ら目を開けるとそこには会いたかった想い人。
「…京、楽?」
「……あ、起きちゃった?ごめんね」
京楽はそう言って困ったように笑ってる。その表情を見て浮竹は起き上がり目にも止まらぬ速さで京楽を抱きしめる。
「…会いたかった。どうして、俺を避けるんだ」
嫌いになったならいっそ言ってくれと浮竹が言うとすぐさま京楽の否定の言葉が入る。
「違うよ!キミを襲いそうで避けてたんだよ…」
キミを食べちゃいそうでと言う京楽の声は震えている。浮竹は安心させるように京楽に言った。
「…俺はお前になら喰われてもいい」
「……いいの?骨の髄まで食べたいんだよ?」
「いい。お前以外には喰われてたまるか」
そう言って浮竹は京楽の顔を見る。京楽の鳶色の瞳と浮竹の翡翠色の目が合う。
「いい?今から食べても?」
「…ああ、俺を喰らってくれ」
そう言って京楽は浮竹に口付けをする。口付けが深くなればなるほど浮竹の顔は蕩けていく。
「…やっぱり、キミは甘い」
「ぅ、ん?そうか?」
「うん、どこもかしこも甘い気がする」
京楽はそう言って浮竹の目元の涙を舐めた。
「……なあ、このまま生殺しはやめてくれ」
「…続きをご所望で?」
「意地悪するな。欲しいよ、春水?」
浮竹は京楽の耳元でとびきり甘い言葉を言うのであった。
こうして、二人の夜はふける。