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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    セックスしないと出られない部屋 VS 秀&百々人です。
    エロいことしないし、くっつきません。秀+百未満(2021/11/14)

    ##天峰秀
    ##花園百々人
    ##カプなし

    セックスしないと出られない部屋に百々人先輩と閉じ込められたアマミネくんの話。 暑くて、溶けそうだ。自分の血流がどくどくと脈打って、数少ない音である俺と百々人先輩の荒い息にノイズをかける。
    「ぁ……はぁっ……アマミネくん……僕……っもう無理……!」
     百々人先輩は規則的に動かしていた腰の動きを止めて、俺に泣きつくように声を出した。限界が近いのだろう──声がうわずっていて、掠れている。たったひとつを口にするために、ありったけの息を吐き出さなければ音にもならないほどに彼は追い詰められていた。は、と熱い呼吸を吐き出して、限界に近いからだを震わせている。
    「へたってても……いいですけど……っ! 俺は、まだっ、動きますよ……!」
     そう宣言したはいいものの、俺だって酸欠で頭がチカチカしている。ほんの少し動くだけで汗が滲んで感覚が宙に浮く。熱がじわじわと脳の裏側まで侵食してきて、悲鳴のような百々人先輩の吐息と俺の呼吸の境界を曖昧にしていくから、なんだか俺は意識が部屋の温度とぐちゃぐちゃに混ざっちゃって、自分が自分でなくなるような恐怖があった。
     焦りから逃れるように動こうとすれば、もうなにもできなくなった百々人先輩はぐったりと床に倒れ込んだ。それを一瞥して、俺はまた律動を再開する。
    「大丈夫……っ、です、か……?」
    「無理……だってば……」
     もうやめようよ、って、百々人先輩は口にした。こんなの、意味なんてないよ、って。
    「意味……ないかも、しれないけど……なにかが、変わるかも、知れないじゃ……ないですか……っ」
     こんなの、なんの意味もないのかもしれない。この獣のような息も、濡れた肌も、混ざり合いそうな他人の熱も、全部、全部、無意味なのかもしれないって、本当はわかってた。
     でも俺はそれを認められるほど大人ではない。意地だけで動いているような自分に対して自嘲的な笑みすら浮かぶ。もう、いまさらやめられない。理性を希釈させていく脳内麻薬に従って、もう一度、と腰を動かした。
     百々人先輩はそんな俺をぼんやりと眺めているだけでもう何もしようとしない。蕩けたような目は「バカバカしい」を如実に伝えてくるものだから、俺はたまらず目を逸らした。
    「……だいたい、セックスしないと出られない部屋って……なに……?」
     俺に聞いているのか、独り言なのか、はたまたうわごとなのか。なんだっていい。
    「わかりません……けど……っ! でも、もうこれしか手段……ないじゃないですか……」
     百々人先輩だって、これしかないって同意したんだから道連れだ。俺の提案に頷いたのはこの人なんだから、俺が間違っていたとしても、この人に俺を責める権利なんてない。だって部屋から出られなかったら困るのは、俺も百々人先輩も同じだったんだから。
     俺だって出られないと困るけど、百々人先輩のほうが何倍も切羽詰まって見えた。もう半ば口癖のようになっている「ぴぃちゃん」という単語を度々口にして、戻れなければ困ると顔を真っ青にしていたんだから。
     できることは全部やったと思う。それでも部屋には開く気配のない扉と、大きなベッドがひとつと、ペットボトルに入った水と、男性同士の性交を解説する入門書と、ローションらしきものがあるだけだ。俺たちを監視するカメラのようなものは全く見つからず、大声で訴えても意味はなく、救助を期待して時間を潰し、やがて夢なのではないかと目を閉じて一眠りしたあたりで異常に気がついた。かなり長時間ここに閉じ込められているのに、俺たちは空腹も喉の渇きも感じでいなかった。まるで、時間が流れていないみたいに。
     セックスくらいしようよ。そう言いだしたのは百々人先輩だ。真っ白な部屋では時間も分からないけれど、体感で丸一日以上経過した辺りで百々人先輩はぐったりとしてしまい、弱音を吐き出した。俺は必死にセックス以外のルールを読み解こうとしていたけれど、百々人先輩は不条理なルールに従った方が楽だと判断して根を上げて、俺をふかふかのベッドに押し倒してこう言ったんだ。
    「僕はどっちでもいいから、お願い。アマミネくんが僕で勃つなら大人しく抱かれるし、無理なら僕にキミを抱かせて」
    「……百々人先輩は、俺で勃つんですか?」
    「勃つまでやる」
    「嫌がったら?」
    「たぶん僕のほうが強いから、無理矢理にでも」
     強姦の宣言を憐れなくらい泣きそうな顔でされたのは後にも先にもこの瞬間だけだろう。このままだと本当に襲われかねなかったので「落ち着いてください」と声をかける。彼が子供のような眉の下げ方をするものだから、頭をそっと撫でてしまった。
    「……百々人先輩が言いたいことはわかりました」
     ぱっ、と百々人先輩の瞳に希望が灯る。その目を見て、言った。
    「そのまえに、できることは全部やりましょう」


     結果が現状だ。潤んだ瞳、熱い吐息、濡れた肌、熱の逃げない最奥。そしてきっと通常時よりも濃くなった二酸化炭素。あとはなんだろう。そもそも判定の基準がわからないんだけど、これでなんとかオッケーにしてくれないだろうか。俺たちは狂ったルールを押し付けてくる部屋を納得させるために、こんなに汗だくになってスクワットやら、腹筋やら、腕立て伏せなんかをしているわけなんだから。
    「……もーダメだ……」
     口にしてしまうと途端に限界がやってくる。アドレナリンでごまかしていたからだは数分前の百々人先輩を同じように床に転がった。限界まで筋トレをしたのは生まれて初めてかもしれない。
    「……扉は?」
    「あいてないね……」
    「ダメだったかー……」
     苦肉の策だったが効果はなかったみたいだ。俺が考えた抜け道は袋小路に繋がっているだけだった。
    「……やっぱりセックスだよ。アマミネくん」
    「ちょっと待って……もう少し考えましょうって」
     簡単にセックスするって言わないで。俺はまた思案する。
     この部屋にカメラの類がないのは確認済みだったから、それならばセックスの判定をどうやって、誰がするのかをずっと考えていた。
     音声は拾っていると仮定して二人で喘ぎ声を出してみたが無駄だったし、布団を被って二人で適当にうごうごと動いてもダメだった。なので、視覚と音声は関係ない、という仮説を立てたのが先ほどの話。
     ならば条件はなんだろう、と。
     いま空っぽになった脳みそで振り返ると、俺も結構疲れてたのかもしれない。セックスの判定には『振動、体温、呼吸による二酸化炭素の量、部屋の湿度』などが測定されているのかも知れないだなんて考えてしまう程度には、俺は疲れていた。
     つまり、筋トレでごまかせる、と。
    「呼吸も荒かったし、からだは熱かったし、ワンチャン開くと思ったんですけどね……」
    「本当に思ってたんだ……僕は途中から、これ絶対セックスじゃないって思ってたよ」
    「俺は心構えだってちゃんとセックスでしたよ。なんとかエロい方向に考えようと努力してましたし」
     熱っぽい呼吸とか、火照る肌とか、そういう要素を必死に拾って、読んだこともない官能小説をイメージして脳内実況してたんだけどダメだった。
     もしくは百々人先輩がエロい気分になってなかったからダメだったのかもしれない。そう返せば「正気?」と返されてしまった。
    「……アマミネくんは、筋トレでエロいって思えたの?」
    「うーん……ギリで呼吸とか……いや、百々人先輩のだからなぁ。ちょっと無理ですよ」
    「僕で興奮されても困るけど、なにかに負けた気がする」
    「ヤバい勝負に巻き込まないでください」
     僕をじっと見た百々人先輩は、なにやら思案した後に俺にウインクを投げてきた。興奮できるわけないでしょ。
    「……というか、アマミネくんやっぱり僕で勃たないじゃん。申し訳ないけど僕が……」
    「ストップ! まだ万策尽きてないはずです! それは最終手段にしましょう!」
     最後の手段は本当に最後に使うものだ。俺はまたありったけの思案を巡らせる。セックスをすると発生する要素とは、セックスの定義とは、セックスとは。
     なんだか哲学に足を踏み入れたような心地だ。高校一年生の健全でエロい盛りの男子がセックスを考えるときに至っていい境地ではない。
     なにかあるはず。なにかあるはず。深く潜ろうとする意識を、ふてくされたような声が引き上げた。
    「……そんなに嫌? あ、嫌なのはわかってるけど……でも、それ以上に出たいと思わないのかなって」
     僕は出たい。そう告げる百々人先輩は泣きそうでも悲しそうでもなくて、単純に不思議そうだった。
    「そりゃ出たいですよ……でも、幸か不幸か飢え死にの心配とかはないみたいですし。俺はまだ色々考えてみたいだけです」
    「そっかぁー」
     ばふ、と百々人先輩はベッドに沈み込んでしまった。くぐもった声が、柔らかな布を通して聞こえてくる。
    「……なにか浮かんだら教えて。それか、僕がアマミネくんを襲う前に抱いて」
     ぴぃちゃんに会いたいんだ。そう呟いて百々人先輩は動かなくなってしまった。寝ているのか起きているのかもわからないこの人に、俺は声を投げる。
    「百々人先輩が出たいのは、プロデューサーに会いたいからですか?」
    「……もし、外の世界ではちゃんと時間が経ってたらって考えたらすごく怖い」
     この部屋にいる限り、俺たちに変化はないように思える。でも、それがこの部屋の外に適用されているルールなのかはわからない。
    「まだ少ないけど、僕たちにだってお仕事はあるでしょ? 仕事に出れなかったらぴぃちゃんに迷惑かけちゃう。もしずっと仕事できなかったら、僕はアイドルでいられなくなっちゃう……」
     百々人先輩の言葉は途切れたけど、それが彼にとってどれほど怖ろしいことなのか、ぼんやりと伝わってきた。この無力に沈み込んだ人間はきっと弱くて、俺のことを襲う前にひっそりと死んでしまうんじゃないかと不安になる。そりゃ、百々人先輩が死んじゃうなら、死んじゃう前に抱くし、抱かせてもあげますよ。でも、あとちょっと待ってほしい。俺だって、守りたいものがある。
    「……アイドルで、いたいんですよね」
     弱々しく頭が動いて同意を示す。こうやってしみじみと見ると、鮮やかでキレイな色をした髪だなって思った。
    「俺もクラスファーストが大切です。俺はアイドルになってやるべきことがある。百々人先輩がアイドルでいたいように、俺だってアイドルでいたい」
    「だったら、」
    「本当に手段がなくなったら抱きますよ。でも、抱いたらきっとおかしな方向に変わっちゃうと思うんです。テレビに出るとき、歌を歌うとき、ダンスを踊るとき。俺はいつか、ふいに、ああ、俺の横で笑っているこの人を、俺は抱いたことがあるんだって考えてしまう」
     やったことはないけどわかる。粘膜を触れあわせたら、もうその人間を交わる前と同じ感情で見つめることは不可能だ。
    「これは俺の自分勝手なんです。百々人先輩に自分を大事にしてほしいとか、愛がなければセックスをしてはいけないとか、そういうのじゃない。俺はいまのままで進んだ先のクラスファーストが一番いいって信じてる。こんなくだらない部屋に傷つけられてたまるか……って話」
     一気に息を吐き出して、それきりの判断は沈黙に任せた。百々人先輩は何も言わず、俺はもう言うことがなかった。
     考えなければいけない。俺は、俺とこの弱い人を保ったまま、ここからでなければならない。
    「……セックス……うーん。定義はやっぱりいれることなんだろうけど……」
     入っているかを判定する手段がわかればごまかしようもあるんだろうけど、全く見当がつかない。不思議な部屋だし、もしかしたら本当に心持ちひとつだったらどうしよう。
    「百々人先輩。判定方法がわからないんで、マジでセックスしてると思ってなにかしてみませんか? もしかしたら判定が精神的なものに依存しているかも」
    「なにかってなに? セックス?」
    「セックスだと思ってセックス以外のことするんですよ」
    「……セックスしたと思ったら……キミは一度心で抱いた人間とアイドルができるの?」
     本末転倒、って呟いて百々人先輩はからだを起こした。一応付き合ってはくれるみたいだ。でも、そうなんだよなぁ。心の中でも抱いてしまったら、俺たちはどうなってしまうんだろう。
    「……そう言われると……ちょっと待って……」
    「はやく」
    「いや……ああ、もう。そもそも、俺が百々人先輩を抱く可能性を考えちゃうのがもうダメなんですって!」
     百々人先輩は同じユニットの仲間だ。ちょっとよくわからなくて、いつも一生懸命で、プロデューサーのことが大好きな、ひとつ上の先輩。俺はそれを崩したくなくて、血管が切れそうになるまで筋トレだってしてみせたんだから。
    「……なんか、セックスのこと考えすぎて、もうよくわかんなくなってきました」
    「僕も……ねぇ、セックスってなんなんだろうね……」
     わからない。もう、意識した瞬間に何かが終わってしまうのだろうか。もう、俺たちは元には戻れないのだろうか。
    「……いや、戻れます」
    「アマミネくん? なにに?」
    「前にオマエなら頑張ればいけるって言われたことあるけど、そいつとは友達続いてるし……」
    「ええ……?」
    「ようはこの部屋にセックスだと認めさせた上で、俺たちが一切セックスだと思わなければいいんだ……なにか、なにかあるはず……」
     考える。頭の中の知識を全部出す。出した上で、だけど、マジでセックスの知識がない。俺の周りにそんな暴れん棒はいないし、ネットの知り合いだって──そう考えて、俺はとある言葉に辿り着いてしまった。
    「……あったかも」
    「え?」
    「セックスじゃないけど、セックスできるかもしれない。俺たちがセックスしなくても、セックスだと思わなくても…………セックスだと判定されるかもしれない」
     天啓のような高揚感に浮かされて、自信満々に俺は言う。いまから振り返ると、きっとこの時の俺は人生で一番バカだった。

    「殴り合いのケンカをしましょう。これ、実質セックスって聞いたことあるんで」

    ***

    「マジで開いた……」
    「バカじゃん……」
     骨は、折れてないはず。お互いに口の端は切れた。鼻血は俺だけ出てる。というか、わりと俺が一方的にやられてる。
     俺の言葉を聞いた百々人先輩もかなり疲れていたんだと思う。じゃあ負けた方が抱かれることにしようと大笑いして、俺に掴みかかってきたのが試合開始のゴングだった。
     マウントを取り合って、転がって、人生でやったことのないくらい殴り合った。髪の毛を引っ張られたときに彼の頬を引っ掻いてしまって、これはアイドル活動に支障がでるやつだったと気がついたがもう遅い。百々人先輩が気づいていないのをいいことに、黙って腹を蹴り上げた。
     なんというか、人間は精神的に追い詰められると攻撃的にもなれるらしい。それでも正気のままでは罪のない人間は殴れないので、原動力にするためにどうでもいい怒りをお互いに叫ぶという、狂った空間を俺たちは作り上げていた。俺たぶん最後のほうなんか、どっからも切れないマジックカットの袋にキレながら百々人先輩のこと殴ってた気がする。もうよく覚えてないけど。
     体感5分くらい。カチリという音が聞こえて、音のした方を見れば扉は開いていたのだ。
    「……おつかれさまです」
    「おつかれさま……ええ? なんで開くの……?」
    「知りませんよ……この部屋と判定、頭おかしい……」
     扉が開いたおかげで緊張感が切れてしまい、俺たちはへろへろと座り込む。呼吸が落ち着く数分のあいだに、思ったことを口にした。
    「てか百々人先輩、強くないですか……?」
    「え……だって僕、柔道で賞取ったことあるし……」
     聞いてないんですけど。
    「それ先に言ってくださいよ……賞キラーこわ……」
    「言うほどうまくもなかったから……一位になったこと、ないし」
     そう憂いた声を出すこの男、さっきまで俺のこと殴ってたんだよなぁ。まぁ俺も殴ったからおあいこなんだけど、トータルを振り返ると俺のがダメージはデカい気がする。地味に身長差は響いていたし、そもそもこの人、スポーツ系でもめちゃくちゃ実績あるんだよな。
    「でよっか」
     呼吸を整えた百々人先輩が立ち上がり、俺に手を差し伸べてくれる。俺の鼻血で汚れた手を取って、俺も立ち上がる。
    「……俺のわがままで痛い思いさせて、すみませんでした」
     血の滲んでいる唇と、頬のひっかき傷。多分他にももっと。彼が『ぴぃちゃん』のために保っていたものを、蔑ろにした自覚はあった。
    「ううん。……僕にはよくわかんなかったけど、アマミネくんがなにかを守ってくれたのはわかるから」
     ありがとう、と百々人先輩は笑う。この人とセックスをしなくてよかったと、心の底から安堵した。
    「これ、外に出たら漫画みたいになかったことになるのかな?」
    「さぁ? そもそも夢かもしれないですしね。まぁ、出てみないとなんとも」
     全部忘れちゃうのかもね。感慨も何もなく呟いた百々人先輩はもう俺を見ていなくて、俺は百々人先輩の傷がなかったことになることだけを祈っていた。
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