この街に簡単な仕事なんてない vol.1基本仕事で外にでることはない。
モニターがよく見えるように薄暗い部屋でキーボードを叩く、それがいつもの仕事。
ただ、稀に外に駆り出されるときがある。
もちろん前線で戦うわけではない、そんなのは死んでも嫌だ。安全圏で活動できることが保証されていないと絶対に足を運びたくない。
そう言っていたけど、この街で絶対的な安全圏を探す方が難しい。警備の堅いビル内でも、頑丈な護送車の中でも、どこででも、危険は寄ってくる。
「なんでこうも、危ないもんは寄ってくんだろうな。虫かなんか?」
手持ち無沙汰にキーボードを叩きながら呟くと、ヘッドホンの向こうから声が聞こえてきた。独り言、と返すとマイクを切れと呆れた声が聞こえ、ブツリとマイクを切った音を最後に無音になる。
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