幸福と言う名のあなたただ一つ歳を重ね、家族から連絡が入る日。
私にとって一月六日はただそれだけの日だった。確かに幼少期は家族に祝って貰うことが喜ばしかったし、今か今かと待ち遠しい気持ちになったこともある。しかしそんな気持ちにはもう何年もなっていない。医者になり、社会に出て、そして兄の腹の中を見たあの日から。
この世はイカれている。
それを知って、受け入れられなくて、気が付いたらいつの間にか、もしかしたらもう少し、もっと前のいつかから。
それからこの日は、家族から連絡が入る日、それだけとなった。
それだけのはずだった。
ピロン。ピロン。ピロン。ピロン。
「真経津も叶もしつけーな」
先程から鳴り止まない携帯の画面を覗き込む男は、私の肩を抱いて頭を寄せる。多少狭苦しいが、不快ではない。
1088