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    マサよし

    @Masayoshi_sP

    書きまくって練習する場所

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    マサよし

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    一日一作【8】 4/21
    ・超常事変より
    ・火野瀬と山模の中等部時代捏造
    ・cp

    超常3(火野瀬×山模)「そういえばお前、生徒会に入らないのか?」
    深く考えないで軽く聞いたつもりだった。いつも通りの何の変哲もない放課後、日直当番の範数が仕事を終えるのを待つ時間は割と嫌いではない。高い身長を活かして黒板の上の方を綺麗に掃除していた範数は、俺の問いにその手を止めた。
    「てっきり俺、お前のことだから皆の学園生活を良くする為だとか言ってやってると思ってたぜ」
    「……親に止められているんだ」
    暗い声色で返ってくる答えに、少しだけ反省する。最近、範数は俺と一緒にいる時でも険しい顔をしている時間が増えた。あまり笑わなくなったし、大きな音が聞こえると不安そうな表情を見せたりもする。何かあったのかと何度か聞いたが、はぐらかされてしまうばかりだ。
    「似合いそうだけどな」
    「そう見えるか」
    「あ!でもそうすると、お前とつるめる時間がもっと減っちゃうか!それは勘弁だ」
    すぐさま手のひらを返すように言うと、範数は黒板の掃除を続ける。イメージ通りというか、コイツは絶対に寄り道をしない。帰り道は本当に家にまっすぐ帰るだけで、帰る方向が違う俺たちには、どうでもいいようなことを駄弁る時間はそこまで多くなかった。用事が無ければ先生に促されるまますぐ帰ろうとするし、どうせ家でも勉強してそうだから遊びに誘うのも憚られる。
    友達と呼ぶには俺としてはちょっと物足りないが。話したいことがある、聞いてほしいことがある、と言えば気がすむまで時間をくれる、それだけでよかった。
    「……紅炎、お前」
    「ん?」
    「お前、頼れる友人はいるか」
    カタン、と静かな教室に黒板消しを置く音だけが響いた。そうして振り向いた範数は深刻そうな表情をしており、何か大切なことが話されるのかもしれないと頬杖をついていた顔を上げて話を聞く姿勢をとる。
    「困った時に相談できる友人はいるか?」
    「え、お前」
    「俺……俺、以外で」
    暗いままの声で話す範数は、少し俯いていた。何かを思い悩んでいるのは確かだろうが、それが今の問いにどう関係しているかはわからない。推測もできないから、素直に考えるしかなさそうだ。
    別に友人がいないわけじゃない。クラスの奴らとも普通に話したりはするし、気まぐれで遊びに誘ってくる奴とは普通に遊ぶ。まあ普通に、程度だ。俺が無茶苦茶してたのを見ていた奴が多いからか深く関わろうとはしてこないし、彼らは頼るというよりは守る対象な気がする。
    そもそも、俺の拙い話をきちんと聞いて、俺でもわかるように根気よく話して適切な答えをくれる人なんかは、先生を含めても希少な存在だ。その点で理想的な範数を相手に話しているようなことを、そっくりそのまま相談できる人なんてのは思い当たらない。
    「いないかもしれないけど……なんだよ突然そんな事。もしかして俺の相手してるのが嫌になったかぁ?」
    「それは違う」
    「じゃあなんだよ」
    「……今みたいに話したり、一緒に帰ることができなくなる。……かもしれない」
    「え?引越しか……?転校するのか?」
    咄嗟に出た声は自分でもわかるくらい、情けない声だった。それならここのところ落ち込んでいたのも頷ける。でも、この学園には寮もあるし、なにも転校なんてしなくても……。むしろ学校を変えないといけないくらいの事情があるのか?
    困惑し、納得し、可能性を否定しようとしてさらに嫌な可能性を考えついてしまう。焦っていると、範数は意外にもキョトンとしていた。
    「いや、引っ越しはしないよ。ただ……」
    「じゃあなんだ!?転校は!?」
    「最後まで聞け。親戚の仕事を手伝う関係で、今よりも忙しくなるかもしれないんだ」
    だから今までのように放課後ゆっくり話を聞くことや、昼休みを共にすることができなくなるかもしれない、とのことらしい。拍子抜けして立ち上がりかけていた腰を下ろす。なんだそれだけか。と、思ったが結構それはそれで寂しいとも感じてしまった。それを誤魔化すように明るく話すように努める。
    「なんだそんな事か……!思い詰めた顔で言うなよ、ビックリしただろ!」
    「……悪い。少しお前のことが心配になったんだ」
    「大袈裟だなぁ」
    「む……仕方ないだろ。誰かと、こういう風になったことはないんだ。その……親密、な関係性には」
    「……、あ?」
    今、なんて?
    間抜けな声が出て顔が熱くなる。どこかから炎が漏れ出ているんじゃないかと疑ってしまうくらい、体感温度と周囲の室温が上がっている気がした。
    親密ってあれだよな。下世話な記事とかで芸能人と芸能人が付き合っていると報じられる時に使う言葉だったはず。それが、なんだって?俺と範数が、親密な関係?……告白か、何かか?いやいや、待て暴走するな俺。ただの同性の友達にも使うもんなのかもしれない。親友的な意味で。いやでも……。
    冷静になれ、とは思うだけで決してまともじゃいられなかった。ちょっと恥ずかしそうな感じで、ガラじゃない拗ねた顔をして言ってきたもんだから、とにかく頭の中が混乱する。悪い気がしていない、どころか……。そんな気持ちも、余計に自身を悩ませる原因になった。
    「紅炎?」
    俺の様子がおかしいことには勘付くのが早い範数は、なにを思ったのか近寄ってきて肩に手を置いてくる。別にそれくらい今更なのだが、変に意識してしまっている俺は体が5センチは宙に浮いた。若干炎を漏らしてたかもしれない。
    「……。自意識過剰だったか?」
    「そっ、そんなことはない!俺もお前のこと好きだ!」
    悲しそうな顔をする範数にとにかく誤解を解きたくて、口から飛び出たのはド直球すぎる言葉だった。変なことを口走った自覚はあるが、先に言い出したのはあっちだ。
    「え……?」
    「急に言われてビックリしただけで……。でも、その、全然嫌じゃないっていうか、嬉しいかも、っていうか……」
    「あの、紅炎……お前」
    「とにかく、俺も好きだ。だから」
    「ちょっと待ってくれ」
    強めに言われて急停止する。怒りや不満をコントロールするのは慣れてきたが、プラスの感情についてはまだ暴走気味だ。またやってしまった、と怒られる準備をするも、今度は範数の様子がおかしかった。
    「……お前のまっすぐさは人として良いと思うが、流石にそれは強すぎる。好意を伝えるのに、その態度と言葉選びは危ない。勘違い……でも、されたら、どうするんだ」
    マジで見たことがないくらい顔が真っ赤。モゴモゴ話す言葉は音量小さいし早いし聞き取りにくいし。手で口元を覆ってしまえば、それ以上は本当になにを言ってるかわからなかった。もう片手はギュッと胸元で握られていて、まるで心臓を押さえているようにも見えてしまう。
    つられて、さらに熱が上がる。ゴクリと唾を飲み込む音がやたら大きく鳴った気がして、慌てて口を塞いだ。恥ずかしさと、戸惑いと、言い表せない感情が混ざってドロドロに溶けて、火山の噴火直前のように体の中で煮えたぎっている。
    「なん……だよ」
    先に紛らわしい言い方をしたのはお前のほうだ。いや、また勝手に誤解して暴走した俺が悪いと言われればそうなのだが。だとしても狡い。完全に自覚させられた。
    「好きじゃダメかよ」
    本当にあってるかはわからない。それでも、そのままぶつけてみる価値はあった。俺は範数が好きだ。多分、友人や親友じゃ満足できないくらいには。これまで通りじゃ、嫌だと思ってしまうくらいには。
    「お前、自分がなに言ってるかわかって……!?」
    「わかんねぇ!わかんねぇけど……俺、お前の事が好きだ!違うって言うならこれが何なのか教えてくれよ範数……!」
    「落ち着けって、おい……」
    詰め寄って両腕を掴むと、範数はたじろぐ。見上げると汗が輪郭を伝っていて、さらに心臓がバクバク主張してきた。なにを聞いてもなにをしても落ち着いていて、炎の中ですらそんな顔は見せなかったのに。
    「お前の事もっと知りたいって思うのは。一緒にいれなくなるって聞いて、焦ってショック受けたのはなんでなんだ!?」
    「それは……友人とより親密な関係に、親友になりたいと考えるのは、自然な事だろう……?離れがたいのも……それだけ気に入ってくれているのは嬉しいが、その好きはお前の言ってる好きとは……」
    「じゃあ今こんなにドキドキしてるのは」
    「間違ったことを……恥ずかしく、思って……緊張している、からで……」
    「勘違いしそうだって言ったお前に期待してる、これはなんなんだよ」
    「それ、は……」
    「お前の事もっと知りたい。もっと聞きたい。もっと見たい。お前に関わることだったらなんでも、どんなものでも知りたいと思う」
    「……っ」
    「教えてくれ。お前の答えはなんだ」
    聞きたいのは説得じゃない。どんな言葉を並べられても、自覚したこの想いは揺るがない自信がある。求めているのは答えだけだ。
    まっすぐ見つめたままそれを待つ。見開かれていた目がグッと歪んで潤み、眉がひそめられるのをしっかりと見届けた。固く結ばれていた口が解けて、震える唇が何かを言おうとしているのを黙ったまま見守る。
    「……おれ、も」
    か細く、範数は答えた。
    「おれも、知りたい。紅炎のことを、理解したい。受け止めてやりたい」
    「それって」
    「……わから、ない。けど……多分、お前と同じだ。お前と、同じ……好き、かも……しれない」
    泣きそうなくらい嬉しいことってあるんだ、とこの時知った。瞬きを忘れていた目が痛いのも無視して、余すことなく全てを目に焼き付けるつもりで見つめる。落ちていった視線が戻ってきて揃った瞬間、吐息を一つ溢しつつも愛おしげに細められた瞳に心臓を掴まれながら。
    「俺と、付き合ってくれ……!」
    「……うん」
    改めて、その答えを受け取った。
    傾いてくる体を緊張しながら抱きかかえると、範数もやたらと熱かった。腕に力を入れると肩に頭が落ちてきて、そのままじっと抱きしめられているのが可愛く見えた。そう、可愛い。この可愛い奴が、俺の……こいびと、に。
    「ありがとう、範数」
    「……」
    「……範数?」


    「落ち着いたか……?」
    「ああ……」
    ついさっき告白したばかりの相手の背中を撫でながら、ほっと一息つく。恐らく、経験したことのない感情でキャパオーバーを起こしたらしい範数は、告白の返事をした直後ぶっ倒れていた。自分よりデカい図体を担ぐには俺も万全の状態じゃなくて、何よりも保健室の先生に何と説明すればいいかわからなくて怖かったから、と自分に言い訳をして二人きりの教室で椅子に座らせ落ち着かせている。やっと応答があった頃には、窓の外で夕焼けの空が広がっていた。
    「そろそろ帰らなきゃか……」
    「そう、だな」
    「……まだ一緒に居たいぜ」
    肩を預けて手に触れると、また倒れるんじゃないかと心配になるくらい一気に顔を赤くして静かにとんでもなく慌てている。能力の制御は得意なはずなのに、手の中で汗が氷の結晶に変わってヒンヤリしてるくらいには。
    俺が言えた事じゃないが、あまりにも初心すぎねぇか。長身イケメンで成績優秀な模範生ともなれば、色恋沙汰の中心になっていたとしてもおかしくないのに。
    「こっちまで照れるだろぉ」
    「だから……初めてなんだ。こんなの……」
    時々言葉を詰まらせながら範数は、規律を無理に強制するつもりはあまり無いが、意識しなくても威圧感があるせいで親しい友人はいなかったのだと語った。それと同時にもちろん恋愛についても未経験で、褒められることはあってもそういった好意を伝えられた事は無いのだと。まあ確かに迫力はあるし、俺も遊びに誘えなかったからわからないでもない。
    ただ、絶対にそれこそ勘違いだと思うけどな。クラスの中で密かに範数に憧れて遠巻きに見ている奴を俺は何人も知っているし、女子の噂話ではよく登場するのも小耳に挟んだ。俺と範数が仲良くしているのを見たのか、どうやってお近づきになれたんだと聞かれた事もある。と、知ったらどんな反応をするのだろうか。
    「まあ、なんだ。これからもよろしくな」
    「……ああ」
    「あ、そうだ。ずっと言い出せなかったんだけど、連絡先交換しないか?そうすれば、家にいても時間ある時に話せるだろ」
    「良い案だな」
    今更すぎる連絡先交換を果たし、一覧の中でも逆に目立つ堂々とした「山模範数」というフルネーム表記すら愛おしく思った。意外にもアイコンは可愛い猫で、好きなのかと聞けば、好きだが軽い猫アレルギーで飼うことはできないのだと返ってくる。知らなかった。
    「へへ、なんか嬉しい。こういう風に小さな事も色々お互い知っていって、もっともっと好きになっていけるのかな」
    「お前はまた、そうやって……」
    「嬉しくないか?」
    「嬉しいけど……」
    赤面した困ったような表情を笑うと、頬を染めたままムッと不貞腐れたような顔になる。あ、それ可愛い。大人びている範数の年相応な反応が嬉しくて、ついそう思ってしまったが、口に出すと全部隠されてしまいそうだったので黙ったまま手を握り続けた。
    チャイムが鳴って生徒の下校を急かす。そろそろ教室にも見回りの先生がやって来てしまうだろう。帰る支度をしようと自分の席に戻って鞄を漁っていると、既に準備を終えていたらしい範数がすっかり調子を戻してこっちを睨んできていた。
    「……紅炎、まだ皆には内緒だぞ」
    「え!?わ、わかってるよ!」
    「浮ついたまま皆のいる教室でこんなことしたら怒るからな、流石に」
    「ちなみに、なんで?」
    「……恥ずかしいから」
    前言撤回、帰るために調子を取り繕っているだけらしい。どんな答えが返ってくるのか興味本位で聞いただけなのに、またすぐにポッと色を変える頬を一撫でしてから、手を引いて教室を出る。残っている生徒はほとんどいないらしく、廊下には俺たちだけだった。
    「恋人らしい事もしたいなー」
    「……例えば」
    「デート……とか?俺も知らないけど。お前となら何でもしてみたいぜ」
    「……一緒に、学んでいこう。俺も知らないことだから」
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