信gen「やっと行ったか」
食糧庫の奥で信に強く抱きしめられながら、時間が過ぎるのを待っていた。普段ならたくましい腕やふわふわした尻尾に包まれている間は落ち着くが、今はそうはいかない。
この世界の人間が突然やって来たのだ。
急いで隠れるように皆に言われて食糧庫に逃げ込むと、毛を逆立てた信が「奴らは玄武を探しているようだ」と教えてくれた。俺には聞こえない外の様子が、彼の耳には聞こえているらしい。その険しい顔に、やはり獣人族にとって好ましい状況ではないのだと分かった。
どこから俺の存在がバレたのか。やはり別の世界から来た異質な存在は他の種族も放っておけないのだろう。人間族は鬼族と共に鬼人族という大きな勢力の中にあると盟に教えてもらったのを覚えている。もし彼らに見つかれば、俺も獣人族もどうなってしまうか分からない。皆と一緒にいられなくなってしまうのかもしれない。
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