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    Enuuu

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    Enuuu

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    架空ガシャ、雨玄併せ、墓地。
    二人ともはしゃいでプロポーズまがいのことしちゃったら可愛いじゃん。

    注意
     ※ 女体化による一人称、呼び方の変化。

    ##百合営業をしている雨玄

    大切なあの人へ! Happy Bridal ガシャ 結婚式場の仕事が私と雨彦姐さんに来た。式場の広報担当者と行われた話し合いが終わりに近づいた頃、それまで番長さんと話をしていたその人は私たちの方へ顔を向けた。
    「黒野さん、葛之葉さんは、どのようなドレスや結婚式がいいですか? 今回のコマーシャルのテーマは“願いを形に”ですから、ぜひ聞かせてください」
     広報担当者にそう言われ、私は困った顔をしていたと思う。視界の端で、仕事の書類をまとめていた番長さんが微笑ましそうに口元を緩めた。今度は反対方向の隣に座っている雨彦姐さんの顔を伺う。思いっきり目が合ってしまい慌てて正面へ視線を戻せば、彼女が肩を揺らすのが分かった。
     まるで自分だけが子供のようで、子供だと分かっているのだが悔しく思う。
    「そうさな、私は洋装がいいな。白無垢も良いが、煌びやかなドレスにも憧れるものだろう?」
     雨彦姐さんの言葉に広報担当者が深く頷いた。「葛之葉さんは背も高くてお綺麗ですから、長いスリットが入ったドレスなどお似合いだと思いますよ。ほら、こちらなど」とカタログを開いて、あれやこれを指差す。
     私は少し身を乗り出して、カタログのページを眺める。
    「黒野はどうだ? 黒い髪が綺麗だから白無垢も似合いそうだな」
      突然、雨彦姐さんに話をふられ驚く。思わず肩に力を入れると、彼女はおかしそうに笑って広報担当者が持ってきたカタログのページを開いて見せた。
    「黒野は背が高いし上品だからな、こういう丈の長い柄物が似合うんじゃ無いか? ああ、こっちも可愛らしいな」
    「姐さん。これとこれじゃ、随分とテイストが違うぜ」
    「お前さんはそれだけ何でも似合うってことさ。私はこっちも良いと思うがな」
     また全然違うデザインのドレスを指され、私は苦笑した。堪えきれずに口元を隠して笑っていると、雨彦姐さんが目尻を下げて柔らかな表情を浮かべる。彼女はカタログを閉じると、促すような表情で私を見た。
     私は少し楽しいような気持ちになって、促されるまま「そうだな」と呟く。
    「私はまだ学生だからうまく想像できないが、ドレスを着るならメガネが似合うようなドレスがいいな」
    「黒野さんはメガネにこだわりがおありになるんですよね。先日の雑誌記事を拝見しました」
    「嬉しいな。ありがとうございます」
     そんなやりとりを打ち合わせの際に行ない、向かえた広告用の写真撮影日にはそれぞれの言葉がいくらか反映されたことが分かるドレスが用意されていた。
     レースがふんだんに使われた上品なラインのワンピースのようなドレスだ。百合の花の刺繍がさらさらと光っている。刺繍糸と同じ色のバレエシューズのような靴も用意されていた。素敵だと思ったが、まるで絵本のお姫様のようで私に着こなせるかと不安になった。
     もろもろの準備を済ませ、番長さんが待っている撮影場所まで歩いていると、別の部屋から雨彦姐さんが出てきた。彼女が一瞬、雨彦姐さんに見えず、私は自分の頬に熱が集まるのが分かる。
    「黒野、綺麗だ」
    「あ雨彦姐さん、とっても素敵だな。きらきらしてるぜ」
     流れるように「綺麗だ」と言われ、大きく音を立てる胸を押さえながら雨彦姐さんに賛辞の言葉を述べる。
     雨彦姐さんは丈が少々短いが、布地で作られた薔薇の花がたくさんついた華やかで可愛らしい真っ白なドレスを着ていた。蛍光灯にさらされている肩や腕がドレスに負けないくらい白く見え、雪女みてぇだと思う。なんて綺麗なんだろう。
     彼女は私の目の前に近づいてくると、ぽんぽんと軽く頭を撫でた。
    「黒野のベールには花冠がついているんだな。ふふ、」
     雨彦姐さんは笑い声を漏らすと、ふいに私の頭から髪飾りを持ち上げた。「メイクさんにやってもらったばかりなんだぞ」と言っても、豊かに笑うだけで聞き入れてくれない。彼女は造花でできた花冠から伸びるベールを何度か撫で、私の頬に手を添えた。質の良い布地越しに、雨彦姐さんの指先の熱が伝わってくる。
     ステージ袖や事務所で似たようなことをされたことは幾度もあるが、今日の撮影では度が入っていない眼鏡を渡されて本当に良かったと思う。メイクでキラキラとした雨彦姐さんの顔は私には致死量以上の毒に等しいからだ。
    「知的で若々しいお前さんを私の人生に巻き込んでしまうこと、すまなく思ってる。だが、この気持ちを止めることはできないんだ。私と一生を添い遂げてくれないか?」
     眉をハの字に曲げた雨彦姐さんは口を閉じると、花冠を私の頭に乗せてそっとキスをした。
     何を言われたのか、聞こえていたが理解はできない。認識しようとすると、頭の中が茹って爆発しそうな感覚がする。私の顔はきっと化粧なんかじゃ誤魔化せないくらい真っ赤になっていたのだろう。ややあって、雨彦姐さんは吹き出した。けらけらと体を揺らして笑う。私はようやく、これは冗談だったのだと深呼吸を数度した。
    「……雨彦姐さんの口紅、移っちまったじゃねぇか」
    「このくらいなら皆、許してくれるだろうさ」
     笑いを収めた雨彦姐さんが、私の前に手を差し出す。
    「お手をどうぞ、お姫様」
    「雨彦姐さんだってお姫さんだぜ。私にもエスコートさせてくれよ」
     ほんの少しだけ、やり返したい気持ちを込めてそう言う。雨彦姐さんはキョトンと目を丸くして、小さな声で「いいのかい?」と戸惑ったように言った。恐る恐る雨彦姐さんの手を取ると、好物の油揚げを差し出された時のように両目を輝かせるものだから吹き出してしまう。
     雨彦姐さんはバツが悪そうに頬を赤らめた。
    「お前さんが可愛らしく着飾って仕事とはいえ式場にいると考えるだけで、年甲斐もなくはしゃいじまう。黒野、今日の私は世界一の幸せ者だ」
     普段の雨彦姐さんからは想像もつかないような言葉が次々に吐き出され、黒野は自分の口角がだんだんと上がっていくのが分かった。にやけた表情を隠しもせず、彼女の手を引いて撮影場所へ足を早める。
    「雨彦姐さん。さっきの言葉、次は私が言う番だからな。答え、考えといてくれよ」
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