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    タオ_

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    タオ_

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    ノボクダ風ブロマンス小説

    ノボリさんとクダリくんが二人暮しに至るまでの想像の中のひとつを書き起こしました。ギアステにも働くポケがいたらいいな。

    災い転じて福と成せ! 「これはこれはこれは……」

     なんということでしょう。




     「ノボリおはよう!」

     クダリの明るい声がマスタールームに響いた。八月も中旬を過ぎたとはいえまだ夏の気配の残るイッシュ地方では各地で連日二七度を越えていて、湿気はあまりないが日差しが照りつけている。コンクリートジャングルであるヒウンシティよりかはマシであるもののライモンシティも暑い日が続き、駅の利用客もまだまだ半袖の人間が多い。今まさに出勤してきたクダリも例に漏れず、半袖のシャツと足首が見える長さのラフなパンツ、それからくるぶしソックスという少年のような格好をしている。背負ってきたクリーム色のリュックはぺったんこで、入っているものといえばネクタイと同じビビットな青いネックストラップに繋がったギアステーションの社員証くらいだ。暑いねと顔を扇ぐのに使っているウチワはクダリのこの夏のお気に入りで、これは昨年の夏に手に入れたものである。
     というのも、たまたま電気系統のトラブルのため二人揃って臨時休暇となった日があった。他にもできることはあるからと、出勤しようとするノボリとクダリに待ったをかけたのはそれぞれの車両に配属された鉄道員たちで、半ば押し切られる形で休暇取得となったのだ。せっかくならば普段あまり行かない場所へ出掛けようと避暑地として人気のサザナミタウンへ出かけた二人は、たまたまその週イベントとしてカントー地方由来の夏のお祭りをやっているところへ遭遇した。そこでもらったこのウチワという道具、場所はとるが軽いうえ素朴な見た目もクダリは気に入っている。
     クダリは部屋にそのまま備え付けられているロッカーの前で中身がなくくったりとしたリュックを下ろし、制服へと着替えていく。今自分が着てきたシャツたちはハンガーへかけて、スプレータイプの消臭剤を吹きかけてから制服と入れ替え、スチール製の扉を閉めた。見慣れた白くて丸い靴に履き替えたクダリが近付くと、ノボリの鼻を汗ふきシートの香りがくすぐる。

     「今日は何でしょう」
     「これ開けたばっかり、分かる?」

     香りを当てるべく、近付いてきたクダリへノボリは更に顔を寄せる。鼻で空気を吸い込み、爽やかな匂いの正体を思案するように腕を組み顎へ手を当てた。

     「……グレープフルーツ、は、どうです?」
     「んー、違うかな」
     「レモン」
     「惜しい!」
     「…………ライム?」
     「正解!」

     自信がなかったが、伺うようにクダリを見れば最後の答えが合っていたらしい。頭の上でマルを作って笑うクダリが正解だと教えてくれた。この匂い当てゲームは最初、クダリがどうどう? なんて問題を出していたのだが、最近では着替え終わったクダリが隣に立つとノボリが自ら答えを言うようになっていて、もはやこの夏の習慣になっている。ノボリが無香料のものしか買わないとしたら、クダリはシャンプーだったり、ミントだったり、アップル、ピーチなんて日もあった。
     そんなことをしているとすぐに時計の長針はピッタリ一二を指して、始業時間になった。朝一番の二人の仕事は管制室に行くことでも、バトルトレインへ向かうことでもなく、三つ目のロッカーに入っている紙袋を渡すことだ。
     始業時間ピッタリにマスタールームの扉を開けると、ここで一緒に働いているドレディアが正面で待っている。おはようと言うように鳴くドレディアの背の高さまで、ノボリは片膝をついて目を合わせてから「おはようございます」と返す。そうするとドレディアは体の側面にある葉っぱのような腕を前に伸ばし、紙袋を受け取って去っていくのだ。重たいですから気を付けてと、ノボリはいつもドレディアに言ってから手を離す。ノボリはそういう細かな気遣いができる男なのだ。部下に渡したり掲示する書類も粗方目を通し、見逃しそうな部分は赤で線を引いたりするのだ。ちなみにワイシャツの胸ポケットに差しているボールペンのインクは、黒黒黒赤である。ドレディアへ渡した、ギアステーション内の土産物店で購入客に渡している紙袋の一番大きなサイズに入っているのは、前日に着用した二人の制服だ。
     バトルサブウェイでは、ポケモンリーグの規定に沿ったバトルコートのサイズとはいえ極狭い空間の中で戦うことになる。そのためにほんばれなどの天候技や、なみのりなどの広範囲技はトレーナーにも影響があることも多々あり、制服はすぐに汗や泥や塩水などで汚れてしまう。特にクダリはラインが入っているとはいえ真っ白なコートに真っ白なパンツ、汚れればすぐに目立った。だからこそ、クダリの強さが美しい白で際立つことも事実ではあるが。ノボリの制服は黒なのでクダリほどは分からないが、やはり砂埃などの明るい色の汚れはかなり目立つ。ノボリとクダリは顔出しこそ少ないものの、バトルサブウェイの顔であるから強く、カッコよく、美しい佇まいでいなければならない。それは二人のプライドでもあった。とにかくそんな訳で、ロッカーには常に替えの制服が二セットあり、前日の分は必ず洗濯されてローテーションをしている。また不定期的にデザイナーが二人の元を訪れ、寸法や強度などのデータを取って、必要であれば新しい規格で作り直した制服を送ってきたりもする。

     「はい、じゃあノボリいこ」
     「本日も安全運転でお願いします」

     クダリがノボリに向かって手を差し出し、ノボリもその手を取る。朝一番の仕事を終えた二人はマスタールームを後にして、管制室へと向かった。ノボリはこの後朝礼をしなければならないので、目線は手元の書類に落ちている。クダリが手を引いて先導しながら行くのがいつもの流れなのだ。実際ノボリは一人でも、書類を読んでいても人とぶつかることはないのだが、クダリと手を繋げるチャンスをみすみす逃すようなことはしたくない。手袋越しにあまり高くはない体温が伝わってきて、ほのかに温かかった。
     すれ違う職員たちに挨拶をしながら長い脚をキビキビと動かして、途中ポケモンの卵を持った職員に二人して目が釘付けになりつつも大きな扉の前に辿り着けば、クダリがカードキーで解錠する。大きなモニターには現在の各線の運行情報がリアルタイムで送られていて、技術職の職員たちがその前で色々と操作をしている。ノボリとクダリは通常運行業務の方には関わっていないのであまりここに長居することは無い。しかしトレインの整備報告書も通常車両と一緒にここへまとめ置かれているので、始発に一緒に乗る鉄道員たちと端の方でミーティングをさせてもらう。一応バトルサブウェイ専用のミーティングルームもあるにはあるのだが、ここで整備報告書を受け取り、ミーティングルームへ戻って、またトレインへ行くのは少し手間がかかるのだ。それにノボリもクダリも、ここが好きだった。大きなモニターと、たくさんの機械と、それらをブラインドタッチで操っていく職員たち。時折繋がる通信の音、インカムのついたヘッドセットを片耳だけ押さえる姿なんて、何だかとってもカッコいい。ノボリとクダリの中にある少年心がくすぐられてしまう。

     「では皆様、本日も安心安全のバトルサブウェイで参りましょう」
     「なにかあったらすぐ報連相! よろしくね」

     ノボリがつらつらと書類を読み上げながら注意点、連絡事項を伝える間クダリは隣で何をするでもなくにこにこと笑顔を浮かべている。そしてノボリが全て言い終わると最後にクダリがひと言だけ喋って、全員で管制室を後にするのだ。ノボリとクダリを先頭に大体は二人一組で横並びに移動をしつつ、そっちはどうだこっちもこの時期は忙しいなどと話している。大抵はまぁ、シングルの方が混むもので。いつでも質の高いダブルバトルが連戦で楽しめることもあり赤い電車にも各地からトレーナーは挑戦しにやってくるものの、特にスーパーともなればクダリの所まで来られるかはまた別の話なのである。



     さて、今日は定時で上がったクダリに対してノボリは未だ書類と格闘中であった。特に急ぎの書類ではないものの、目に止まったので始めてみたら思ったよりも手間のかかるものだったのだ。クダリは退勤間際に手伝おうかと申し出たが、ノボリがそれを大丈夫だと断って先に帰らせた。マスタールームは他に人がいないのでノボリが帰らなければ他の職員も帰りづらく……というようなことは全くなく、しかしそれ故に早く帰れとつついてくれる人間もいない。まぁその辺りは二人ともいい大人なので、何となくキリのいいところで切り上げ帰るようにしているのだった。健全なバトルには健康な身体あってこそだ。

     ノボリの家はクダリの家とは駅を挟んだ反対方向にある。ノボリとしては、仕事を始めたからといってクダリと離れて住む選択肢はなかったのだが、当のクダリが「一人暮らし、してみたい!」とキラキラしていたから一緒に住むことを無理強いできなかったのだ。全てが自分のためだけの広い家。最初は目新しく楽しかったが、ノボリはすぐにクダリが恋しくなった。毎日一緒にいたのに、今は職場でしか会えない。いや、食事に行こうお泊まりしようと不定期的にお互いの家を行ったり来たりはしているが、この頃からノボリは自分の隣にはクダリがいなくてはと改めて強く思ったのである。がしかし、クダリはクダリでこの一人暮らしを楽しんでいるらしく、やっぱり一緒に住まない? と聞かれることもないまま今に至る。ノボリがひと言、一緒に住みたいと言えばクダリは二つ返事で了承してくれただろうが、そこはクダリの方から言って欲しいという意地にも似た感情があった。
     バスに乗り少し揺られ中心地から遠ざかっていけば、段々光の量も控えめになって穏やかな夜がやってくる。駅からは少し遠いが、バス乗り場はマンションの目の前であるし、交通の便は悪くない。いつも通りバスに乗ろうと駅のロータリーを歩いていれば、少し先に警察と人が集まっていた。乗り場のすぐ近くだ。何も知らないノボリはそのまま近付いて、人混みの一番後ろから顔を覗かせた。ノボリの住むマンション前の停留所の名前を叫ぶ警察の声が聞こえ、火事騒ぎになっているからそこには止まらないと説明している。

     「か、火事…!?」

     ノボリは慌ててスマホを開き、マンション名スペース火事と検索ボックスへ入力した。すぐにライブ映像が出てきて、本当に見覚えのあるマンションが炎に包まれている。バスに乗るのを諦めたノボリはすぐにタクシー乗り場へ向かって、自分はそこの住人だから近くまで連れて行ってくれと行き先を告げた。


     轟々と大きな火柱と、時折コンクリートに亀裂が走った音が響く。ノボリは唖然とした表情で自分の借りている部屋を見上げたそのまま、ライブキャスターでクダリの番号にコールをかけた。

     ”はーい、どうしたのノボリ”
     「あの、クダリ……家が燃えておりますので、泊めてくださいませんか……?」
     ”家が燃えてる!?”
     ”えっ、ちょっ……あっ! あっ! ノボリのマンション、ニュースになってる! 速報だって!”

     クダリはノボリからの着信にすぐにテレビをつけた。ライモンシティのローカルチャンネルへ切り替えた途端、画面には真っ赤に燃えるマンションが映る。消防車と水タイプのポケモンたちが協力して消火作業にあたっているようだが、火の手が衰える様子はない。

     「すごく、昼間のように明るいです……」

     ノボリは心ここに在らずといった様子だ。というのも、ノボリの家には仕事をしながら少しずつ集めていたお気に入りの家具や、溜めていた数年分のバトルログや、クダリと揃いで買ったものたちが全てあったので。

     ”ノ、ノボリ……!”

     ライブキャスター越しでも分かる呆気に取られた様子にクダリはノボリの名前を呼んでみるが、反応は返ってこない。これが仕事であったなら動揺を押し殺し冷静でいられただろうが、生憎と今のノボリはプライベートモードだ。とにかく早くうちへおいでとクダリは何とか気を引きつつ伝え、ノボリ用の布団を用意することにした。
     数十分後、帰りもタクシーを拾いクダリの住むマンションまで到着したノボリは慣れた手付きで部屋の番号を押し、インターホンを鳴らす。ワンコールで出たクダリはすぐにロックを解除し、上がってと短く伝え内線を切った。エレベーターを上がれば仕事帰りの恰好のまま、荷物も少ないノボリが玄関の扉を開けてクダリの名を呼ぶ。

     「ノボリ! 怪我とかない? すっごく心配した」
     「わたくしは……大丈夫です。それよりクダリ、部屋の鍵が開いておりました。不用心ですよ」
     「すぐきみが来るって分かってたからだよ。怒らないで」
     「怒ってなどおりません。しかし万が一何かあったらと思うと……」
     「んん! お説教は後でにして、とにかく上がって」

     さあさあとクダリは半身を開いて奥へ入るように促す。玄関だからとも言われたノボリはそこでようやくクダリの言う通りに部屋へ足を踏み入れた。いつ来ても少しばかり乱雑な部屋である。ノボリが来るまでソファーでくつろいでいたのだろうか、薄手のブランケットがくしゃりとしたまま置かれていた。

     「何か飲む? お腹は空いてる? ノボリは座ってていいよ」

     ケトルでお湯を沸かしながら、粉末タイプのミルクティーをノボリ用のマグカップへ開ける。クダリは沸くまでの間何かあったかなと冷蔵庫を開けるものの、今日は自分だけだと思っていたため買ってきた惣菜も先ほど食べてしまったところだ。

     「ああすみません、わたくしも一緒に」

     クダリの家へ着いてようやく落ち着けたノボリは洗面所でひとつ息を吐き、肩から力を抜いた。ハンカチで手を拭いながらリビングへ戻ってくれば、クダリが何やら冷蔵庫を開けている。ノボリはクダリの家を訪れる際は手土産を欠かしたことがなかったが、今日ばかりはすっかり忘れてマンションの前まで来てしまったもので。タクシーから降り慌てて辺りを見渡したまたま見つけたコンビニで、無いよりマシだとプラボトルのワインとシュークリームを買ったのである。そのコンビニ袋を片手にノボリもキッチンへ入れば、クダリは昨年末の忘年会で当てた有名シェフ監修のレトルトセットから最後のひとつであるビーフシチューのパウチを見つけたところであった。

     「わあ、ノボリお土産買ってきてくれたの? ありがとう」
     「慌てていたのでこんなものしか買えず……すみません」
     「嬉しい。ぼくシュークリーム好きだよ、このワインも後で飲もうね」

     たとえそれがコンビニで買ったものであろうと、ノボリからの気遣いにクダリは笑顔でお礼を伝えた。クダリのこういうところも、ノボリは可愛らしいと思っている。
     ケトルのお湯が沸いたカチッという音がすれば、クダリはマグカップに注いで作ったミルクティーをノボリに差し出した。

     「はい、熱いよ。気をつけて」
     「ありがとうございます」

     何度か息を吹きかけてからノボリはそっとカップのフチへ口をつけた。朝はコーヒー、夜にはミルクティーがクダリの基本のおもてなしである。ノボリが飲むのを横目にクダリはビーフシチューのパウチを開けて、皿に移し電子レンジにかけた。これでレトルトも使ってしまったから、また近いうちに買い足しておこうとクダリは思いつつ、湯気のたつ皿を持ってノボリと共にリビングへ戻った。

     「クダリは夕食は?」
     「ぼく帰ってきてすぐ食べちゃった、だから遠慮しないで。ノボリが持ってきてくれたワイン飲もうかな」

     せっかく一緒にいるのだから、一人で食べるのも味気ないだろうとクダリは空のワイングラスを揺らして見せた。

     「では遠慮なくいただきますね、ありがとうございます」

     ノボリがビーフシチューを食べ始めれば、クダリはワインの注ぎ口にかけられたラベルを点線に沿って剥がし開封した。すかさず正面から手が伸びてきて、入れやすいようグラスを斜めに掲げる。

     「わ、ありがと」
     「いえいえ」

     短いやり取りの後、ノボリの分のグラスにも同じように白ワインを注いでいく。こちらも同じようにアシスト付きだ。
     しばらくは職場の話に花が咲いていたが、ノボリの腹がビーフシチューで満たされた頃クダリはおもむろに切り出した。

     「ノボリ、明日からどうするの?」

     ワインを飲んでいたノボリの動きが止まり、ゆったりとした動作でグラスを下ろした。

     「……一応、保険会社には連絡したのでホテル暮らしでも大丈夫そうですが……正直、慣れない場所で長く過ごすのは避けたいところでございます」

     ノボリは腰のボールホルダーをひとつずつ撫でる。自分がというより、パートナーたちにいらないストレスはかけたくないのだろう。クダリもその気持ちはよく理解できた。

     「そうだよね。……ぼくノボリが来るまで考えてたんだけど、次の家が決まるまで、ぼくの家から通うのはどうかな?」
     「えっ! ……よろしいのですか?」

     咄嗟に大きな声が出てしまったノボリは素早く口を押さえた。このチャンスにどうにかしてクダリと一緒に住む流れにもっていけないかと考えていたが、渡りに船とはまさにこのこと。しかし慌てるのは厳禁と、ひと呼吸置いてから首を傾げて問いかける。

     「うん。ぼくの家、職場から近い。ノボリの家より通うのもラクチン」
     「もちろん、クダリの家から通えれば通勤も楽でしょうが……迷惑にはならないですか?」

     迷惑に思われるなど想像してすらいないノボリだが、一応、念の為の確認だ。こう言って、クダリが「確かに迷惑かも……」なんて言ったことなど一度もないと分かっていて聞くのだから、少々ずるいノボリである。

     「迷惑なんてそんなことない。困った時はお互い様」
     「クダリ……! 本当に助かります、ありがとうございます」
     「ノボリはノボリの生活リズムとか、あると思う。でも二人になるから譲り合っていこうね」
     「もちろんでございます、何かありましたらすぐに言ってくださいね」
     「ノボリもね」
     「分かりました。そしたら次の休みに、一緒に買い物へ行きませんか?」
     「いいけど、ぼくの家のキャパ考えてね?」

     ノボリがそんな、家主に迷惑をかけるほどの大層な買い物をするわけがない。クダリは冗談めかして言ってから、すぐに肩を揺らして笑った。そうしてから立ち上がると、どこにあったかななんて言いながら契約の書類などが入った引き出しを開ける。紙の束を避けると隅の方にキラリと光るものを見つけて、ノボリの方へ戻ってきた。

     「これ、家の鍵。一つノボリに渡しとくね」

     ノボリは手の中の鍵を見つめてから、ぎゅっと握りしめた。一人暮らし用の家なんて探さないぞという決意と共に。



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    タオ_

    DONEノボクダです。
    クダリくんが不意にノボリさんに好きって言っちゃったお話。
    ひとしずく 「ノボリ、すき」

     その日最後のマルチトレインでのバトルを終えた直後、クダリは言ったのだ。ノボリに向かってハッキリと、好き、と。挑戦者もかなり手強い二人組で、正直今までで一番白熱したバトルだったとノボリは思う。ジャッジが「勝者、サブウェイマスター ノボリ・クダリ!」と宣言した瞬間二人は同時に顔を見合わせた。

     ところでわたくしノボリは、それはもうクダリのことが可愛くて可愛くて仕方ないんですね。周りからは似ているだとか、見分けがつかないと言われることばかりですが、わたくしからすればどこが似ているのか! と叫んで差し支えないほどなのです。クダリはとても心の優しい子でございまして、その話も挙げだせばキリがないのですが、例えばつい昨日も大量の書類と戦っているわたくしにコーヒーを淹れてくださったのです。今そんなことで? と思った方がいらっしゃったかも知れません。ですがわたくしの状態を見て淹れてくれるコーヒーは甘さや濃さがその時その時で違いまして、これを心遣いと呼ばずして何と呼ぶのでしょうか。幼い頃から花が綻ぶように笑って、鈴が転がるような声でわたくしを呼ぶのです。そしてクダリといえば、わたくしのやることを何でも、すごいと手を叩いて褒めてくださり、カッコイイと褒めてくださり、さすがノボリ! と褒めてくださるのです。そうです、クダリはわたくしのやること成すこと全て褒めて認めてくださるもので、そんな笑顔の可愛いクダリを大好きにならない選択肢などございませんでした。そう、これは運命、デスティニー。
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    タオ_

    DONEクダノボ風味ブロマンス寄り小説

    ※モブが喋ります、ネームドキャラとの会話もあります。捏造が多分に含まれますのでご注意ください。
    ジャックポット・ジャンキー さあ行きますよクダリ! なんてはしゃいでぼくの手を引く兄さんをあの時ちゃんと止めてれば良かった。兄さんの目の前に積まれていくチップの山と、ギャラリーの視線にクダリは頭が痛くなってきて、溜息を吐くとともにこめかみを押さえたのだった。

     いや、最初のうちはよかったのだ。赤か黒か、奇数か偶数か、ハイかローか。これはどうやるんですか? ノボリが慎ましやかに尋ねるものだから、黒服も初心者向けのルーレットの卓を案内してくれて、イチから丁寧にルールを教えてくれた。飲み込みの早いノボリはすぐにルールを理解して、持っていた二〇万円分のチップをあっという間に倍にした。あとから考えれば、まずそれが良くなかったのかも知れない。倍になった辺りでディーラーから声を掛けられて、今やっている一枚一〇〇〇円のチップから、一枚一万円のチップを使う卓に移動した。しかしそこでもノボリは勝ち続けて、あんた強いから向こうでやっておいでと、今は一枚一〇万円のチップを使っている。
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    recommended works