おおかみノボリとひつじのクダリ あるところに、大きくてそれはそれは広い国がありました。真ん中には空にも届くくらいの大きな山があり、山の周りはひつじたちの住処、山はおおかみたちの住処でした。
ひつじの住処は一年中柔らかい草が生い茂る原っぱがあって、おおかみたちも滅多にそこまでは降りてきませんから、ひつじたちはお喋りを楽しんだり眠くなったら眠ったりして過ごしていました。
おおかみの住処は荒っぽい場所でしたが、毎日駆け回っても飽きることのない土地や、お腹が空いたらすぐ近くのひつじを一匹二匹捕まえてペロッと食べてしまえるので、おおかみたちはこの場所が好きでありました。
「ねぇ、あれはなに?」
ある夜のこと。首を伸ばして、空から落ちてくる光を指し訊ねるひつじがおりました。彼は名前をクダリと言いました。クダリはひつじたちの中でも特に身体が大きかったですが、その優しい笑顔と穏やかな喋り方で皆の人気者でした。
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