Better Half「お疲れさま」と出迎える声は心無しかいつもより優しい。「ただいま」とアルベールが湯浴みの熱の残る手を差し出せば、近くに寄せるように引かれ、そっとベッドへ腰掛けるよう促された。
「随分と功績を残したようだね」
「……思ったより討伐したんだな」
隣に同じく座り、記録紙を手渡すユリウスは何処か自慢気ではあるが声色に幽かな陰を滲ませている。
定期的に星晶獣が湧く島の些か物騒な祭りに一国の騎士団長と復興対策室長が赴くのもおかしな話なのだが、『懇意にしている騎空団の団長のお願い』と『その物騒な催しによって島は利益を得ている』とあらば無視する訳にもいかまい。
「一先ず、区切りの期間に入ったようだね。星晶獣が現れる期間の中にも幾らかの波はあるようだし、明日は暫しの暇かな?」
「……それで、ユリウス」
アルベールはいつの間にか腰へと回り、ゆるゆると指先を這わせる彼の手首を掴む。
「……俺を休ませない気か?」
睨み付ける柘榴石の瞳を見据えて、ユリウスは喉から息を漏らした。隙を見せたのは態とだろうが、その意図を正しく読み取ったことに対しては歓喜を抑えるつもりはないらしい。
「……前回、同じ様に甘えてきたのは誰だったかな? これくらいでへばるような君じゃないだろう?」
するりと拘束から抜けた手がアルベールの髪を撫で頬に触れる。そのまま重ねられた唇は吐息を残して耳を擽った。
「大丈夫。負担は掛けない程度に目一杯蕩かすに過ぎないよ」