酔い覚ましのプロポーズある日の夜、呪術師の繁忙期ではない時期の居酒屋で…
「夏油さんのばぁかぁっ!」
がぁんっと半分に減っている大ジョッキのカルピスハイを叩きつける彼女、目の前では日本酒を水のように飲んでいる硝子と彼女に水を差し出す悟
「ほーら、お水飲まないと」
「うう…」
「お酒は一旦預かるからね」
瞬時に水に交換させられチビチビ水を飲み出す彼女、今このようになってる原因はある男のせいなのだが周りは分かってるので飲ませている
「悟さんが優しい…結婚しよ」
「僕星耶の奥さんだからダメ」
「人妻ぁあ!!」
厄介な酔っ払いになってるがそれを軽く相手しながら悟は水を飲ませた後緑茶を出す
「はーい、次はこれね」
「お酒じゃない…」
「これ以上飲んだら困るのはキミだよ?」
「うう…ママぁ」
彼女に呼ばれるも悟はサラダをもぐもぐ頬張っている、個室なのである程度騒いでも問題はない
「あのクズは来るの?」
「来るのかなぁ?星耶は来るよ!」
「来てもらわないと酔っ払ったコイツが自宅に自力で帰れないからな」
「この前確かハチ公の前でお辞儀してたねぇ」
酒豪の硝子とまではいかないがそこそこ飲める彼女なのだがこのようにストッパーが外れたかのように飲んだ日には自力では帰れなく何かしらの伝説を残してるのが多々あり帰る際は誰かが送るのが決まりになっていた
「遅くなっ…できあがってるなぁ」
個室の扉を開けて入ってきた星耶、目の前に広がる現状に苦笑いをする
「おー、遅いぞ源」
「お疲れ様星耶!ご飯取っておいたから座って!」
酔っ払いテーブルに突っ伏してる彼女を他所に硝子は星耶に飲み物のメニュー表を渡し悟は小皿に取り置きしてた料理を出す
「緑茶にするかな…」
「分かった〜!すみませーん、緑茶2つお願いしまーす!」
おしぼりで手を拭く星耶、いつも以上に酔ってる彼女を見て
「大丈夫か?」
「パァパァ〜!あたしはどうしたらいいだろ〜!!」
「そんなデカイ娘は居ない」
「ちくしょぉおお!!」
店員が持ってきた緑茶を飲みながらある程度何があったのかを想像しながら考え
「毎回だけども本人にちゃんと言ったのか?」
「うぐぅ…」
「星耶…」
「お前そういう所がクズだな」
「本人の為だろうが」
彼女は悟達の一個下の術師で彼らの同期になる夏油傑とお付き合いをして早10年と少しで結婚も視野に入ってるはずなのだろうが中々結婚に行かない
「あたしはぁ!しっかり話し合いたいんです!でも〜、夏油さんがぁ!!」
「ダメだ話がつかないな」
「酔ってるんだから仕方ないだろ」
「傑も何でちゃんと話さないんだろーねー」
首を傾げながらお茶をチビチビ飲む悟、さりげなく星耶にもたれ掛かりイチャイチャしていて彼女は突っ伏したまま頭だけ上げて
「私に聞かないでください〜!そしてイチャイチャしないでください!ありがとうございますご褒美です!」
「どっちなんだよ」
完全な酔っ払いの対処に追われながらも和気あいあいとしていく内に彼女は寝落ちた
「寝たな」
「ね〜、今日まで出張続きみたいだったからねぇ」
「だな…でここまで好きな女が言ってるけどどうするんだ傑?」
実は少し前にやって来てた傑、扉の近くで話を聞いていて入るタイミングを考えてた
「傑、ちょうど良かった!ほら送ってあげて!」
「そうだな料金は後でお前に請求するか」
「そうだね…色々申し訳ない」
「なら私は飲ませて貰うから」
酒豪の硝子がいつ頼んだのだろうかの日本酒の一升瓶を置いていて手をヒラヒラさせる
「では失礼するよ…よいしょっ」
突っ伏して寝てる彼女をおぶって店を出る傑、その後ろ姿を見て
「源、お前どっちに賭ける?」
「明日彼女が照れながら叫びながら任務するで」
「なら私はお前の嫁に相談にしに行くで」
「それで賭けるものは?」
「五条の新作スイーツ」
「よし」
「んぅ?」
デザートのバスクチーズケーキを頬張ってる悟を他所に悪い賭け事をしてる大人が居た…
彼女をおぶって歩いてる傑、繁華街故その様に歩いてても違和感はない
「はぁ…お酒は程々にと言ったんだけどな」
お酒は硝子や星耶、七海のような酒豪連中に比べれば人並みだが呑める彼女なのだが度々呑みすぎて潰れてしまう
「だけども私のせいでこんなに呑んだってことだな」
「そ〜ですよ〜!」
突然ムクっと顔を上げて返事をする彼女、傑の耳元だったので
「うわっ…!」
「げと〜さんが〜!もう何年ですかぁ!?私それとなーくアピールはしてましたよぉ!?」
傑は分かっていた、それでも見て見ぬふりをした…現状は落ち着いてる呪術界、でもそれでもお互い呪術師をしていて今日明日どうなるか分からない傑は臆病になっていた彼女を本当に大切に想ってるから…
「あぁ、分かってるよ」
「だったらぁ!何で!」
「怖いんだよ…キミを失うかもしれない未来ね」
自分がどこまで助けられ助けられないのか、それを学生時代嫌という程思い知った、だからこそこの手で守れる彼女を守れなかったら?そんな悪い考えばかりが傑にはあった
「私が夏油さん…傑さんを守りますよぉ!準一級だけどやる時はやるよぉ!!」
おー!と右腕を上げてケラケラ笑う彼女、傑はぽかんとして立ち止まる
「(ああそうだ、彼女はこういう子でそれで私は…)」
クスッと笑い傑はまた歩き
「そうだね…うん、結婚しようか」
シンプルなプロポーズだ、だけどもここまで待たせたのだからこれでいい
「け…やったー!!!男に二言はないですよー!!」
「はいはい」
それから帰るまでテンションの高かった彼女、傑のマンションに着く頃には寝てしまっていてベッドに寝かせる時に傑はその寝顔を見て何処か安心した表情をしていた
そしてその翌日、目が覚めた彼女は自分の左薬指にある指輪を見て目をかっぴらいて
「あ…え?」
驚いてる彼女、扉が開いて傑が入ってくる
「起きたんだおはよう」
「おおおオハヨウゴザイマス」
「カタコトになってるよ?」
「何故私は指輪を?」
指輪を指差す彼女に傑はニッコリといつもの笑みを浮かべ
「昨日プロポーズしたから、あぁ婚姻届は寝ぼけてたキミに書いて貰って深夜に出てきたから」
傑はやる時は即実行である、彼女は声にならない叫びを上げて部屋を飛び出して隣の癒しの特級呪術師の居るお宅の扉を叩いた
「助けて悟さぁぁああん!!!」
こんな2人だが幸せな未来は確定だ…そう…それが分かるのは2日後の事だ
終わり