無題私には小学から中学までずっと同じクラスの男の子が居た、夏油傑くん、女の子に優しいのにどこかズレててそれでも誰かの為にという人で身長も高くて顔もかっこよくて運動もできて勉強もできるからモテモテだった。
そんな彼の秘密を私は知ってる、彼は他の人には見えないモノが見えて飲み込めるというのを…
「あれ?傑くん?」
高校3年の夏、暑くてバイト行きたくないけども両親に専門学校進学したい条件で学費とかは出すから部屋代は稼ぎなさいと言われて稼がないといけない、そんな日に私は傑くんと再会した。
「久しぶり!」
「あぁ…久しぶりだね」
僅かな年数で傑くんはすごい大人になっていた、私が近くに寄って話せば傑くんは昔と変わらなく話してくれる。
「どう?専門学校に行く夢叶えられそう?」
「どうにかバイトして頑張ってるよ〜」
「そうなんだ」
傑くんのお母さんとうちのお母さんが仲良くて私の夢を知ってる傑くんは相変わらずの話上手聞き上手で私は色んな話をした。
「ねぇねぇ、傑くんはどう?」
「え?」
「いや…なんと言うかさ元気なさそうだなぁって思って?」
ハッキリとは分からないけども傑くんの顔がどこか疲れてる、傑くんの悪い癖は分かっていてそれが傑くんは無意識だからこうやって聞く。
傑くんは私に言われて驚いて目を開いて数秒固まる…
「す、傑くん?」
見上げながら手を目の前で振って反応を確認する、傑くんは少しフリーズしてたみたいで少ししたら右手を顔に当てて。
「私元気なさそうだった?」
そう聞いてきて私は頷く。
「うん、傑くん分かりにくいけどでも今疲れてるって顔に出てるよ」
私は素直に言った、傑くんには遠回しに言うよりもハッキリと言ってあげるのがいい。
傑くんは少しづつ笑い始める。
「あはは…はははっ!まさかキミが言ってくれるなんて…!」
傑くんの言ってる言葉はよく分からないが、きっと東京に行ってから色んな事があったのだろう、それを1人で抱えてきっと疲れてしまったのだろう。
「傑くん、もしかして黒い玉?飲み込んでるの辛かった?」
「え?」
「あー、あのね私ね傑くんがオバケをモンスターボールみたいにしてごっくんする所見たんだ」
あの時見た傑くんがオバケを玉にして飲み込んだあれを身振り手振りで再現して言うと傑くんは目をさっきよりも見開いて…
「見えてたのかい?」
「うん、でも私の家そういうのからっきしだから言えなくて…」
うちの家は平凡な一般家庭でお父さんもお母さんもそこら辺のは見えないし信じないから話しても無駄なのだと分かっていたからこれまで誰にも話してこなかった。
「最近は変な技?的なのも使えるんだ〜、ほら!」
手のひらにちゃんぷんっと水を溜めて傑くんのボールくらいのサイズにして浮かせてみる、すると傑くんは私の肩に手を乗せる。
「す、傑くん…?」
「そうか…そうだったのか…私はまだ…!」
傑くんは私を思いっきり抱きしめた、え?何で抱きしめられてるの!?
「す、傑くん!?ちょっと!!人来るかもしれない!!」
「離してたまるものか…!キミは猿じゃなかった…私を救ってくれる存在だった…!」
私の目の前に居るのは傑くんなのか?突然その言葉が脳裏を過ぎった。
「ああ、此処に帰ってきたのは決別する為でもあったのだがキミという存在を手に入れれる私は幸せものだ…!」
彼は今何を言っているのだろう?決別?何と決別するの?
「そうだな、あの子たちにも母親は必要だキミは子ども好きだったね」
確かに子どもは好きだ、保育士になりたいんだから…
「それなら…一緒に行こう」
そう言う傑くん、私はその言葉を最後に意識を失った。
次に目を覚ましたら見慣れない場所で布団に寝かされていて起き上がって立とうと思ったら…
「おはよう、長い事眠らせていてすまないね」
袈裟姿をした傑くんが歩いてきて私の左手を取ってキスをした
「キミは今日から私のモノだ…離しはしないよ…永遠にね」
どす黒い何かを持った傑くん、ああ私は囚われた…
終わり