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    囲(かこ)

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    囲(かこ)

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    ガとジェが飲んで喋ってるだけのお話。
    ⚠️女性の話を二人がしています。飲みの席の下世話な会話です。女性経験の話は無いです。ジェが酷いことを言ってます。ガiルク←ジェ?何でも許せる方向け。
    誕プレに全然間に合わないしもう省略しようとしてたとこも書いたれ!と書き始めたら長くなって打ち震えています。これが誕プレではない。決して。

    自覚ガヤガヤと煩い酒場の奥、喧騒から外れたカウンターの一番端の席。そこに見慣れた後ろ姿を発見したガイはその背へ足取り軽く近付いて行った。
    「よ、ダンナ。隣り良い?」
    ロックグラス片手に視線だけを寄越したジェイドは来訪者の登場を明らかに歓迎していない様子だ。だがそんな視線に物怖じするガイでは無い。至極当然のように彼の隣りに腰掛けたガイは慣れた調子でマスターに手を振った。
    「マスター、俺にも同じものを」
    「かしこまりました」
    よく磨かれたグラスに丸い氷が一つ、澄んだ音を立てて落とされる。琥珀色のウイスキーがトクトクと注がれて、黒いコースターと共にガイの前に置かれた。
    「乾杯、はする気無いか」
    「する必要も無いでしょう。我々の間に祝福を祈る共通の何かがあるとお思いですか?」
    「いやあるだろ、世界とか未来とかいくらでも」
    「範囲が広すぎでしょう」
    「ハハ、そーだなあ」
    グラスに口をつけながらガイは考える素振りを見せた。乾杯という単語を出しておきながら普通に飲み始めた目の前の男に釈然としないものを感じながらジェイドもグラスを傾ける。
    「もっと近場で言えばルーク、とか」
    何故かウインクしながらおどけた調子でそう言われ、ジェイドは不味い酒でも飲まされたかのような顔をした。
    「……彼の祝福を祈るような物好きは貴方くらいではありませんか?」
    「かー、言うねぇダンナも」
    ガイはカラカラ笑いながら、お通しに出されたピスタチオの殻を割った。「お、これうまい」と呟いてあっという間に全部食べてしまったガイはメニューも見ずに「しょっぱくて歯応えあるヤツ、ここの名産品があると嬉しいな」と適当な注文をマスターにつけている。
    一切減っていない自分の皿に目を落としジェイドはそれをガイのほうに寄せた。
    「手は付けていないのですが召し上がりますか?」
    「おっ、嬉しー!これ美味かったぞ」
    「夜遅くに食べると翌日もたれるんですよ。年ですかねえ」
    「とか何とか言ってそれ何杯目だ~?」
    「さあ、酔っているので忘れてしまいました」
    「嘘つけ」
    不思議だ。
    ガイと話していると自分がまともな会話をしている気がしてくる。軽口、フランクな会話、この酒場のあちこちで交わされているとりとめのない無意味なやりとり。酔った上での妄言、暴言、それらは明日になれば誰も覚えてなどいない。記憶に残らない。無駄、だ。人生の無駄。余剰。余白。それが余暇であって、無駄では無いのだと昔偉そうに諭されたことがあった。相手は一国の皇帝なので偉いのは当然なのだが。
    「ジェイド、何かまた小難しいこと考えてるだろ」
    「苦労人なもので。悩みが尽きないんですよ」
    「悩みねえ、」
    はあ、とガイが大袈裟に溜め息をつく。あからさま過ぎるその態度にジェイドは思わずその顔をまじまじと見つめてしまった。そうして改めて相席を許したことを後悔し始めた。
    「やっと、やっとさあ、この話題を振れそうなヤツに出会えて俺は嬉しいんだよジェイド」
    「さて、そろそろ宿に戻るとしましょうかね」
    「マスターこいつにもおかわり頂戴」
    席を立とうとしたジェイドを力ずくで押さえつけながらガイが笑顔で手を上げる。訂正する間も無く目の前にグラスが追加された。マスターはいつの間にかガイに買収されていたらしい。頼んでもいない料理までカウンターに並び始め(豆腐まである)、ジェイドは仕方無く腰を落ち着けた。
    「手短に頼みますよ」
    「じゃあ単刀直入に聞く」
    ガイの瞳がキラキラと揺れていた。酔いやライトのせいではない、期待によって、だ。ジェイドの眉間の皺が余計に深くなった。だが、ガイの次の一言で眉間の皺は最大深度を記録してしまう。
    「ジェイドは女性とヤったことあるよな?」
    「………………はあ?」
    最大限の軽蔑を込めたつもりだが、今のガイには効かなかった。呆れ返っているジェイドのことなど気にも留めずガイはすっかり自分の世界に浸っている。
    「俺さ、女性に触れないだろ?でも普通にそういう欲求はあるの。興味はあるの。けど今までそういう話題できるヤツが周りにいなかったんだよ。なあ、なあ!どんな感じ、ほらその、アレとかソレとか……って言わせんなーっつーの!やべえあちぃ~」
    「…………」
    ぱたぱたと手で顔を扇ぐガイに一瞬で膨大な量の嫌味が頭を巡ったジェイドだったが、どれから口に出すべきか迷うのが面倒になり一番本音に近いところをつい溢してしまった。
    「排泄器官同士を擦り合わせるなんて気色悪くありませんか」
    言った途端、その場の空気が固まった。ガイは笑顔を顔に貼り付けたままだったし、グラスを磨くマスターの手も一瞬止まった。だがそこはプロと言うべきかすぐに平静さを取り戻しカウンターにいる他の客に話しかけるという名目でさりげなく二人から離れていった。
    「……ええと、」
    一方ガイはいまだに混乱の渦の中にいた。
    「ジェイドさん?」
    「何ですか」
    ジェイドは冷静だった。先程爆弾発言をした当事者とは思えない冷静さだった。自分が爆弾発言をしたという自覚が全く無い。酔っている様子も無い。末期症状だ。
    「排泄器官じゃなくて生殖器官だろ……?」
    「同じことですよ。男性は排尿も射精も同じ経路を使用しますし、女性の尿道と膣口は至近距離にあるでしょう。そんなところを体液まみれにして擦り合わせるなんて考えるだけでぞっとしませんか?」
    あなたもそう思うでしょうとでも言わんばかりのジェイドの口調にようやくガイの笑顔が引きつり、そして消えた。
    「……あんたそれ本気で言ってるのか?」
    「冗談に聞こえましたか?」
    「冗談に聞こえないから聞いてんだっつーの……てーことはまさか天下の帝国陸軍大佐ともあろう御方が花街で遊んだ経験のひとつも無い……どころかまるっきり未経験、てヤツ?」
    「私に何を期待していたのか知りませんがそういうことです」
    おそるおそる聞いたガイに対してジェイドの回答はあっさりしたものだった。
    「だあーーーっ!!!」
    ガン、と叩いたカウンターにガイが突っ伏す。その横にそっとマスターが新しいグラスを置いた。手慣れているマスターについ拍手のひとつでも送りたくなるくらいだ。勿論皮肉だが。
    「何だよジェイドなら縋る女も冷たくあしらって一夜の関係を築きまくってると思ったのによ~数々の武勇伝が聞けるって期待してたのに……」
    「あなたは私のことを何だと思っているのですか」
    ジェイドはひとつ溜め息を吐いてからグラスを傾けた。溶けて随分といびつな形になった氷をくるくると回してから、またグラスに唇をつける。隣りからはスンと鼻を啜る音まで聞こえてきた。こんなことくらいで泣くんじゃありませんよ。
    「そんな話をするために私を捕まえたんですか」
    「だってこんな話できるやつ今まで周りにいなかったから……」
    いまだに立ち直れていないガイはカウンターに額をぐりぐりと押し付けたままでいる。ほとんど飲んでいないはずだがよっぽどガイのほうが酔っぱらっているように見えた。
    「人選ミスですねえ」
    落ち込んでいるガイを余所にジェイドは豆腐をつついている。どうやら出されたものはきちんと食べるタイプだったらしい。
    「全くだ……俺の目がどーかしてた」
    ようやく起き上がったガイはもう気を取り直したのか魚介のフリッターをもぐもぐと頬張り始めた。
    「それにしても気色悪いとかぞっとするとか、ジェイドってそういう欲求ねーの?」
    「そういうとは?性欲のことですか?」
    「しっ、声がでけーよ!」
    今更周囲を気にし出したガイにジェイドが白い目を向ける。だがいちいち指摘されるのも面倒なので、ひそひそ声になったガイに合わせてジェイドも一段声を潜めた。
    「他人としたいと思ったことはありませんね」
    「げ。マジか。じゃあいつも右手の世話になってるってわけ?空しくねーか?」
    「空しいですねえ。性欲は無くても溜まるものは溜まりますから、それを吐き出すだけの作業は本当に空しい。排泄と同じくもっと簡単に排出できれば良いのですが」
    「……あんたと喋ってると疲れるな」
    「それはどうも。では宿に戻ってゆっくりお休みください」
    「出されたモン食わずに帰れるかよ……酒も飯もうまいのになぁ、」
    酒の肴がなあとぼやきながら軟骨を咀嚼しているガイを見て、さすがに食事中に排泄という言葉は良くなかったかとジェイドは見当違いの反省をした。
    「女性が苦手なあなたが妄想の中ではいつでも女性とセックスできているのですか?」
    「なっ、何だよ急にっ。あたかも俺がいつでもそーゆー妄想ばっかしてるように言うなよ!」
    急にも何もそういう話題を振ってきたのはそちらでしょう、と照れ出したガイにジェイドは冷ややかな視線を向ける。あー、とかうー、とか言いながらオリーブの実をフォークでちょいちょいつつき始めたガイにいちいち突っ込むのも面倒になってきて、ジェイドは干し葡萄を房からひとつずつ外す作業に集中することにした。
    ふたりの間にしばらく沈黙が降りる。端から見れば奇妙なふたりだった。ふたりとも食べるでもなく飲むでもなく黙って同じ動作を繰り返しているだけだ。マスターが少しだけ心配げな視線を寄越したがふたりに声をかけるようなことは無かった。
    それからしばらくして、干し葡萄の実を全て外し終えたジェイドがグラスを持ち上げたところでやっとガイが口を開いた。
    「いや、その……やっぱり実体験が無いし、女性に触ったことすら無いからさ、全然うまいこと考えらんなくて、だからそのへん教えて欲しいなと思ったわけなんだ……ハハ、情けないだろ」
    つついた跡がたくさんついたオリーブの実をようやくフォークに刺して口に運んだガイにつられるようにジェイドも干し葡萄を摘まんだ。そういえばここに来てから初めて食べ物を口にしたなとどうでも良いことに気付く。
    「別に情けないとは思いませんがね。紙上に兵を談ず、と言って理論や知識だけでは実戦には何の役にも立たないという故事もあるくらいですから」
    「兵法と閨事を同列に語るなよ~」
    「おや、男女の間にも相当な駆け引きがあると聞いていますが?」
    「はーやだやだ、純粋な恋がしたい」
    「そうですねー、厄介事は御免被りたいものです。端から見ている分にはいくらでも拗れて欲しいですが」
    「ハハ、良い性格してるよホント」
    やっといつものペースで酒を煽り出したガイは「おかわり~」とマスターに気さくに話しかけている。その横顔を遠巻きに眺めている女性がいることにはどうやら気付いていないらしい。
    気付いていたとしてもガイにはどうすることもできないのだが。ジェイドは溜め息をつく代わりにグラスの中身を飲み干して空になったそれをマスターに向けて少しだけ掲げて見せた。
    「なら私と同じく空しい夜をお過ごしでしょう。かわいそうに」
    空しさの方向性は真逆でしょうが。
    効率的な処理の仕方があったら教えて欲しいくらいだ。趣味と実益を兼ねてそういった使用目的の音機関を自作していたり……と邪推したところで、ガイがいやあー、と声を上げた。見れば酔いのせいで少し顔が赤くなっている。
    「別に空しい夜は過ごしてないっつーか、」
    「おや、一人でもそれなりにお楽しみでしたか」
    ジェイドはさもどうでも良いと言わんばかりの口調で相槌を打った。
    「いや一人で楽しんでるわけじゃなくて、ルークと、」
    奥歯でもきゅもきゅ蛸を噛みながらそう言いかけてガイは口を閉ざした。あからさまにしまったという顔をしている。
    「……ルーク?何故今彼の名前が出てくるのです?」
    マスターが新しい酒を用意したことに視界の端で気付いたジェイドは空になったグラスをマスターへと差し出した。代わりに受け取った新しいグラスは思いの外ひやりと手に吸い付いてきてその冷たさに驚く。どうやら思ったより酔いが回っているらしい。
    「あー、なんつーかその、成り行きで一緒に、するようになったっつーかなんつーか、」
    「…………使用人がご主人様にご奉仕しているということですか?はあ、まあ、他人の手を借りたほうが効率的ではあるかもしれませんねえ」
    「言い方、」
    ぽりぽりと頬を掻いたガイはいたずらがバレた子どものような顔で笑った。ジェイドは相変わらず冷めきった顔を崩さない。
    「しかしよくまあご主人様のためとは言え自分の貞操を捨てられますね。快感は得られるとは聞いたことがありますが突っ込まれるのに抵抗は無かったんですか?」
    「──は?」
    「ん?」
    「え?」
    「はい?」
    交互に首を捻ってから、ガイは額に手を当てて項垂れた。
    「ちょっと待て、どーして俺が抱かれてることになってるんだ」
    「それが使用人の務めというものでしょう」
    「そうかあ?」
    「知りませんけどね」
    訝しげな目を向けるガイに対して肩を竦めてそう茶化したジェイドはグラスの縁で唇を湿らせた。
    「失礼、早合点でした。お二人で仲良く抜き合っているという訳ですね」
    「だから言い方、つーか……」
    潜めていた声をもう一段低くして、ガイはジェイドだけに聞こえるように囁いた。わざわざ口元を手で覆っていたので他の誰の耳にもその言葉は届かなかっただろう。

    「俺がルークを抱いてんの」

    煩い酒場の中で何故かはっきりと届いたその言葉。
    ジェイドの手の平の中のグラスが、カラン、と澄んだ音をひとつ立てた。





    ガヤガヤと煩い酒場の奥、喧騒から外れたカウンターの一番端の席。一人静かにグラスを傾ける男がいた。隣りの席には空のグラスだけが残されている。先程まで誰かがいたのだろう。
    「今夜は冷えますよ」
    空のグラスを片付けながらマスターが声をかけると、男はニコリと笑ってカウンターに紙幣を置いた。
    「そうですね、外に出たらこの酔いも醒めるでしょうか」
    「きっと」
    マスターの返答を聞いて、男は愉快そうに眼鏡を押し上げた。
    「ごちそうさまでした」
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    囲(かこ)

    DONEガイルクとジェイルクが美味しいよ~というお話。
    ガイがカースロットを受けて操られていて、なおかつ「ルークを殺したいほど憎んでる」ことが発覚したけど詳しい事情は分からない、という状態でのお話です。はい。そんな時空存在しません。都合の良い世界線を勝手に作り上げました。やったね!
    カーテンだけで仕切られてる宿屋のベッド、なんかエッ(文章はここで途切れている)
    牽制仕切りのカーテンの合間を縫って誰かが入ってきた気配がする。続けてギシ、とベッドが軋む音がしてルークは目を開いた。寝ぼけまなこで視線を巡らせれば、そこにはベッドに片膝を突いてこちらを見下ろすガイの姿があった。
    「ガイ……?どした、?」
    眠たい目をこすりながら起き上がろうとするが、その前にガイの手が伸びてきて肩を押さえつけられてしまった。ルークの身体はまたシーツの上に逆戻り、馬乗りになった親友の姿が徐々に近付いてくる。暗くてよく見えなかった彼の瞳は間近で見るとどこか虚ろで、そこでようやくルークは今の状況に危機感を覚えた。
    (まさか、操られて……ッ?!)
    「ガイッ?」
    もう一度、しっかりと目を見て名前を呼ぶ。けれど親友からの返答は無く、頸動脈をなぞり上げるその指先がルークの不安を一気に煽った。
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