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    mitulove_uno

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    mitulove_uno

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    刀台Webオンリー落園の鳥の展示小説です。
    スタンピ刀台現パロホスト兄で、殆どモブ視点です。

    ナンバーワン 昼と見間違うばかりにギラギラとしたネオンが輝く夜の街。「可愛い子沢山いますよ」「寄っていきませんか?」と店に呼び込む声が街中に響いている。
     彼女はどの声にも耳を貸さずに目的地まで真っ直ぐに歩いている。彼女は美しかったので歩くだけでぜひお店で働いてくれとそこら中から声が掛かかる。それらを全て鼻で笑い飛ばし歩みを止めることはなかった。
     彼女は一途なのだ。簡単に靡く女だとは思わないでほしい。彼以外興味なんてない。
     目的地に着いてから、逸る心を抑えようと一度深呼吸をした。余裕のない女なんてみっともない。彼に会うのであればいつも完璧な自分でいないといけない。
     扉に手をかけゆっくりと開いていく。

    「いらっしゃいませ!」
     お店の名前は『PARADISE』。ホストクラブである。文字通り一歩踏み入れればそこは楽園だ。

    「ナイヴズはいるかしら?」
    「いつもありがとうございます!ちょうど空いてますよ!」
     元気な黒服の声に案内される。顔を覚えられるほど通い慣れた店。彼女の目的はここのNo.1ホストであるナイヴズだ。人気の彼にすぐ会うことができるなんてやはり彼女とナイヴズは運命なのだ。
    「ナイヴズ!」
    「ああ、よく来たな」
     ナイヴズの名前を呼ぶと、低く落ち着いた声が返ってくる。端正な顔立ちで、地毛だという薄目の色をした金髪。肉体はしっかりと鍛えられ、スーツの上からでも厚い胸板が見て取れた。
    「ナイヴズは連絡してもいつも返事をしてくれないわね」
     自分の現状を楽しく話していた彼女は内容が一段落ついた所で、わざと少しすねたような声を出して話題を変える。
     自分の客に再び来店してもらうために、営業LINEと呼ばれるそれはホストにとって大事なものである。LINEで連絡をとり、客のご機嫌もとる。
     しかしナイヴズはNo.1ホストにも関わらず営業LINEというものを一切しないのである。ナイヴズのLINEは存在しているし、連絡もできる。ただ、既読はつくが返信は一切していない。
     初めて既読無視を知ったときは怒ったものだが、今ではコミュニケーションのひとつとなっている。
     彼女はナイヴズがLINEを返信しない理由を知ってて毎回この話題を出すのだ。
    「すまないな。返信してしまうと会いたくなってしまうだろう。キミの都合も考えずに会いたいとただひたすらに送ってしまいそうになるから嫌なんだ」
    「ナイヴズ……!」
     そうナイヴズは彼女に会いたくなってしまうから、連絡も返信もできないのである。本当は彼女からの連絡も見るのが辛い。すぐにでも会いたいのを我慢していると耳元で優しく囁かれて、ドキドキと心臓が高鳴った。
     いつもクールなナイヴズがそんな可愛らしい理由で連絡をとってこないなんて嬉しくてたまらない。いつだって会いたいと言ってくれていいのに、ナイヴズは彼女のことを考えて連絡しないでいてくれるのだ。
     ナイヴズは分かっている。一言ナイヴズが会いたいと言えば彼女が何を放りだしてでも会いに来てしまうと。ナイヴズは客を金としか思っていないホストとは違い、本当に彼女のことを考えてくれている。
     自分だけに微笑んでくれる。自分はナイヴズの特別なのだと彼女は確信していた。

    ◇◇◇

     ナイヴズさんまたやってんなー。と黒服の彼は思った。現在ナイヴズの隣にいるのは常連で、容姿が美しく金も持っている太客だ。普通のホストであれば絶対に逃がしたくない存在だろう。
     黒服はナイヴズとポツポツと話をする程度の仲だ。それだけでもこの店で一番に近いくらいの仲だというので驚きだ。
     ナイヴズは基本的に会話をしない。あっても業務連絡程度の会話だ。普通そんな態度をとったら先輩ホストに殴られてもおかしくはないのだが、ナイヴズの圧倒的なカリスマ性がそれを可能にしている。
     ナイヴズだからなですまされてしまうのだ。クールで孤高の存在であるナイヴズ。自分達とは次元が違うのだと皆納得してしまう。
     黒服がナイヴズと会話をするようになったのは黒服に弟がいて可愛がっていることをナイヴズが知ったことがきっかけだ。
     ナイヴズにも弟がいてそれはそれは可愛がり溺愛しているという。初めは自分と同じく年の離れた弟なのだろうと思ったがなんと双子の弟だという。
     詳しくは知らないがナイヴズがホストになった理由も弟が関係しているらしい。
     ナイヴズは客に一切興味がない。ナイヴズの頭の中は弟でいっぱいということを黒服は知っている。珍しく客に微笑みかけていたナイヴズにあの客が気に入ったのか聞いたことがあった。
     返ってきた答えが「弟が作ってくれる夕飯が何か考えていた」である。
     つまり目の前の客のことなど一切無視で、弟のことを思い出して笑っていたのである。
     ブラコン怖いなと黒服は思ったが彼は自分に関わりがないことはあまり気にしないたちなので「それは楽しみですね!」と元気に笑って返した。
     ナイヴズが客に微笑んでいる時は100%弟のことを考えている。
     営業LINEで連絡しないのも客に興味がないからだ。かろうじで既読だけはつけているようだが、そこにはなんの感情も乗ってない。どの客もLINEのことを聞いて、会いたくなるからだと返されて自分は特別なのだとあっさり勘違いする。
     イケメンって得だし、あっさり信じる女性って怖い。もうかかっているようなものだけど、詐欺とかに気をつけてほしい。
     ナイヴズにとってホストは天職だろう。客に恋することは全くなく、酒を水のようにのみ酔いもしない。自分だけが特別だと思わせて金を湯水のごとく使わせる。ナイヴズは金にも興味がないので客から無理矢理金を落とさせるようなことはしない。客が勝手に落とす。
     宗教みたいだなと黒服は思う。誰も彼もナイヴズに恋をして盲目的に慕っている。
    「気付かなければ皆幸せだな」
     当の本人であるナイヴズは弟のことしか考えていない。

    ◇◇◇

    「ナイ、お帰りなさい!」
    「ただいま。ヴァッシュ起きていたのか」
     玄関を開けるとナイヴズの何よりも愛おしい存在である弟が駆け寄ってきた。ナイヴズが帰宅したのは夜が明ける少し前の時間だ。いくらヴァッシュが本日休みだからといって、まだ活動し始めるのには早い時間である。
    「少し前に目が覚めたんだけど、ナイが帰ってきたのが分かって嬉しくなっちゃった」
    「ヴァッシュ……!」
     すぐにヴァッシュを抱きしめたいがタバコや香水の臭いをヴァッシュに移すわけにはいかない。自分以外のものの臭いをまとったヴァッシュなんて見た日には嫉妬で狂ってしまう。
    「まだ眠いだろう、一緒に寝よう。シャワーを浴びてくるから待ってろ」
    「うん!あ、そうだお腹すいてる?ナイがシャワー浴びてる間に何か作ろうか?」
    「ヴァッシュが一緒に食べるなら作って欲しい。ヴァッシュの料理はどれも美味しいから楽しみだ」
     ナイヴズがそう言えばヴァッシュは照れくさそうに笑った。
    「ナイの作った料理の方が美味しいって分かっているくせに」
    「何を言っている。愛するものの作った料理が一番に決まっているだろう」
    「ナイは!すぐそういうこと言う!」
     顔を真っ赤にして拗ねたように怒るヴァッシュはあまりにも可愛い。一緒に寝るだけのつもりだったが少し付き合ってもらってもいいだろうか。合わせているので当然だが、本日は二人とも休みだ。
     シャワーをすぐに浴びて、たっぷりヴァッシュを愛させてもらおう。
     ナイヴズが興味を持ち愛するものは、弟であるヴァッシュただ一人だ。
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