春コミ無配展示 2月22日は猫の日らしい。にゃんにゃんにゃんの日だなんて可愛らしい名前で呼ばれたりもするみたいだけども。
というわけで、せっかくなのでそれにかこつけていちゃつきたいと思うのは間違っているだろうか。可愛い恋人の可愛い姿を見たいっていうのは、ワガママなんだろうか。
「……いや、いいけどさぁ……、ホントにこんなのが望みなワケ?」
不機嫌そうに眉根を寄せて、細い首につけた首輪を嫌そうに摘むドラルクに、俺はコクコクと何度も頷く。チリン、と小さく首輪についた鈴が揺れて音を立てる。
普段は固めている前髪は少し崩れて下がってはいるが、癖の強い髪はいつも通りまるで猫の耳のようにつんと天を向いている。こういうところ、実質猫ちゃんじゃないか。普段牛乳位しか摂らないところも、猫ちゃんっぽい。
「……いや、君が良いなら……まあ……」
力いっぱい頷く俺に気圧されるようにして、不機嫌さから困惑、照れへと表情が変化していき、へにゃっとドラルクの耳が下がる。恥ずかしいのか、ほんのり血色が良くなっているのが可愛い。皮膚が薄いその部分は感情が表れやすくて、すぐに変化するのがたまらない。
こういうのも惚れた弱みなんだろうなと思いながら、薄い身体を抱き締める。
骨の浮き出るような細い肢体。脚なんか片手で掴めてしまう位に細い。
肉付きの薄いこの身体に欲情してしまうようになったのは、何がどうなってこんな風にひん曲がったのかは未だに謎だと思うんだけど、コイツが性癖捻じ曲げオジサンだというのは間違いないと思う。細い足首の先の小さな爪に塗られたペディキュアだとか、きっちり腿を閉じても生まれてしまう隙間だとか。古の吸血鬼らしく血色は悪いのに、覗く舌先が赤く長く尖っているだとか。なんだかんだで、コイツを失えないと思った時に自覚した恋心が、性癖もバグらせたんだ、多分。
触れる肌の滑らかさを味わいながら、首筋に顔を埋める。チリンと鳴り響く鈴の音と、俺の好きな匂い。
柔らかく吸い付いて痕を散らす。ちょっとした痛みや不快感があればすぐ死んでしまうドラルクに、痕を残すのは困難だ。ようやく少しずつ慣らし、出来るようになった。まあ、これもコイツが死んでしまえば消えてしまう儚いものだろうけれど。
死んでも怠さを残している時があるように、この痕も残してくれたら良いのに。そうしたら、コイツは俺のものなんだって世界に誇れる気がする。
「……ばか」
真っ赤になった顔でドラルクが呟く。無意識のうちに俺は口に出していたみたいだ。
「少しでも嫌なことがあれば死ぬ私だぞ。私だって残したいと思うから、君の痕跡を残してるのに。とっくに私は君のものだし、君は私のものなんだ。自覚したまえ」
鼻先に指を突きつけられて宣言される。
そうか、もう既に、俺はコイツのものだし、コイツだって俺のものなのか。
「まあ、それでもまだ不安だとか言い出すようなら」
するりと絡みつく細い指が、首筋を擽る。俺の腿の上へと乗り上げてくる腰。チリ、とまた軽やかな鈴の音が耳に滑り込んで。
「このまま、今日は君の上に乗ってあげるのも、吝かじゃないけど? 私の愛をとくと思い知れば良い」
しなやかな猫みたいに痩身を寄せて笑うドラルクの笑みは、昔ディズニーの映画で見た猫を思い出させて、俺は無事に猫の日に可愛い恋人の姿を堪能することができたのだった。