【学パロ】STAY with ME②「ケーイチー。帰りカラオケ行かね」
全ての授業と帰りの民も終わり、生徒皆んなが帰り支度をする時間。
一年C組のムードメーカー・大和が声を掛けた相手⋯⋯金髪の少年・獅子神敬一は、「悪ぃ」と、顔の前で片手を立てた。
「オレ、今日、生徒会なんだよ」
「あれ?ケーイチ、生徒会員だったか?」
「あーまぁ⋯⋯まだ見習いだけどな。書記」
「書記」
「村雨⋯⋯センパイの、後継だよ」
視線を逸らし、頬を掻きながら呟いて。
「て、ワケだから悪ぃ。またな!」
「お、おう⋯⋯またな」
慌ただしく去っていく背を見送った。
村雨センパイ。
言っていた言葉を、反芻する。
村雨⋯⋯と、言えばあの人だろう。
現・生徒会書記。
学校一の秀才。
テストは満点が当たり前。通知表は(体育と家庭科を除き)オール五。
そんな人間なので、噂は一年生までも余裕で届く。とても、獅子神と仲良くするようには思えないのだが⋯⋯
「あれ?大和、知らなかったのか?」
ひょい、と。クラスメイトであり大和と同じ獅子神の友人である、銀河が後ろから顔を出した。
「ん?なにが?」
「敬一と村雨礼二先輩」
「なにを?」
「敬一が、村雨先輩に絵のモデルを頼み込んで、交換条件で生徒会に入ったんだよ」
「は?」
思わぬ言葉に、頓狂な声が出る。
「モデル⋯⋯て、村雨先輩、そんなにイケメン
だったか?」
「いや、それは、俺知らねーけど⋯⋯」
困ったように視線を逸らし。
「でも、絵は⋯⋯良い絵だったよ」
「え?お前見たの?」
「ん。俺、美術部員だし。幽霊部員だけどさー」
そう答える銀河の頭には、獅子神の描いた絵が浮かんでいた。
薄暗い室内の絵だ。
絵の大半は、大きな窓が占める。その窓の外は、強い雨が降っている。
窓の前に立つ、一人の少年。半分背中を向けた、村雨礼二。
肩越しにこちらを向いた顔。眼鏡の奥の、紅い瞳。そして、ほんのわずかに綻ぶ、薄い唇。
顔の造形如何以上に⋯⋯その目を見つめていたいと。見た者に思わせるような、そんな絵だった。
(ま、でも⋯⋯今となっては)
獅子神が出て行った教室のドアを見つめながら、胸中で思う。
(そんな絵を描いた本人が⋯⋯見つめることを、許さないんだけどな)
村雨礼二と獅子神敬一は恋人である。
そんな噂は⋯⋯少しずつ、友人たちの間に広ま
りつつあった。