カクテルドレスを脱がさないで結婚したまえ、君は後悔するだろう。
結婚しないでいたまえ、君は後悔するだろう。
(キルケゴール デンマークの哲学者)
マリカ・セイリムは多くの男を誘惑し、破滅へと導く魔女だ。その噂はファッション業界だけに留まらず、あらゆる場所で囁かれていた。
汚職や破産、事故、自殺。実際にマリカに魅了された男の末路は、どれも悲惨なものだった。
サバトが開かれていたという土曜日の夜、マリカが手がけたウェディングドレスの先行発表を兼ねて、夜会が催された。
マリカの身元調査の依頼を受け、夜鷹は招待客に紛れて夜会に潜入していた。
夜会は盛大だった。
色とりどりのドレスの裾が、楽団の奏でる優雅な調べに合わせて花開くように広がる。光沢を帯びた絹とベルベットの波が、滑らかに足元を流れていた。
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