化粧「イレブンは化粧似合いそうで良いわよねぇ…」
なんていつだったか、エマに言われたっけ
「好きな人の為には綺麗でいなくちゃよね…」
それもエマに言われたような気がする。
だからって
「あのね、カミュ…ボク…男なんだけど…?」
「ん?そんなことわかってるぜ?でもイレブン、俺の練習に付き合ってくれるんだろ?」
その、なに言ってんだ?って顔にパンチくれてやりたい
「うん、確かにそう言ったけど…どうしてボクが化粧することになるの?」
「イレブン…俺が化粧の勉強してるの知ってるだろ?自分の顔を化粧するのはもちろんだけどな、他の人の顔もやらないと練習にならないんだぜ?」
だからその、やれやれ、なに言ってんだ?って顔やめてくれないかなぁ?
とてもスムーズな手付きで、スキンケア→日焼け止め→化粧下地→コンシーラー→ファンデーションとボクの顔を綺麗にしていくカミュはとても楽しそうだ。
対してボクは名前を言われても頭の上に、はてなマークが飛んでいて、首を縦にふるだけの人形みたいになっていた。
「こんなに綺麗にしてもらっても、ボクなんだよ?」
「俺がお前を綺麗にしたいって思った、だけじゃダメか?」
そんなことを言われると、何も言えなくなってしまう…
「…カミュなら女の子いっぱいいるじゃない」
「おいおいおい、語弊があるぞ、その言い方…」
「だって…本当のこと」
「本当じゃねぇよ、あんなんただの…あー…ほら見てみろよ」
そう言いながらカミュは鏡を持ってくる。
「え?これ…ボク?」
肌が白くて病人みたいなんて言われてたボクはどこへやら、ふんわり肌色で血色の良い唇、まるで女の子みたいなボクが、鏡にうつっていた。
「凄いねカミュ…ボクじゃないみたい」
「そう言われると頑張ったかいがあるな、でもなイレブン、これは正真正銘、お前だよ。」
「…」
声が出なかった。
声を出したら否定の言葉で台無しにしてしまいそうで
「ふふ…魔法みたい…」
そんな言葉をしぼりだすのが精一杯だった。
「…あのなイレブン、俺がお前に自信が出る魔法かけたかったんだ。」
「え?」
「たまたま、エマちゃん達がさ、化粧は自信が出る魔法なんだって話してて、その…お前、いつもボクなんかって言うから…」
(ボクの為に?)
ボクの為に化粧の勉強を女の子達に聞いてしてたってこと?
そう、理解した途端にカッと顔が熱くなった。
「え、あ、ボクの為に?」
戸惑うボクの熱を持った顔を、カミュが触る。
「そう、お前の為に…」
カミュの真剣な表情、ボクの顔が熱くてたまらない、カミュの顔が近い、なんて魔法をかけてくれたんだ…こんな胸がいっぱいで、何もわからなくなるような…
ギューッと胸のいっぱいを逃がそうとして目をつぶったら、優しく唇が触れて離れていった。
「化粧似合うよ、綺麗だ」
心臓を抉られそうなほどの衝撃…目を開けたら、真っ赤だけど、満面の笑みで微笑むカミュの顔がボクの脳裏に焼き付いて
焼き付いたかと思ったらまた触れるだけのキスをされた。